精霊流し
いつの頃からか、目の前に小さな人たちが見えるようになった。
盆も近いある日、突然私の前に現れた小さな人達は、私のことなど一切気にしていないようで、彼らの小さな小さな生活を営んでいた。
おもちゃよりも小さな家に暮らす小さな人達は、普通にご飯を食べて普通に暮らしていた。
ある時、私は目の前にいる小さな人達の存在にガマンならなくなり、小さな人達の暮らす小さな家ごと持ち出すと、自分の家を飛び出した。
さて、どうしたものか。勢い込んで外に出たものの、どうすればいいのか、私は途方に暮れていた。
小さな人達は、あまりにも小さいので、私の手の平に家ごと収まってしまっている。このまま潰す事だってわけないが、それはあまりに不憫すぎるというものだろう。
河原をてくてくと歩く私の視界に、川を流れる鐘楼流しが目に入った。
ふと、あることを思いついた私は、そのまま店を探し、手頃な大きさのおもちゃの船を手に入れた。
小さな人たちの小さな家を、これまた小さな船に載せ、私はそのまま川に流す。
川幅は広いけれど、流れのゆるやかな川を、船はゆっくりと流れていく。
私は、手を振り、小さな人達に別れを告げた。
そして、ふと振り返ると、何だかとても大きな大きな人が私に向かって手を振っている姿が目に入ったのだった。