第15話:揺れる
穴の奥で光る無数の眼。
こちらの動きが止まったことを察したのか、
モーグルたちは攻撃の体勢を整える。
逃げ場はない。
モーグルの厄介さは速さではない。
潜ること、消えること、
そしてどこからでも現れることだ。
ホーンラビットは直線的だった。
だがこいつらは、常に死角に身を潜める。
「核心の一打」は
姿を捉えた瞬間に威力を発揮する。
相性が悪い。
考えをまとめる前に、地面は崩れた。
穴から飛び出した影を、辛うじて受ける。
払う。だがもう消えている。
次は別の穴。
反応が半拍遅れるたび、刺突が防具の隙間を掠める。
プロテクター型の装備は可動域を優先している。
関節部は守りが薄い。
徐々に、徐々に、削られる。
闇雲に振るったハンマーは空を切り、
その隙を狙ってさらに刺突が走る。
敵を捉えられないまま、こちらだけが消耗していく。
叫びながらハンマーを振り回すと、
攻撃は一瞬だけ止んだ。
だが、その代償に呼吸は乱れた。
ハンマーを地面に突き立て、わずかに体重を預けた。
立っているだけで精一杯だった。
穴の奥で、眼光が光る。
獲物を測る視線。こちらの弱りを待つ視線。
柄を握り直す。擦り傷が開き、血が滲む。
それでも離さない。
理屈も最適解も、いまは要らない。
――全てを、破壊してやる。
握りしめたハンマーが、
その気持ちに応えるかのように、低く唸った気がした。
大きく振り上げ、全身の力を込める。
狙うのは、
この、憎い、
穴だらけの地面だ。
ドドッ!!
衝撃が空間に響き、砂塵が舞い上がる。
一瞬だけ、広間が静まり返った。
だが次の瞬間、足元がカタカタと震えた。
体力の限界か。
パラッ
肩に小石が落ちる。
違う。
揺れているのは、自分の足じゃない。
地面が揺れる。
いや――洞窟そのものが、軋んでいた。
面白いと思っていただけたなら、
評価やブックマークをお願いいたします。
励みになります。




