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第3話パート1

救世と別れてから帰路に着いた吾紋。

自室にて携帯を開くと、ミハルからメールが届いていた。

文面からでも、彼女が非常に喜んでいる事を吾紋は感じ取れた。

そして、もう一つの用件――行きたい所の要望――は、なんとクノアと同じタルト屋であった。

吾紋はシンクロに驚きつつも、近辺に当該の所がないか検索した。

それから、二人と数度のやり取りを得て、予定日となった。


「ちょっと早く来すぎたか?」

スマートフォンで時間を確認する吾紋。

時刻は集合時間十分前を指している。

「五分前でも良かったな……」

そう言って、ポケットに手を入れる。

彼は現在、待ち合わせ場所である駅前通りに来ていた。

服装は例によって、ゴツメのズボンにインナーとシャツ、前開きにした灰色のロングコートである。

「……もう一回、状況整理してみるか」

起きてから現在地に着くまでに何度となく行った事であるが、し過ぎるという事もなかった。

(先ず、現在の二人の立ち位置に拘る状況について。ミハルは対妖魔組織連合の長官で、妖魔を封印する任務を行なっている。クノアは異界を統べる龍帝の後継者で、あの世界に君臨し統治している。クノアの世界から怪物が出て、ミハル達が対処している……こんな所か)

ピンと立てた人差し指を指揮棒のように動かし、吾紋は整理を続ける。

(次に、ミハルとクノアからの相談事項について。二人は互いを好いている。が、互いも自身を好いていると知らない。ミハルからはデートのセッティングをしてくれと頼まれ、クノアからはミハルに他に好きな人がいるのか聞ける時間を作ってくれと頼まれた。故に俺がやるべき事は、ミハルがデートだと思えるように俺はサポートに回り、クノアが尋ねられるように二人きりの時間を作る……)

「お待たせ、吾紋」

呼び止められた方を向くと、そこにはミハルが立っていた。

クリーム色のワイドパンツに縦長のフリルが入った白シャツを着、デニムジャケットを羽織った出立ち。

「おはようミハル。気合い入ってるな」

「おはよう。吾紋とクノアと出かけられるなんて嬉しくて、張り切っちゃった」

「なるほど。とても似合ってるよ」

「ほんと? ありがとう。……クノアも、褒めてくれるかな?」

「きっとな。お、噂をすれば」

「!」

吾紋の向けた視線の先に、早歩きで向かってくるクノアの姿。

到着した彼は、切れた息を整え、二人の方を見た。

「すまない、待たせてしまったか?」

「いや、そうでもないさ」

「うん。僕も丁度来た所」

「そ、そう……か……」

ミハルを見た途端、クノアはフリーズする。

「……クノア?」

「あ……えっと……」

見かねた吾紋が助け舟を出す。

「ミハル。クノアは今、ミハルのあまりの可愛さにキャパオーバーを起こしている状態なんだ」

「「!?」」

思わず、顔が真っ赤になる二人。

「……そ、そうなの? クノア」

「あ、あぁ……概ね、そうだ」

「ありがとう。ク、クノアは、スーツにコート?」

「普段、着慣れているやつをと、思ってな」

ぎこちなく会話をする二人を交互に観る吾紋。

(言いたい……互いに好き合ってるぞって、言いたい……)

が、それを言うべき時ではない為、唾と共に彼は飲み込む。

そして、両手を叩き合わせ、

「さ、三人集まった事だし、そろそろ行こうか」

と、促した。


遊ぶといっても、件のタルト屋以外全くのノープランであった為、三人は一先ず駅前を歩く事にした。

初めは三人並んで歩いていたが、

「広がって歩くと通行の妨げになるかもだし、俺後ろ歩くわ」

と、吾紋の言により、三角形状に並ぶ事に。

すると必然的に、ミハルとクノアが隣に並んで歩く形になる。

「……」

「……クノア」

先に口を開いたのはミハルだ。

「? どうした?」

「……手、繋いで歩いても、良い?」

「! 喜こ……構わないぞ」

ミハルは右手を、クノアは左手を差し出し、互いに握り合う。

体温が手を通し、混ざり合うのを二人は感じる。

「……こうやってるの、恋人同士、みたいだね」

「……あぁ」

側からは、初々しいカップルにしか見えない親友達を、吾紋は後方から眺めていた。

その彼の下に、

(おはよう、機理神君)

聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

(おはようございます救世さん。どうしたんです?)

(いやなに、変わった事はないかと思ってね)

(というと?)

(これはあくまで予感なんだけどね……例の未来、近く起きるよ)

「え!?」

「どうしたの? 吾紋」

「あぁいや何でもない、気にしないでくれ」

不思議そうな顔を浮かべつつ、歩行を再開するミハル達。

(何でそんな事わかるんですか)

(言ったろう? 予感だって。だけど……)

(けど?)

(さっき千領瞳を覗いた時に見えたんだよ。何者かにマレアスさんが刺される所)

(マレアス?)

(あぁ、君は知らなかったね。『豪将』マレアス。四天王のリーダー格にして、龍帝軍の総軍司令官。クノア君の補佐役でもあるね)

(な、なるほど……それで、そのマレアスさんを刺した何者かっていうのは)

(クノア君を刺し貫いた奴と同じ姿だった。今日、二人が接触している事もあいまって、近々……起きるんじゃないかと思ってね)

いつになく真面目な雰囲気を醸し出しながら、救世は続ける。

(後これは予想……私としてはほぼ確実だと思っている事なんだけど……)

彼女は一拍置いて言った。

(何者かは、龍帝軍の中に潜んでいる可能性が高い)

(! 俺は何をすれば?)

(察しが早くて助かる。でも未だ待機で良いよ。変化が起これば、その時連絡する。今は親友二人とのお出かけ、楽しんでおいで。じゃ、一旦失礼するよ)

(あっ、ちょっ、救世さん……切れちゃった)

「吾紋―!」

意識を現実に戻すと、少し先でミハルとクノアが立ち止まり、彼を待っていた。

「あぁ、すまん。すぐ行く」

彼は早歩きで親友の下へ向かった。


その後、彼らは百貨店へと入り、文具屋や本屋をまわった。

そして、時刻が正午に差し掛かる十分程前。

「そろそろ、行こうか」

吾紋は切り出した。

「どこへ?」

「タルト屋」

「覚えていてくれたのか」

「そりゃそうだ。自分から聞いたんだから」

エスカレーターに乗り、八階で降りる。

そして数十秒歩き、目的の店に辿り着く。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「三人で」

「承知しました。では、お席の方案内します」

クロスのひかれたテーブル席に案内される吾紋達。

メニュー表を渡され、吟味する事数分。

「よし、決まった」

「僕も決まったよ」

「……」

吾紋は最後まで悩んだ末、

「これにするか」

漸く決め、三人は注文する事に。

それから待つ事、更に数分。

「お待たせしました」

スイーツが、ドリンクと共に彼らの前に姿を現した。

ミハルの前には、ホットコーヒーとパイナップルタルトが、クノアの前にはエスプレッソとチョコタルトが、そして吾紋の前にはアイスコーヒーとロールケーキが、其々置かれた。

「「「いただきます」」」

フォークで一口サイズに切り分け、口に放り咀嚼する三人。

感想は、いずれも『美味』の二文字であった。

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