第4話パート2
状況は、アモンと救世対レジェンディールの変則戦闘に突入していた。
二人の息のあった攻撃に、彼は押されていく。
「レジェンディール、動きが鈍くなっているよ。真の姿見せた方が良いんじゃない?」
「何ぃ? ……では見せてやろう。俺の正体を!!」
瞬間、彼の体が発光したのを受け、二人は飛び退く。
同時に経年劣化した壁のように彼の表面が剥がれ落ちていき、異形の姿を表す。
「それが貴様の正体か」
「如何にも。他者に見せるのはいつ振りだろうか」
そう言うと、レジェンディールは斑模様の二対の羽を背中に展開、二人に突っ込んでいく。
「隙だらけだ」
アモンは構え、カウンターの要領で彼の胴を真一文字に切り裂く。
が、
「!?」
レジェンディールの肉体は斬られた側から接合していった。
「無駄だ。この姿になった俺に敵はない」
振り向き、切り掛かって来る彼の刀を受け、押し返すアモン。
その顔に焦りは全くなく、冷静に敵を眺めている。
「気に入らんな。今の一撃、確実に仕留める気で放った筈だ。それが効かなかったというのに……動揺一つしないとは」
「この手の経験は幾度も在った。その場合、最初に想像し得るケースは……」
アモンは切先をレジェンディールに向ける。
「貴様は分身であり、本体は別に在る」
「ほぉ? では、その本体は何処か分かるのか?」
「……」
「分からぬではないか。当てが外れ」
「私、知ってるよー」
あっけらかんと言ったのは、救世である。
「な……有り得ん、そんな筈は……」
「嘘だと思うなら確認すれば良い」
「……」
レジェンディールは虚空を見上げ、凝視する。
「そこだね」
「!? 貴様、まさか!?」
「こんな簡単に引っかかってくれるとは……詰めの甘さは相変わらずのようだね」
「お、おのれぇ!!」
救世目掛け突進し、斬りかかるレジェンディール。
「させん」
その間に割って入るアモン。
「汝、今判明した内容を急ぎ伝えよ」
「もうしてるよー」
同時刻 司令室内
「我主より入電……クノア殿。先程使用されていた通信機、もう一度掛けてはくれぬか?」
「承知した」
数度の発信音の後、ガチャリと繋がる。
「もしもし、クノア様ですか?」
「あぁ。カダレエ、二つ確認しておきたい事がある。一つ、マレアスにパンチを打てるか聞いてほしい」
「パンチ、ですか? わかりました……打てるとの事です」
「わかった……もう一つ」
クノアは一拍置いて言った。
「母さんが目醒めているか……見て欲しい、頼む」
「……少々、お待ちください」
カダレエは、動けるまでに回復したマレアスと共に、城内の最上階へと向かった。
「……シソ様は、果たしてお目醒めになっているだろうか」
「……分からぬ」
クノアと初めて言葉を交わして以降、シソは再び眠りにつき続けていた。
カダレエが生命エネルギー等を与える事により、目に見える傷は殆ど癒えている。
が、不思議な事に目醒める気配は、ここ十年以上一度もなかった。
「俺も話したい事いっぱいあるんだけどなぁ」
「俺もだ……ん? カダレエ、今の気配」
「あぁ、俺も感じた……」
「「!!」」
急ぎ階段を登り切り、部屋の前に立つ二人。
はやる気持ちを抑え、一応の礼儀としてノックをする。
「入りなさい」
「「!!」」
十何年振りに聞く、威厳と温かみに満ちた声。
「「失礼します」」
押し入るにして、部屋に入るマレアスとカダレエ。
彼らの視界に入ったのはーー
荘厳さと美しさを放つ巨大な銀色の龍。
「久しぶりですね、マレアス、カダレエ」
龍は優しい声音で、二人に話しかける。
「お久しぶりです……シソ様」
深々とお辞儀をするカダレエに対し、
「……」
見上げたまま、フリーズしているマレアス。
「マレアス? どうしたのですか?」
「……お」
「お?」
「お久、しゅう、ございます、シソ、様……!」
彼は号泣していた。
「長い間、苦労をかけてごめんなさい……そして、ありがとうございます」
「勿体なき、お言葉……!」
「ところでシソ様、何故人型ではなく本来の御姿に?」
カダレエの問いに、
「……予感です」
シソは返す。
「眠りについていた時、世界と民そしてクノアに、危機が迫っている予感がしたのです。いても立ってもいられずもがいていたら、この姿で目醒めていたのです」
「成程……はっ、クノア様に連絡しなければ!」
同時刻 司令室
「クノア様!! お喜びください! シソ様が!」
「母さんが!?」
「久しぶりですね、クノア」
「! 母さん……」
「本来なら直ぐにでも労いの言葉をかけたい所ですが……時間がないのでしょう?」
「そこまでお見通しとは……やっぱ凄いや」
それから直ぐ、クノアは通信機を伊草へと渡す。
「では、我主より預かった作戦内容をお伝え致す」
作戦を伝えられると、カダレエ達は早速準備に取り掛かった。
先ず、カダレエが以前渡された楔状の物体を宙高く放り投げる。
そして、マレアスが跳ね、その怪腕より正拳突きを放ち、物体に当てる。
同時刻に、伊草も懐から同じ物体を取り出し、放り投げ当てる。
瞬間、楔は空中にヒビを入れ、そして裂け目を作る。
そのはるか先にはーー
「こ、これは!」
「何と……」
「……」
禍々しい光を放ちながら空中に浮かぶ、巨大な球体が在った。
「これこそ敵の本体。これを破壊されたし、との事」
「そう言う事か……俺と母さんの力を借りたい、というのは」
「破壊後、爆風が我々に向かうと推測される。その時は、カダレエ殿の力を御貸しいただきたい」
「わかりました……伊草さん、あなたの主ってひょっとして……」
「それは後程。では、クノア殿、シソ殿、御頼み申す」
クノアとシソは、裂け目の前で口を大きく開ける。
瞬間、彼らの口内が青白く輝きを発した後、
「「ガアアアアアアアアアアアアア!!」」
高威力の熱光線が二つ、球体に激突。
瞬間、球体は点滅、
ドガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
消滅と引き換えに凄まじい衝撃波を発生させる。
「カダレエ殿!」
「承知!」
伊草とカダレエは両腕を突き出し、掌を裂け目に向ける。
「「うおおおおおおおおおおおお!!」」
二人は衝撃波を受け止め、相殺或いは吸収して行く。
そして数秒後。
「相殺完了。カダレエ殿、そちらは?」
「何とか……疲れました」
閉じて行く裂け目を見つめる二人。
「……終わったんですね」
詩織の呟きに、
「うむ。仕上げは、主達に任されたし」
伊草は相変わらずのエコー掛低音声でもって返した。
「……」
暗く沈んだ表情のクノアに視線を向けながら。




