部活動
「あ、滝本先輩。遅いですよ?」
部室の戸を開けると、目の前に自分より一回り小さい体が立っていた。
俺ら2年の後輩、赤石 鈴仔。
気が強く、活発で、ギター担当だ。
「…お前だけか?」
「はい。みんなサボリか、委員会ですね。」
「……。」
俺は黙って髪の毛を掻き上げる。
鈴仔の傍を抜けて、鞄を下ろし、愛用のギターをケースから出す。
それに合わせて、鈴仔も自分のギターを構える。
「先輩、先輩。聴いて下さい!」
そう言うと、鈴仔はジャラーンと弦を鳴らし、課題曲のソロを弾き始める。
「おお…。」
「ど…どうですか!?」
「大分上手くなったな、まぁビブラートがまだ効いてないけど。」
「それはこれから練習するんです!!」
「…へいへい。まぁ頑張ってくれ。」
俺はギターとアンプをシールドを通して繋ぐ。
そして、さっき鈴仔が弾いたソロを見本として弾く。
「………なんで先輩はそんなに上手いんですか…。」
「一応、今年でギター触ってから4年は経つからな。」
「お…やってるねぇ。」
部室の戸が開く。
入ってきたのは3年の先輩、木元 康祐。
プロのミュージシャン志望で、パートはベース。軽音楽部の部長でもある。
「部長、合わせますか?」
「ん…待て待て、今日は珍しくコイツも来てるんだ。」
そういうと、部長は再び部室の戸を開ける。
そこにはドラムの同輩、坂城 瑠璃が立っていた。
「………。」
「瑠璃先輩!」
「あいっかわらず無口だな…。」
「とりあえず、一旦スティックを握らせてやってくれ。」
「…はいよ。」
坂城はドラムは上手いが、本当に無口で、口をきいたのは2.3回程度だ。
スティックを握ると、軽やかな16ビートを刻む。やっぱ上手いわコイツ。
「はいはい!んじゃ久々に一通りのパートが揃った事ですし、合わせますか!」
30分くらい立った頃、部長が両手を叩いて皆に呼びかける。
「りょーかいぃ!」
鈴仔が敬礼する。
「分かった。」
俺はピックを握り直す。
坂城は黙って頷く。
「んじゃ…行きますかっ!!」
「おつかれさまでしたー。」
連続で3曲を弾き終えて、各自解散する。
気がついたらもう6時前になっていた。
「俺これから用があるんで。」
ギターケースの取ってに手を掛けると早々に部室を出ようとする。
「ああ、蓮華。彼女か?」
「え…はい。まぁ、そんじゃ!」
ウチの学校の第二グラウンドは、陸上部の独占状態だ。
200mトラックが一周分だから、まぁ仕方ないと言えば仕方ない。
ちなみに、第一グラウンドは、球技コート場。
サッカー部と野球部。少し外れた所にはテニスコートが3面。
第三グラウンドは、体育館を使えない球技の連中が使っている、たまり場だ。
そそくさと第二グラウンドへ向かうと、まだ陸上部は部活をしていた。
………いた。
アイツだ、高見。
種目は高飛びと短距離。
まぁ、文化部の俺が勝てるわけが無い。
…っと。すげーな。高飛び。
14……5mか、145m。
お疲れさまでしたーという声が響いた所を見ると、
どうやら練習が終わったんだろう。
ちょっとグラウンドから離れた場所で待つ事にする。
もうすぐ中間テストか…。
高2になってもう5月中旬。
そろそろ勉強しなきゃな…と思った所で声をかけられた。
「おまたせ。」