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葉陰の青梅―はかげのおうめ
「どうしたら、いいの」
暗闇の中、女はか細い声を上げる。誰に向けるわけでもなく、ただ競り上がる感情に従って。
「どうしたら」
どろりと手足に絡み付く、泥のような闇に向かって嘆く。
重い。
おもい重い思い想い重いおもい――。
「どうしたら、あの人は笑ってくれる?」
――青い実を。
「え?」
――青い実を、食べるといいよ。
「だれ?」
女は虚空に叫ぶ。
声のした方へ手を伸ばすが、その手が掴むのは冷たい闇。
――あの、青い実はね、魔法の果実。種を割って煎じたら、素敵な薬になる。
「くす、り?」
そう口にし、闇の中を這う。
くすり? それがあれば、こんなに苦しいきもちも無くなる? あの人も、あんなに苦しそうな顔じゃなくて、また、笑ってくれる?
――ああ、もちろん。
「あなたも、あなたの大切な人も、二度と苦しまないで済むよ」
――ずっと、永遠にね。
甘く柔らかな声に、女は至極嬉しそうに微笑んだ。
その空虚な瞳には、あやしく笑う男が映っていた。




