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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
19/96

017 やってみたら想像以上に気色悪くて最悪・・・。

初評価がつきました♪

うれしいです♪

☆ー(ノ^▽^)人(^▽^)ノイエーイ

 部屋に戻ると、ディノは食器棚やら保存庫がある場所に行って、戸棚から何やら箱のような物を取り出した。


 その箱から出てきたのは片手鍋の持ち手の先に、先端が二つに分かれたコードがついたような物体だった。

 持ち手とコードのつなぎ目辺りに、何かメーターみたいなのがついてる。

 コードの先端は細い洗濯ばさみみたいになっていて、左右で色が違う。

 コードは二股に分かれるまでが五十センチ、別れた先は二十センチくらいだろうか。


 ……あれ? なんか理科室で電流の実験した時に使ったなんかに似てる……?


「それが魔力の補充に使う道具?」


「はい。……で、魔術を組み込んだ道具には大抵……」


 言いながら今度は湯沸かしに使う道具――私にはIHヒーターにしか思えないんだけど――をいじる。


 これ、水を入れたポットを上に置いて使う形で、本当にIHヒーターそっくり。

 厚さ十センチ、縦横は二十センチくらいの直方体。

 そして、電源コードとか火力調整がない。

 あるのは電源スイッチくらい。

 ただ、なんか引き出しというか、側面に蓋になってて空けられる場所がついてる。


 ディノはその蓋の部分をいじって開けてから、私に中をのぞくよう示した。


 中にはなんか黒っぽい金属的な箱が入ってて、そこにさっきの洗濯ばさみで挟めそうな出っ張りが二つ。

 色はさっきの洗濯ばさみと同じ。


 ……なんか、車のバッテリーに似てるかも?


「その金属の箱のような物が、魔力を蓄える装置です。

 中には魔力を蓄える性質を持つように加工された繊維か鉱石が詰めてあるのが一般的ですね」


「ふんふん」


「で、実際使っている間はそこに見えてる端子から魔力を道具に供給しています。

 今回のように補給を行う時も同じ端子を使いますが」


 説明しながら、コードを私に渡す。


「同じ色の端子をこの洗濯ばさみで挟んでみてください。

 補給器の本体からは手を離しておいてくださいね」


 ……ええと。洗濯ばさみって聞こえたのは私が洗濯ばさみだと思ってるからなんだろうか?


「この洗濯ばさみみたいな部分、なんか名前があるの?」


「正式には魔力回路接続用端子挟型、ですね。一般的にはクリップと呼びますが」


 あ、やっぱり翻訳されてたんだ。

 自分で想像しておいて言うななんだけど、洗濯ばさみが正式名称だったらどうしようかと思ったよ……。


 そんな事を考えつつ言われた通りに端子にクリップをつける。

 と、持ち手の辺りについていたメーターがゆっくり動き出して、下の方四分の一くらいの赤く塗られた範囲より少し上でとまる。


「それが現在の魔力残量の目安ですね。

 大抵の魔術具は赤い部分まで減ると動きが悪くなりますし、その状態で使いすぎると故障の原因にもなりますね」


「なるほど」


「まぁ、残量が半分を切った辺りで一度警告音が鳴るように設計されていますし、三分の一辺りで早めに作動停止するようになっている物が多いですけどね」


「へぇ~。便利にできてるんだね」


「普及しているとはいえ、魔術具は高価な物が多いんです。

 なのでそう簡単に故障されても困るんですよ」


「それもそうだねぇ。

 でも、壊れてくれないと新しいものは売れないから、ほどほどで壊れるのが一番優秀なんだろうね」


 どこかの家電メーカーの社長は三年で壊れるように設計してるとか言ってたけど。

 確かに作る方からすれば適度な感覚で壊れて買い換えてもらえるのが一番優秀な製品なんだろう。


 昔のことを思い出してつい口をついただけの言葉だったけど、それを聞いたディノは数秒ぽかんとした後で苦笑いになった。


「確かにそういった側面はありますね。

 ――で、補給器の使い方ですが、本体を握ってみてください」


 持ち手の部分を握ると少しひんやりしてて、石っぽい感触が伝わってきた。


「握って、どうするの?」


「……普通、そうして握っているだけで魔力が供給されて少しずつメーターが動き出すんですが……」


 困ったような言葉に私もメーターをみる。


「ぴくとも動いてないね?」


「……ですねぇ」


 どうしたことやら、とでも言いたげにディノが首を傾げる。


 少しそのまま考え込んでいたけど、何か思いついたのか視線が私の顔に戻ってきた。


「補給器を握っていると少し冷たいでしょう?」


「だね。ひんやりして気持ちいい」


「つまり、手のひらから補給器へ、ミュルカの体温が伝わっていると言うことですよね」


「うん」


「それと同じで、あなたの手のひらから、補給器へ向かって魔力も流れていくんです。

 ちょっとそんなイメージをしてみてくれませんか?」


「……う~ん?」


 体温が伝わる様に魔力が伝わる……?

 要するに、私がコンセントで、補給器が充電器、魔術具がノートパソコンのバッテリー、みたいな感じだろうか?


 そういう理屈が成り立つなら、充電器をつなげば充電されそうだけど、魔力ってそういうものなのかなぁ?

 くっついてれば体温が伝わるのはわかるんだけど……。

 体の中にある物が皮膚の接触で他の物に移動するっていうのは……。


 でもなんか、そういう事を気にしたら負けな気もする。

 異世界なんだしそういうものなんだでいいんじゃないだろうか。

 どっかの芸人もちっちゃいことは気にしない、と言ってたし。


 私がそうやって納得すると、不意に体の奥の方から補給器を持っている手に、手から補給器にと何かがにゅるるるっと流れていく様な感覚がっ?!


「うわっ?!」


 馴染みのない感覚に驚いてつい補給器を投げ捨てる。

 すると、幸いどこにもぶつからずに床に落ちた補給器をディノがしゃがみ込んで確認した。


「はい、終了です。お疲れ様でした」


「……え?」


「メーターをみてください。ちゃんと残量が回復してますよ」


 言われて私もしゃがんでメーターをみると、確かに目一杯になってる。


「今のでできたの?」


「はい。初めて自分の意思で魔力を操れましたね。

 随分と手早くできましたし、優秀ですよ」


 にっこりと笑顔で言われてもあんまり実感がない。


 けど、確かにメーターが動いてるし、何かが私の中で動いた感じはあった。


 なんか、昔流行ったスライムのおもちゃを、皮膚の裏側になすりつけられたみたいな感触だったけども……。


 うん、頼まれない限り自発的に魔術具へ魔力を補給することは絶対ない。


 ……魔力ってなんか気色悪い、と思ったのは秘密にしておこう……。

お読みいただきありがとうございます♪

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