020 わりと腹黒な過保護の人。
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ディノにいさめられて我に返ると無意識にやらかした魔力の暴走は結構とんでもない結果を生んでいた。
多分、この部屋にあった前回の被害を免れた物も全滅だろうし、言われた様に建物自体への被害もかなりなものだろう。
「……さて、と」
私が冷静さを取り戻したのを察したのか、ディノが少しわざとらしため息をつく。
「ミュルカも落ち着いたことですし続きといきましょうか?」
私が内心で困っていると、ディノは爺に向き直って平然と言う。
「続き、だと?」
「ええ、続きです。乱入がありましたが私とあなたの話はまだ終わっていませんから」
自分も言いたいことがある、とこいつも笑顔で言っている。
それを聞いた爺が更に固まる。
「誤解のない様に言っておきますが、私が彼女を止めたのはあのままで万が一あなたに重大な怪我を負わせる様なことになった場合、彼女も責任を問われる可能性があるからですよ。
あなたを庇う意図はまったくありませんので」
笑顔でさらっと言い切ったけど、内容は結構酷いな。
私が言うな、だけど。
爺が言葉もでない状態なのを見て、ディノが「けれど」と呟いた。
「こちらとしてもこの騒ぎを公にしては面倒なこともありますし……。
どうでしょう? あなたの暴言は私達三人の間の秘め事にするというのは?」
ふむ? なんか取引でもするつもりなのかな?
とりあえず任せて良さそうだと思って黙っていると、更に言葉が続く。
「もちろん、こちらの条件ものんでいただきますけどね。
一つ目はこの部屋の修繕費用を、破損した本や魔術具、他の備品の買い直しも含めてそちらで負担していただく事。
二つ目はこの惨状が最初の一度で起こったことにする事。
三つ目、二度と私達に対して事実無根の話をしない事。
――あぁ、もちろん、二つ目と三つ目はあなたご自身のためですよ?
ミュルカが再度の魔力の暴走に至った理由を公にして困るのはあなたですし、もし次があったら私も彼女を止める気はありませんので」
「あ~、私、臨時ボーナス欲しいなぁ。生活必需品に事欠いてるんだよねぇ。
石けんとか洋服とか、塔で使う消耗品とか、さぁ」
ディノの提案の尻馬に乗ると、爺は何か考え込む様な表情をしている。
「……むぅ」
「ほらさぁ、昼間の人が多い場所に突然あなたに言われたことを思い出して、魔力の暴走が起きちゃったりしたら困るじゃなぁい?
だから、生活費のためにアルバイトしたりとか、しない方がいいと思うんだよねぇ」
へらっと付け加えると、ぎょっとしたようにこちらを見た後、更に考え込むことしばし。
「…………それはつまり、ここでの出来事をなかったことにする、ということか?」
「いいえ? 私達が他言しないでいられる様に、ひとまず相応の誠意を見せていただきたいということですよ」
何でもない様に言うけど、結構性格悪い提案をしてる。
だって、この言い方だとこれをネタにゆするのは今回限りじゃないって認めてる様なものだし。
だけどまぁわざわざ指摘してあげる程親切にならないといけない理由はないので黙っておこう。うん。
「……わかった。この部屋の損害は先日のものだ。
原因はあれの暴挙にあるのだし、穏便に済ませるために修繕費用をこちらで負担するのもいた仕方なかろう。
それに、生活に困っているというのなら多少の支度金を追加するのもやぶさかではない。
――では、これで失礼する」
最後だけは何とか面目を保った風で爺が出て行く。
「――幸せな精神構造してるねぇ?」
私達に対して、恐ろしく立場が弱くなったことに全く気付いていない様子だった相手がいなくなったのを確認してから私が呟くと、ディノが苦笑いで頷いた。
「まぁ、いざという時まで気付かないでいてくれた方が色々と便利でしょう。
――ところでミュルカ?」
少しばかり温度の低くなった声に思わず体が強張る。
……なんか、嫌な予感しかしないんですけども。
「なに~?」
あえて軽く返すと、ディノが右腕を診せる様に言う。
そういえばもう一度診察するって言ってたっけ。
おとなしく腕を差し出すと、昨日と同じく目をつぶって折れていた辺りに手をかざす。
「問題ないようですね。念のため、もう一度だけ治療魔術を使ってもかまいませんか?」
「私に害がないなら別にかまわないけど、何で毎回そんな風に確認するの?」
「魔術を受け慣れないと、使われた時にかなり強い違和感を感じる人もいるんです。
なので、急にやっては驚かれるかと思いまして」
「そうなんだ? でも私、特に何も感じないみたいだよ?
怪我の状態調べる魔術使ってたんでしょ?」
「はい」
「それは何も感じないよ。
昨日、傷を治してもらった時はなんか腕が熱い感じがしたけど」
「熱い、ですか?」
「うん。蒸しタオルとかの気持ちいい熱さだったけどね」
少し不思議そうに尋ねられたんで、感じた通りに答える。
すると、ディノは少しばかり照れた様子で頬をかいた。
……ええと? その反応はどう考えたらいいんでしょうか?
「――それはともかく。この前の一件であなたの戦績を読み取る水晶が破損してしまったんです。
なので、当面は日給のみの支払いになってしまうんですが、大丈夫ですか?」
「あぁ、いいよ、大丈夫。
ディノのおかげで当面の生活費には困ってないし、あの爺も近々支度金を寄越すだろうからそれでしのぐとするよ」
別にディノのせいでもないし、宿と食事に困っていないのでそれは問題がない。
さっき、ご飯がてら聞いたら、お昼ご飯はお弁当にしておいてもらって、朝受け取っても大丈夫って話だったしね。
お弁当を買わなくていいなら、当分現金が必要になることはそうないだろう。
……本当は洋服とか石けんとかタオルとか、買いに行きたかったけど、まぁしかたがないかな。
「その代わりと言っては何ですが、報酬の先渡しを特例で許可してもらいましたので明日五百ルトお渡ししますね」
「……気前がいいね?」
この前先渡しでもらった五日分の生活費もまだ残ってる。
随分大盤振る舞いだなぁ。
「まぁ、先日の定例会であなたから聞いた現状を詳しく報告したら、こちらからの援助不足で身動きがとれない状態になっていたことが問題になりまして。
もっと早く手を打つべきだった点に対しては反省するしかありませんけどね。
今後はもっと考えようという話になったんです」
苦笑いでの説明に、へぇ、とだけ返す。
たぶん、ディノがそういう方向に持っていってくれたんだろうけど、言わないって事は触れて欲しくないんだろうからね。
お読みいただきありがとうございます♪
次話以降、投稿時間を22~23時に変更させていただきます。
(作者の生活リズムが変わったので17時投稿だと不便になってしまったため)
17時にあわせてみていただいていた方にはご迷惑をおかけしますが、
ご了承下さいませ。




