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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
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001 報告に行ったらとことん嘆かれました。

「……またですか」


「や、だから最初にむいてないって言いましたよね?」


 目の前で思いっきりため息をつかれてなかば恒例になる言葉を返す。


 今目の前にいるのは私をこの世界に召喚した人、らしい。


 ぶっちゃけ、むいてない無理だと散々主張したにもかかわらず素敵仕様のお財布と謎な手甲をくれた人、としか思ってないけど実はそこそこのお偉いさんらしい。


 見た目まだ三十路前っぽいし下っ端さんの可能性もあるんじゃないかな、などと勝手に思ってたりする。


 ちなみに痩せても太ってもない、身長はこの世界の比較対象がないので判断しかねる。

 まぁ、日本ではそこそこ長身の部類に入る私より十五センチくらい高いかな。

 黒目黒髪で、顔立ちと肌の色はアジア系と白人の混血みたいな雰囲気だ。

 ちょっと目つきのきつくて愛想のないお兄さんです。


 最後の理性でおっさんとは言わない。


 まぁこの手甲、身につけた左手をこの人の部屋にある謎な球体にかざすと塔の中で倒した数・倒されたか帰還した数・手に入れたアイテムとお金・到達フロアがわかるそうな。


 だから私は数日に一度、このお兄さんの所に来て活動報告をするのが重要なお仕事。


 そうすると、日給百ルト+基本給五十ルト×塔に入った回数+到達フロア数×三十ルト、がもらえるという仕組み。

 ちなみに日給は前回報告に来た日からの日数より塔から出た数が少ないと、その回数分しかもらえない。

 一日で三回行って二日休んだ場合、三日分とカウントするらしい。

 手に入れたアイテムとお金はもらっていいそうだ。

 持ち帰れたことなんてただの一度もないけどね……。


 ちなみに一日に最悪でも三百ルトは稼がないと生活できません。

 なぜなら宿代と食事代で一日三百ルトかかるんだよ……。

 それも最低の宿に最低限の食事で。


 ちなみに一階で倒れるともらえるのは八十ルト。

 つまり、一日三回は塔に入らないと食いっぱぐれるか野宿ですよ。

 けれど、いかんせん、塔で倒れると数時間目を覚まさず気絶しているらしく、一日二回が限界。


 はい。

 もちろん、足りない分は野宿してます。

 冬じゃなくてよかったよ、本当。


「ところで、これから先、いつくらいまでは野宿しても大丈夫なもの?」


「……寒さが来ても一階で倒れ続けるご予定ですか?」


 勘弁してくれ、と言いたげなため息に私は小さく首を傾げる。


「劇的に改善されると思う方が間違いだと思うよ。

 だから野宿きつい時期はどこかで働いて冬越ししようかなぁ、なんて考えてるんだけど」


 しばらく前から考えていたことを口にすると、目の前の男は更に深いため息をついた。


「この国の人間ですら、塔の三階まではたどり着けるのですよ?」


「あぁ、なるほど。それであの金額設定なんだ?

 三階まで二回たどり着けば二百九十ルトもらえるから、ちょっと何か持って帰れればプラスだものね」


 一体何を基準に決めた額なんだろうと思っていたけど、これで理由がはっきりした。


 確かにこの国の人間ですらたどり着ける階に、召喚して呼び寄せた勇者がたどり着けないはずはないだろう、ということなんだろうな。


「でもさ、私はごく普通の学生なんだし」


「……あのですね」


「それともこの国の人達って、何の訓練も受けてない二十一の女の子でも三階まで余裕でたどり着くの?」


「……それは無理だと思いますが」


「だったら私は悪くないと思うよ。

 そっちの人選ミスじゃない? 一体何を基準に呼んだの?」


 これまで聞く機会もなくてそのままにしていた疑問を投げかけると、男はこれまでで一番大きなため息をついた。


「その手甲――マーシェル・ヴィードともっとも相性のいい人間、という条件です」


「これ、ただの便利レコーダーでしょ?」


 言われて自分の左手を見る。


 こちらに呼び出されてすぐに身につけさせられたこれ、実は外れない。

 別につけていても当たっていたかったりむれたりしないからほとんど気にしてないけどね。

 なぜか体を洗う時には水通してくれるし。


「それは、古くから伝わる希少装備です。

 相性のいい者が装備すればまるで何もつけていないような快適な装備感で、任意の地図表示やアイテム格納ができます。

 加えて防御力も高く装備主を守る術が込められています」


「――守られてない気がするけど……」


「あなたが塔で倒れても死なずに部屋のベッドに帰ってこられるのはマーシェル・ヴィードの効果ですよ。

 無論、塔の中にいる間に魔物の攻撃を受けても傷を負わないのも、です」


「……え?

 あの塔って誰が挑戦してもああいうお茶目仕様なんじゃないの?」


 てっきり、そういう場所なんだと思っていたので問い返すと、男は処置なし、とでも言いたげに額に手を当てて天を仰いだ。


「あぁ……っ。

 どうして我が国にはマーシェル・ヴィードに選ばれる勇者がいなかったのですか?!

 いえ、我が国でなくとも、せめてもう少し……っ」


 うん、それ私も言いたい。もっと適任者選ぼうよ。

お読みいただきありがとうございます♪


2013/9/4 説明不足の点があったので追記しました。


旧)塔で倒された数

新)倒されたか帰還した数


追加)給料に関する記述

 ちなみに日給は前回報告に来た日からの日数より塔から出た数が少ないと、その回数分しかもらえない。

 一日で三回行って二日休んだ場合、三日分とカウントするらしい。


2013/11/17

 ディノの外見描写を修正。

 ……決して、早くのつもりで作ったのに、いつの間にか主要人物になったから設定甘くて修正が必要になったわけではありませんよ?

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