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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
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003 早期の現状確認は大切ですよ?

 用意された食事をあらかた食べ終わると、目の前に座っている男が追加を買ってくるか聞いてきたので、ひとまず足りたと答える。


 すると、空になった器を下げてくると行って席を立った。


 しばらくして戻ってきた男は、新しい飲み物と何か丸っこい揚げ菓子のようなものと果物がのった皿を持ってきた。


「飲み物のおかわりとデザートです。

 つまみながら話しましょうか」


 そういえば、今日はつきあえとか言われてたっけ。


 それからしばらくは日本での生活環境をあれこれ聞かれた。


 機械とか電気とかいう概念のない相手にきちんと説明できたとは思えないけど、そこはある程度魔術の文化がある世界。

 そういう魔術です、で乗り切ったけども。


「つまり、あなたは子供は労働の必要がない階級に産まれ、肉体労働をしたことがなく、勉学に励むだけでいい環境に育ったわけですね?

 そして、あなた自身は魔術も使えない」


「そうなるよ」


「それでは体力が劣るのも、塔に入っても何もできないのもうなずけますね」


「私、最初にそう主張したし……」


 今更のように納得され、思わずため息をこぼす。


「確かにそうですね……」


 最初数日はその押し問答をしてたを思い出したのか、男もため息をついた。


「かといって、短期間で情況を改善できるようなあてもありませんし」


「私を返品して召喚し直すとかは駄目なの?」


「残念ながらそう何度も召喚はできません。

 あなたを帰したら次に可能になるのには数十年はかかります」


「……なるほど」


 それじゃあ確かに私に何とかさせるしかないわけだ。


「とはいっても、現状だと地道に体を鍛えるとか、そういう解決策しか思いつかないんだけど……」


 なんで私が一人で、と思っていたけど、部屋に戻されるだけですむのが私だけなら同行者はかえって怖い。


「そうですね。

 けれどまぁ、現状のままでは埒があかないのも確かですし。

 ……少しこちらでも対策を話し合ってみることにします」


 一応は前向きな返事に小さくうなずく。


 ぶっちゃけ、私一人ではもう現状打開は不可能だろう。


「何かあなたの方から希望はありますか?」


「希望?」


「習うとしたらどんな武術がいいだとか、こういったものが欲しいとか、そういったことですね」


「最低補償額の引き上げかな」


 ひとまず一番困っていることを口にすると、男は呆れ半分の笑みを浮かべた。


「そういえば宿は変えてないのですか?

 もう少し宿を選べば多少楽だと思いますが」


「え? 宿って変えられるの? 

 必ずあの部屋に戻されるからあそこを出たらいけないんだと思ってた」


「別段あそこでなければいけない訳ではありませんよ。

 戻される場所はあなたが自分の部屋だと思っている場所、ですから」


「じゃあどっかもう少し安くて食事がまともな宿を紹介して欲しいなぁ」


 もっと早く教えて欲しかったなぁ、と思いつつそう言うとうなずきが返される。


 これは、生活改善のフラグ来たか?!

お読みいただきありがとうございます♪


次話は8月16日17時投稿予定です。

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