本番前
教室。
聞こえるのはシャーペンの音と吐息くらいだ。
中間も今日で最後。
…そして、今日はライブの日。
俺は今日、木元部長や坂城、赤石に協力してもらって、高見に気持ちを伝える。
…つもりだったんだが……。
最高のオリジナルにしようと思って……、熱入りすぎた…。
2番までしかできてねえ。
残り、Cメロと……大サビ。
大サビはともかく、Cメロが全くしっくりこない。
…これは出演までに脳しぼるか……。
キーンコーンカーン!
チャイムが鳴る。
俺はメロディを考えていたのでテストはほぼ白紙。
名前すら書いてないのを見て、軽く焦りを感じ、いそいで名前を書く。
「よっし!終わった。ライブハウス直行だ!!」
「部長遅れてすいません!」
ライブハウスには、俺以外全員着いていた。
「先ー輩!遅いですよぉ!」
「あ…ああ、悪かったな、赤石。」
「良いですよ!頑張りましょ♪」
赤石は、まるであのことが無かったように振る舞ってくれている。
坂城も俺と目が合うと、少しだけ笑顔になってくれた。
俺はそこに少し安心した。
「で?蓮華。できたのか?Cメロは?」
「あ…まだです!今すぐ考えますんで!!!」
「あー!先輩!その前に一回!!」
「……一回?」
「一回だけ、2番まで通しましょ?最悪のことを考えて……。」
「あ…ああ、そうだな……。」
全員機材を準備すると、顔つきを変える。
坂城がスティックを持ってフォーカウントを取る。
「…ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」
熱くなる 思考 仲の良い 日々
重ねる 試行 でももう 戻らない
こじれた関係 修復を 試みたけど
君に 謝りたい 「ごめん」と その一言だけ
それだけが 僕の想い
周りの 関係 再び 巻き込み
崩れるのが 恐ろしくて 逃げた
でも皆 手を延ばして 助けてくれたよね
皆に 言いたい 「ありがとう」 足りない位
それだけが 僕の想い
これだけを 君の元に
「……!!ふぅっ!」
「いい感じだ!!これならいけそうだな!!」
部長がタオルで汗を拭う。
「はい!今すぐCメロ考えるんで!……あ!坂城!あのさ!」
「…大丈夫。今朝ポスト見たけど……無かった。」
坂城もタオルで顔を覆っている。
「……。ありがと!」
出演まであと2時間。