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第3話パート3

時刻不明 位置不明


「ここは……」

会談場所へと到着したミハルは、周囲の光景に面食らっていた。

四方八方が白い、広大な空間。

暗くはないが、別段明るくもない空間。

「半蔵さん……ここ、どこなの?」

「さぁ? 私も存じ上げません」

「……待ってください」

ミハルは、ある事に気付き恐怖を感じ始めた。

「どうしました? 長官」

「僕、本部からここまで、どうやって来ましたか?」

「……」

「口開く直前までの記憶がないんです。何でなんですか?」

「……」

「半蔵さん? さっきからどうして喋らなく」

「来ましたよ。あちらの代表が」

自分の知る爽やかで優しいものでない無機質で有無を言わせない半蔵の声音に、ミハルは困惑する。

彼女は、彼の指差した先に視線を向ける。

そこにはローブ姿の何者か、そしてーー

「……クノア?」

自身が恋慕う少年の姿があった。

見間違えよう筈もない。

つい先刻まで、一緒にいたのだから。

が、何かおかしい。

翼や鱗、太く鋭い爪もそうであるが、彼女が最も違和感を感じたのは、眼であった。

今いる空間のような、血管すら見えない真っ白の眼。

加えて彼は、低くうなっているようにも見える。

「これ……どういう事? 半蔵さん、何か知って……!?」

振り向いた先に立っていたのは彼であって彼ではなかった。

確かに姿は彼のまま、しかしその顔に、ミハルの知る優しくて頼れる存在の面影は全くなく、まるで昆虫のような雰囲気を漂わせた鉄仮面が存在していた。

「半蔵……さん?」

「ここまで来たら騙す必要も無いだろう」

「な、何、言ってるんですか……? 半蔵さ」

「その正体を見せた俺に対する表情……父親にそっくりだ」

「父親……まさか、まさかお父さんを!!」

「「やれ」」

前後から全く同じ声が響いた次の瞬間、

「!?」

ミハルに襲いかかった者が一人。

誰あろう、クノアであった。

「ゥルルルルル……」

「ク、クノア! 待って! 僕だよ! 僕!」

「ゥアッ!!」

爪を思い切り振りかぶり、最愛の者目掛けて振り下ろすクノア。

すんでの所で交わすミハル。

が、その顔には恐怖と絶望が色濃く現れていた。


数分前 異界


「マレアスさんが刺されたって本当ですか!?」

「こんな事で嘘はつかないさ。近々起きると言った矢先にとはね……」

「クノアもだが……ミハルの方も大丈夫だろうか」

「それが……つい今し方私の知り合いから、ミハルちゃんが異界の王との会談に向かったって連絡が来た」

「クノアと? ……まさか」

「そのまさかだろう。事は会談場所で起きる。急がねば」

そして、吾紋とゴーカサットは、静養中だというマレアスの下へと急行した。

彼の部屋の前に立ち、ノックする吾紋。

「今は面会謝絶だ……吾紋君? どうしてここに?」

「カダレエさん! マレアスさんに会わせてください!」

「い、いやそれは無理だ。彼は今重症を負って絶対安静の状態なんだ。 俺の力で多少は持ち直したけど、予断を許さない状況な上、意識もはっきりしていない。だから面会は……」

【カダレエ。それを承知で頼む。時間がないんだ。このままだと大変な事になる】

「大変な事? それは一体……説明している余裕もなさそうだね。わかった、入って良いよ」

「ありがとうございます!」

飛び込むようにして入室し、マレアスの枕元に近づく吾紋。

それと殆ど同時であった。

「……う……う……」

「マレアスさん!」

「マレアス、気が付いたか!」

「君は……」

「機理神吾紋です」

「おぉ……貴方が、クノア様の御親友……!!」

瞬間、上体を起こすマレアス。

「マレアス、まだ動いては……!」

「カダレエ、クノア様は何処にいらっしゃる」

「あの方なら、先程ヴェートと共に城を出発された」

「何!?」

「何でも、対妖魔組織連合? という所が長同士で話し合いたいと会談の招待状を」

「その!」

カダレエが言い終えるより早く、マレアスは彼に近づく。

「その招待状は、誰が持って来た」

「ヴェートが、マレアスの手元に落ちていたと……」

「それは、罠だ!!」

「どういう事だ?」

「俺を刺したのは……ヴェートだ」

「!?」

カダレエは動揺した。

「信じられない……」

「俺もそうだった。だが事実、俺は刺された。説明している時間はない。早く行かねば……ぅっ」

「その傷では無理だ! 仕方ない、ここは俺が……」

【カダレエ、そしてマレアス様。私と彼に任せてはもらえないだろうか?】

「彼って……吾紋君とかい!? 無茶な! お前は兎も角、吾紋君は一般人だ。とても行かせられない」

【彼は、一般人ではない。それに、例えそうだとしても、彼にこの状況を放っておく事は出来ない】

(そうだろ? 機理神君)

「はい」

一切の迷いなく、彼は言った。

恐れがないと言えば、嘘になる。

が、彼にとって更に恐ろしいのは、親友二人を失う事。

それに比べれば、恐怖など無いに等しかった。

「……君が爆破事件を未然に防いでくれた事は聞いている。それなりに戦闘能力は持ち合わせているのだろう。が、それを踏まえても、このまま行かせるのは気が引ける……だから」

カダレエは、袖口から何かを取り出し、吾紋に渡す。

「これを持っていくと良い」

「これは……」

「魔道具の一つで、異界にいても通信が出来る代物だ。いざとなれば、俺がそれを介して奴の生命エネルギーを吸い取る」

「カダレエさん……ありがとうございます」

「吾紋様、クノア様達の事、御頼み申し上げます」

「はい!」

彼はゴーカサット(救世)と共に部屋を出、疾駆した。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

ミハルは今、絶望の真っ只中にあった。

長きに渡り自身を支えてくれ信頼していた人物が、父親殺害の犯人であった事。

自身が恋慕い続けている相手が、理性を失くし自身に襲いかかって来ている事。

そんな中でも、彼女は何とか冷静に状況を分析しようとする。

(クノアは多分操られているだけ……会談も罠……早く詩織さん達に伝えないと……!)

だが、ポケットに手を突っ込んでも携帯はない。

(な、なんで……!)

ミハルは、棒立ちの半蔵の手に自身の携帯が握られている事に気づく。

(そ、そんな……)

「ゴアァッ!!」

クノアの剛腕から放たれる一撃をくらってしまうミハル。

「きゃっ!!」

咄嗟に腕でガードするも、後方に吹き飛ばされ、体が地面に打ちつけられる。

「ぐっ、うぅ……」

倒れた彼女の体はガタガタと震え、眼からは涙が流れ出ていた。

そこへ低空飛行して目と鼻の先まで近づき、見下ろしてくるクノア。

彼はミハルの首根っこを掴み、持ち上げる。

「うっ……あぁ……」

封写機はこの場にない為、一時的に彼を封印する事は出来ない。

連絡手段も絶たれた為、詩織達にこの事を伝える事も出来ない。

その上、体のダメージは激しく、逃げる余力も残っていない。

そんな状況で彼女の頭に浮かんだのは、

(お父さん……)

慕い、そして尊敬していた父親、

(詩織さん……伊草さん……)

自身に親身に接してくれ、支えてくれた者達、

(……吾紋……)

信頼する大親友の姿であった。

(皆……ごめんなさい……)

ミハルは、自身はもう助からない事を感じた。

同時に、最後に言い残したい、いや、伝えたい事を言わなければならない、と決意した。

片腕で自身を締め上げ、もう片腕の爪先の焦点を自身の心臓に合わせる彼に。

「ク……クノア……」

「……」

「最後……言わせて……」

腕が弓を引くように後方へ引かれた後、

「僕……クノアの事……」

心臓目掛けて手刀が放たれる。


「大好き」


瞬間、彼女の鼓動は、初めての停止を経験した。


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