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エピローグ(第1部完)

四月上旬 学園のとある一室


木目調の床と壁に囲まれるようにして、中心部に設置された横長の机。

その机に斜めに向かい合いながら、吾紋とミハルはパソコンの画面を見つめ、キーボードをタイピングしていた。

「……よし、完了っと」

「お疲れ、ミハル。来た時にも言ったが、体大丈夫そうだな」

「うん。念の為に着込んでたスーツが功を奏した、って感じだね」

「そうか。それは何より」

等と会話をしつつ、吾紋はレジェンディール撃破後の事を振り返っていた。

一つは、彼奴が変装していた半蔵とヴェートについて。

異界側では関係者を除き、公には彼は殉職した事になった。

民の中には悲しむ者も多くいたという。

反面、対妖連合側では彼の正体が明かされた。

当然、支将達は動揺が広がった。

中には連合への不信感から脱退を仄めかす者もいたそうだが、詩織の計らいによって免れたらしい。

彼女は、今回の一件で自身が役に立てなかった事に相当落ち込んでいたそうだが、ミハル達の励ましによって、持ち直したとの事。

もう一つは、異界からの怪物関連の事柄について。

その後設けられた話し合いの席で、以下の提案が連合側からされた。

・封印された者達を、龍帝軍に引き渡す事。

・支将の空席を龍帝軍側から一名選出し埋める事。

・二週間に一度、代表同士で情報交換を行う事。

龍帝軍側は、これを寛大なる処置と認識し、全面的に受諾した。

「それにしてもびっくりした。吾紋が僕達の仲立ちしてくれたなんて」

「まぁ、殆どある人からの受け売りだけどな」

「伊草さんの主さんだね。僕も会ってみたいなー」

救世は、吾紋を元の世界に帰した後、姿を消した。

その後、伊草が吾紋に接触、彼女からのメッセージを伝える形となった。

「そう言えば、吾紋の人脈って凄いよね。僕達対妖連合だけじゃなく龍帝軍の人とも接点持ってたし」

「自分でもそう思う。昨日もカダレエさんから茶会に誘われたし」

「良いなー。僕も、クノアと……クノア……」

「……」

提案受諾後、支将には王であるクノアが選出されたが、現れたのはマレアスであった。

彼曰く、クノアはミハルを殺しかけた事を相当気に病み、合わせる顔がない、との事。

ミハルが渡された手紙には、連合と彼女に対する謝罪が書き連ねられていた。

「死者も重傷者も出てないし、僕も気にしてない旨、マレアスさんに伝えたんだけど……」

「……」

吾紋は、未だ座る者のいない席を見つめる。

(まぁ、恋慕う相手を自分が手にかけようとしたなんて……そりゃショックだよな……)

彼が親友の心情を察していた、その時。

部室の戸がガラガラと引かれる音がした。

そこに立っているのは。

「クノア……」

「……」

彼の顔は未だ暗く沈んでいた。

吾紋が声をかけようと立ち上がる。

それと殆ど同時であった。

「クノア!」

彼に駆け寄り、抱きつく者が一人。

誰あろう、ミハルである。

「! ミイ……」

「もう、心配してたんだよ? ……」

「……俺が怖くないのか? 俺はミイを……この手で……」

「……怖かったよ? 今でもちょっぴり怖い。でも、それ以上に……」

ミハルは彼を見上げ、言った。

「クノアと会えなくなる方がもっと怖いから」

「!」

「だから今日、来てくれた事が凄く嬉しい」

「ミイ……」

「それに……クノアの言ってた好きな人も……誰かわかっちゃったし」

「……すまない」

目を潤ませ、彼女を抱きしめるクノア。

抱きしめ返すミハル。

そんな二人を、吾紋は微笑ましく見つめていた。

(汝、よもやこれで解決したとは、思っているまい?)

(えぇ。寧ろ、これからです)

「ミイ……一つ、頼みがあるんだが、構わないだろうか?」

「? 何?」

「ここに来る前、何故か母からミイを紹介して欲しいと言われてな……この後、一緒に来てくれないか?」

「!? そ、それってつまり……」

瞬間、赤面し煙を上げるミハル。

「ミイ!? 大丈夫か!?」

(ここまで展開が早いとは……吾にも予測能わず)

(まず出来ませんよ……)


異界 城内


最上階の一室で、シソとマレアスは茶を飲み寛いでいた。

シソにとっては目醒めた後、民衆の心の安定とラスカゾーク残党への牽制の為各地を飛び回り、漸く訪れた時間。

忠臣であり、長年の友でもあるマレアスとの時間に、思わず笑みが溢れる。

が、彼女が微笑んでいるのにはもう一つ、理由があった。

「随分と、御機嫌でいらっしゃいますな、シソ様」

「えぇ。今日クノアが好きな方を連れて来てくれるのです。ミハルさん……どんな方なのでしょう」

「私の受けた印象としては、とても強い御方でございました」

「あぁ、待ち遠しいです」

「しかし、クノア様はあの事を相当気に病んでいた御様子。大丈夫でしょうか……」

「ミハルさんの方は何と?」

「尋ねました所、『怖いが会いたい。会えなくなる方が辛い』との事でした」

「それなら後は、あの子が一歩踏み出すだけですね……そう言えば、あの方……ゴーカサットはどちらに?」

「いや、生憎存じ上げません。何分、謎の多い者でして……」


同時刻 荒野


「……」

都市から離れた無人の地にて、彼女はポツンと佇んでいる。

「ここにいたのか、ゴーカサット」

そこへ、声をかける者が一人。

「!」

振り向くと、カダレエが立っていた。

【何か用か?】

「近々、吾紋君と茶会をしようと思ってるんだけど……参加するかい?」

【する】

「了解。あ、それともう一つ……伊草さんの言ってた主って、君だろ?」

【……理由は?】

「彼が私の能力を知っていた事と、君に渡された楔の存在、だね」

「……御見事」

彼女はマスクを外し、救世としての姿を見せる。

「顔、見せて良いのかい?」

「付近に君以外の気配はないしねぇ……さて、と」

救世はポケットから千領瞳を取り出し、じっと見つめる。

「何だい? それ」

「過去現在未来全て見通せるレンズ。但し、見ると精神エネルギーを消費し、最悪廃人になる」

「へぇ。私にも見せてよ」

「いーよー」

レンズを覗くカダレエ。

そこに映っていたのは、


星々の輝く夜空の如き広大な空間。

その空間を航行する巨大戦艦。

艦の先端に佇む、複数の影。


「これは……一体……」

「先の一件は始まりに過ぎない、という事さ」

「? どういう……」

「さて、小腹空いたし屋台巡りでもするか」

そう言うと、救世はマスクを再び付け、都市へと向かう。

「お、おい、ゴーカサット、待ってくれよ」

後を追うカダレエ。


『宙制集』が襲来する、少し前の出来事である。


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