016 くらい通路と魔術の講義。
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結局、治療院にいる程でもないし側にいた方がすぐ対処できるから、と言われてディノと一緒に帰ることになった。
治療院にいる程でもないなら対処してもらわないといけないような事なんて起きないんじゃないかとは思ったけど、
一々そんな所に突っ込みを入れるのは大人げない。
……うん、廊下に出たら夜中ってだけあって灯りも少ないし人気もないしちょっと怖いかもしれない……。
一応ディノもカンテラの様な物を持ってるんだけど、蛍光灯の明るさになれた日本人にはかなり心許ないというか……。
静かだし石造りの大きな建物では足音が反響するし、結構お化け屋敷気分。
ついつい、ディノの側にくっついて歩いてると、小さく笑う気配がした。
視線を隣を歩いている男に向けると、案の定ディノが笑っている。
「暗いのは苦手ですか?」
「向こうでは夜中でもあちこち店が開いてるし、街灯と家からもれてくる灯りで真っ暗にはならないからね。
そもそも、夜中に出歩く習慣もなかったし」
少しすねた気分で返事をしたけど、相手は別にからかったつもりでもなかったらしい。
「闇を恐れるのは悪い事ではありませんよ。
自分の力の及ばないものに対する畏怖や恐れは魔術を操る上で必要なことです」
「そうなの?」
「はい。たとえばの話ですが、人が闇を恐れるのは、物陰に何かが潜んでいたとしてもそのことに気づけない可能性が高いから、
夜の方が危険な獣たちが活発に動き回るから、といった具体的な危険を想定してのことです」
「確かにそうだね」
「つまり、自分の置かれた環境に対する正確な判断ができているということですから。
まずは物事の本質を理解すること。これが魔術を使う基礎になります」
「……わかるようなわからないような?」
突然始まった魔術の講義に首をひねる。
「そうですね……。
たとえば、魔術で薪に火をつける場合、大雑把に二つのやり方があるんです。
一つは、火を生み出してそれを薪に移す。もう一つは薪自体を燃え上がらせること」
「……ええと?」
どう違うんだろう、と思いつつ首を傾げる。
私が疑問符を飛ばしているのがわかってるんだろう。
ディノは丁度近くにあった、消えてしまっている灯籠に近付いて、蓋を開ける。
構造を確かめるようにうながされてのぞき込むと、中はアルコールランプみたいな構造になっていた。
下に燃料が入れてあって、そこに灯心が沈めてある。
まわりは薄いガラス状の物で覆われているけど、空気を取り込むためか何カ所か穴が開けられていた。
「一つめの方法の場合、こんな風にやります」
私が中を確認し終わった後、ディノはランタンを持っていない左手を顔の高さに持っていくと何か呟く。
すると、彼の人差し指の少し先辺りの空中に突然小さな灯がともった。
そしてそれを灯籠の灯心に移す。
「このやり方の場合、術師は何かを燃やしているのではありません。
自身の魔力で火を生み出しています」
「……要するに、見えない燃料と灯心を作り出して、それに火をつけてるってこと?」
「はい、その通りです」
笑顔で頷くと、ディノは灯籠につけられている火消しを使って灯心の火を消す。
「二つめの方法の場合、はこうですね」
言って、消したばかりの灯心に手を近づけて何事か呟くと、今度は直接灯心に灯がともった。
「今回私がしたのは、灯心に火種をつけてやることだけです」
「つまり、さっきは灯心と燃料と火種を用意したけど、今回はある物を使って魔力で作ったのは火種だけって事?」
「ええ。こちらの方法は消耗も少なく術も単純なので少しでも素養があって呪文さえ知っていればすぐに使えるようになります。
けれど、何もない所に炎を生み出すにはミュルカが言ったように、灯心と燃料の確保も自分の魔力で行います。
つまり、火の大きさや燃える時間、維持する場所、全てを自分でコントロールしないといけなくなりますね」
「見た目にはほとんど同じなのに、難易度は全然違うんだ?」
「はい。火種だけを作り出す方は着火術と呼ばれる生活魔術です。
全てを自分の魔力で行うのは初歩の攻撃魔術に分類されます」
つけなおした灯籠をもう一度消したディノが「続きは移動しながら」と言うように歩き出したので私も並ぶ。
「生活魔術というのはその名の通り、日常生活を便利にするのに使われる魔術ですね。
大抵は威力が小さいために少々使い方を間違っても危険のない程度のものです。
それ故にあまり素質がなくとも大抵は練習次第で使えるようになれます」
「単純なだけに使う人を選ばないってところ?」
「はい。誰でも使えるように少ない力で限定した効果を生み出す、けれどなくてはならない大切な魔術です」
確かに生活が便利になるのはいいことだ。
「じゃあ部屋にある保存庫とか、お湯を沸かす道具なんかも?」
「そうですよ。ああいった道具には魔力を蓄える性質があるものを使っていています。
湯沸かしは中に水を入れて起動用の魔術を使うと、蓄えた魔力を使って湯が沸くようになっています。
蓄えた魔力を使い切ると動かなくなりますが、それを補充さえしてやればかなり長期間使えますね」
「補充は簡単にできるの?」
「魔力さえあれば難しくはありませんね。
魔力はあっても制御が心許ない人や見習い魔術師達が小銭稼ぎに補給をしていますし、家族が多ければ皆で少しずつ補給して何とか回すこともできますし」
「どんな風にやるの?」
「興味があるのなら、部屋に戻ったらやってみますか?」
「私でもできるの?」
やってみたい、と思ったのがばれたらしい。
ディノの提案に興味はあったんで問い返すとあっさり頷かれた。
「補給も簡単にできなければ便利に使えないでしょう?
補給に使う道具があるんです。それを使えば魔力がありさえすれば誰でもできますよ。
ミュルカは攻撃魔術が発動する程の魔力があるんですから問題ありません」
戻ったら早速教えますね、と笑顔で言われ、わくわくとうなずく。
新しく買ってきた家電とか、ついいじり倒したくなるタイプなんだよね、私。
すっかり新しい玩具?に興味を持っていかれていたせいか、その後はまわりの暗がりが怖かった事なんてすっかり忘れていた。
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