表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

第9話:軽率

挿絵(By みてみん)

ギルド


クエストボードの前で、

僕は、一枚の紙に手を伸ばしていた。



【洞窟ダンジョン攻略】

注意:ゴーレム複数出現



――これだ。


最初に戦い、勝利した相手、ゴーレム。

足は遅く、最悪の場合でも逃げられる。


スキル、核心の一打との相性もよく、

核を集めるだけの単純作業。


楽勝。

そう思った瞬間だった。



「それ。やるの?」



背後から、温度のない声。

受付嬢だった。


「はい」


僕は振り向いて、胸を張った。


「防具が必要って、言われましたよね。

 だから、防具を作るために、ゴーレムを――」


言い終える前に、

いつにも増して、受付嬢の目が鋭くなった。



「命を守る防具を作るために、

 防具を着けず、命を危険に晒す?」



一瞬言葉が詰まった。


「……勝てます。ゴーレムは遅いし――」


また、こちらの言い分は遮られる。



「死ぬよ」



彼女は、僕の破れた服を指さした。


言い返しようもなかった。

気がつけば、また僕は、床を見ていた。


それを見かねてか、受付嬢は息を吐く。



「順番がある」


「まずは、冒険に備える。」


「そして、挑む」



「あなたがやろうとしてるのは」


「冒険に挑んで、冒険に備えようとしてるってこと」



「 逆 」



正論だった。


僕は口を開いたが、何も言葉を発せず、

黙って頭を下げた。



受付嬢はそれ以上、何も言わなかった。




ギルドを出てからの足取りは、ふらついていた。


昨日はドウジ。

今日は受付嬢。


二日連続で、呆れられ、叱責された。

周りは自分のことを、ダメなやつだと思っている。


もしかしたら、本当に自分は…


ひどくモヤモヤする。

その理由……



自分が悪いから。


いや、自分は悪くない。


他人を傷つける、言い方が悪い。


そんな言い方をしてくる、相手が悪い。


いや、そもそも、こんな状況になったこの環境が悪い。


いや…いや…



怒り。悲しみ。言葉にできない感情。

脳内でぐるぐると渦を巻いていた。


こんな時に、自分の周りには、

相談できる人も、支えてくれる人も、一人もいない。


その現実が、より一層胸を苦しくさせた。



どれほど歩いたのだろうか。


気がつけば、

石畳の路は赤く染まっていた。


顔を上げると夕焼けが綺麗で、

それはそれで、なんかムカついた。



――寝よう。



今日は考えるのをやめた。



次の日


起きたのは昼過ぎだった。


お腹が減っていた。


馴染みの食堂に行った。


値段を見ずに頼んだ。



スープ。


ホーンラビットパイ。


ボア肉のステーキ。



美味しかった。


店を出て、膨らんだ腹をさすり、

昨日に引き続き、街を徘徊する。


相変わらず埃っぽい空気。

商人や鍛冶職人たちは忙しなく、

大いに街は賑わっていた。


雑音から耳を背け、考え始める。


次にやること、今やるべきこと。


あれと…あれを…

いや…

それなら…


ぶつぶつと一人呟いていた。



あ。



いてもたってもいられず、

思わず、走りだしていた。



鍛冶場



「ドウジさん」


炉の前の背中が、うっすら動く。


「……なんだ」


「今から、防具を作ろうと思います」


「……で?」


僕は深く息を吸った。



「魔玉に関する加工方法、教えてください!」



少し間が空く。


「……お前、防具作るのは何回目だ?」


「あ、は、初めてです!」


ゆっくり振り返るドウジ。



「ふざけるな」



低く深い声だった。


とても、

それ以上食い下がれるような空気ではなかった。


……


気まずくて、

一秒でも早く、その場から去りたかった。


急いで頭を下げて、急いで振り返る。



「焦るな」



背中から聞こえてきた声は、

先ほどの、威圧的な怖さは無いように感じた。


僕が、恐る恐る振り返ると、

そんな僕を見て、ドウジは深くため息をついた。



「まだ、早ぇってだけだ」



そう言うと、壁際の端材の山を顎で示した。


「まぁ、その代わりっちゃなんだが……」


「あれは好きに使え」


「どうせ、失敗も多いだろ」


……


僕は、目が滲んでいた。


断られた悲しさより、

ただただ、ありがたかった。


もう一度僕は、頭を深く下げた。



「100Gな」

面白いと思っていただけたなら、

評価やブックマークをお願いいたします。

励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ