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第0話
少年は、ある一点を除き五歳以前の事を覚えていなかった。
最も古い記憶は、雨の日に道端で倒れていた所を今の両親に発見された時のものである。
次に覚えているのは大親友二人と遊び戯れた事である。
あまり人と接する事を好まなかった彼が打ち解けた、数少ない存在。
三人でいる時間は、彼にとって最も幸福な時であった。
が、そんな日々も長くは続かなかった。
いつものように待ち合わせ場所へ行くと、彼女らの姿はなく、代わりに二枚の置手紙があった。
それは二枚とも、急な別れへの謝罪と今までの感謝を綴った他二人当てのものであった。
少年は手紙を読み終えると、その場で静かに涙を流した。
別れというものは大抵辛さと悲しさを感じさせるものであると、彼は知識としては知っていたが、それが二つ同時に訪れる事もあるとは思ってもみなかったのだ。
二人の手紙は、以下の文で締めくくられていた。
「さよならは言わない。いつか会えるから。またね」
「再び会える事を願って。またな」
涙を拭き、立ち上がる少年。
彼は楽しみにしたのだ。
また、会える日の事を。
それから凡そ十年の歳月を経て、少年は二人と再会する事となる。
幼馴染みであり、長な馴染みとなった二人に。




