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第12話:洞窟ダンジョンの受注

挿絵(By みてみん)

ギルド


扉を押して中に入ると、

いつもと変わらない空気が流れていた。


受付嬢の前に立つ。


彼女は書類から顔を上げると、

僕を見て、次に、防具を見た。


ほんの一瞬、

表情が緩んだ気がした。


それから、いつも通りの無表情に戻る。



「……冒険者らしくなったね」



不意打ちだった。



「ふぁぃ」



思わず、間の抜けた声が出た。


恥ずかしい。



「前よりは、ね」



そう言って、書類に視線を落とす。

胸の奥が、くすぐったくなる。


僕は咳払いを一つして、

クエスト票を差し出した。



「洞窟ダンジョンのクエスト、受けます」



受付嬢は、紙を受け取り、目を走らせる。



「……これね」



数秒。

短い沈黙。



「期限は、一ヶ月」


「攻略対象は、ダンジョンボスの討伐」


「失敗例は、多数」


「パーティー編成は、四人以上を推奨」



淡々とした声。

でも、なぜだか前よりも“距離”が近い気がした。



「大丈夫そう?」


「はい」



僕は防具を見せつけるように、

少し、胸を張って答えた。



「で、アイテムは?」



……あ。


受付嬢の視線が、ゆっくりと僕を捉える。



「回復薬は?」



……完全に忘れていた。

僕は、張っていた胸を、ゆっくり戻した。



「はぁ……」



彼女は引き出しを開け、

小瓶を三つ、カウンターに置いた。



「回復薬。三本」


「えっ」


「今回は、まぁ、サービスょ……」



受付嬢は、そっと視線を逸らしながら答えた。



あ、ツンデレだ!



「ありがとうございます」



今度は、ちゃんと頭を下げた。

受付嬢は、少しだけ間を置いて、続ける。



「ダンジョンの情報は?」



……再び、固まる。

彼女は、目を閉じた。



「仲間、作ったら?」


「んんぐぅ……」



ぐうの音は出た。



「今回はまぁ、いいわ」



そう前置きした後、

淡々と、一定の高速で説明が続いた。



「まぁ、最低限の情報だけ伝えるからね。

 今回のダンジョンの洞窟は、鉱山の麓。

 近くにノームの村、マインドルがある。

 クラフビルドからは馬車が出てるから。

 馬車で半日ほどで、マインドルに着く。

 さっきも言ったとおり、期限は1ヶ月。

 長期前提だから、その村が拠点になる。

 洞窟に出没するモンスターは、ゴブリ……」



……


……


……



「覚えておきなさい」


「え、あ、はい。」



情報の海に、溺れていた。


正直、半分も頭に入っていなかった。


それを受付嬢に悟られないように、

頭を下げた後、すぐに扉に向かって歩いた。



「ちゃんと帰ってきなさい。ふん」



馬車


1,000Gを支払い、荷台に乗り込むと、

すでに何人か座っていた。



ドワーフが四人。



全員、ずんぐりしていて、

髭が立派で、声がでかい。


一人。

明らかに、小柄な影があった。


もしかして。


ノーム?


そう思ったが、

声をかける勇気はなかった。


馬車が動き出す。



……揺れる。



母親の部屋にあった、ブルブルマシン。

それの、何十倍も乱暴に揺れた。


ガタン。


ガコン。


身体が、跳ねる。


眠ろうと目を閉じても、

頭が上下に振られる。


仕方なく目を開けて、

遠ざかり続ける景色を眺めていた。



ドワーフたちは、元気だった。



誰が酒を飲みすぎたとか。

誰が誰と喧嘩したとか。


どうでもいい。



……スマホ、欲しい。

……酔うか。



暇なので、受付嬢の説明でも、思い返してみる。



拠点の村、マインドル。



ノームという種族が住む村。


ノームは一見、ドワーフにも似ているが、

ドワーフよりも小柄で、好奇心旺盛な性格。


頭も賢く、錬金術に長けているらしい。


錬金術にはよく、鉱物などを使用するため、

鉱山の麓に、住んでいるのだとか。



錬金術。



教わることが、あるかもしれない。

そんなことを考えていた。


何気なく外を眺めると、

まだ、クラフビルドはそこにあった。


……


マインドルへの、道のりは長い。



12時間後


道中はいたって平和で、

接敵の警戒の声が二度ほど上がったが、

特段、何も起きなかった。


馬車が止まる。



「着いたぞ!」



御者の声が響く。


マインドル正門前、到着。



御者に簡単な挨拶と、

同乗者に軽い会釈をした。


馬車を降りる。


僕の足は、ふらついていた。


長時間の馬車移動のため、

散歩でもしながら、ストレッチでもするか。


と、軽い演技をしながら、木陰に入った。



吐いた。



吐き終わっても、

頭はぼやっとしたままだった。


近くの木に寄りかかり、腰を下ろす。


水が欲しい。


もちろん。持っていなかった。


こんなことじゃ、

また受付嬢に冷たい目をされるなぁ。


なんか、少し笑えた。



あ。





初めての回復薬は、

罪悪感の味がした。

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