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第11話:防具の評価

挿絵(By みてみん)

鍛冶場


ドウジは、防具を纏う僕に近づいてきて、

防具の隅々まで、舐めるように見て回る。


次に、触ったり、軽く叩いたり。


僕の周りを何周かした後、

正面に立ち、ジッと目を合わせた。


髭で見えにくかったが、

ドウジの口は、ぱくぱく動いていた。


言葉になってない。


僕はヒュッと、背中が冷える感覚がした。



……また何か、やらかしたのか。



嫌な予感が頭をよぎる。

弱々しい声で、僕は聞いてみた。


「まずかった……ですか」


ドウジは、またしばらく黙って、

ただ防具を眺めていた。


……


長い。


やけに長い沈黙。

そして、ようやく息を吐いた。


「……いや」


言いづらそうに、続ける。


「ダメじゃねぇ」


「ダメどころか……」


詰まった後、ため息混じりにこぼす。



「……すげぇ」



……一瞬遅れて、意味を理解した。


身体がジワッと熱くなった。


僕は恥ずかしさから、

込み上げ続ける喜びを、必死に隠そうとした。


おそらく、相当変な顔をしていたと思う。



救われた気がした。


頑張った甲斐があった。


この世界で、

初めて認められた気がした。


いや、それより、ただただ嬉しかった。



ドウジはというと、

相変わらず僕の装備に釘付けだった。


気まずさを覚えるほど、僕に頭を寄せ、

胸の防具を、ゆっくりと指でなぞる。


ようやくドウジが、話し始めた。



「核は希少だ……」


「スライムの核であってもな」


「初級冒険者では、まずこんな装備は手が出ねぇ」


「余程の貴族様でもねぇ限り……」


「カジ、お前、一体……」



僕は、

転生やスキルのことを明かすべきか、

どう説明したら良いかを迷っていた。


……


「まぁいい」


「そんなことより、問題はこっち」


ドウジは、胸の装備を軽く叩く。



「複数の核で、一つの防具を……」


「これはな、常識の外のもんだ」



「……常識の外?」


思わず、聞き返していた。


ドウジは、ゆっくりと息を吐き、

胸当てに視線を落とす。



「これだけの核を使って、一つの防具を作ろうって」


「普通は、考えねぇ」


「魔玉にせず、核のまま、だ」


低く、噛みしめるような声だった。



ドウジの説明によると——


過去、先人たちの手によって、

核を複数使用した装備作りは、

何度も試されてきたらしい。


だが、その全てが失敗した。


核同士が反発し、性能が暴走する。

加工途中で割れる。

装備として成り立たない。


失敗の積み重ねの果てに、


「一つの防具に、核は一つまで」


それが、鍛冶職人の間での“常識”になった。


そして、

その制限を補うために生まれたのが、

魔玉という付与技術だった。


核を小さく、安定した形に変え、

複数の効果を“安全に”扱うための方法。



「だからな……」



ドウジは、少しだけ言い淀む。



「お前がやったことは」


「先人たちが積み上げてきた、その“常識”を」


「ひっくり返したんだ」



僕は、黙って聞いていた。


魔玉という、核の加工の選択肢は、

前に教えてもらい、知っていた。


二個以上の取り付けが、難しいということも。


でも、核から装備を作る際の、

個数制限もあるなんて、教えてもらっていない。



知らなかった。



ただ、魔玉の話から、核の扱いには、

なんとなくリスクがありそうな気はしていた。


僕が考えたのは、

核をどう“安全に”扱うかだけ。


そこで、ある工夫を施していた。



一つの装備に対して、

核をまとめて加工しないということ。



胸当ては、初めから四分割で設計していた。

背中も、同じ。


パーツとして個別に作り、

それぞれに核を組み込んだ。


これで、仮に失敗したとしても、

他の核には影響が出ないのでは、と考えていたからだ。


それぞれのパーツに、核を組み込み終わってから、

革素材で作った下地に、位置を合わせて固定。


出来上がった、胸当てと背中当てを、

ベルトと留め具で繋ぎ合わせ、胴体の防具が完成した。


防具を部位によって、個別に装着する。


ローラースケートの、

プロテクターから得た発想だった。


動きやすさを優先し、失敗リスクを減らすための設計が、

結果として、核を分散させる形になった。



この一連の、自分なりの考え、工夫を説明してみたが、

ドウジは腕を組み、難しい顔をしていた。



「……理屈は、通ってる。」


「だがな」


「先人たちが、それを思いつかなかったとは思えねぇ」



しばらく、考え込むように防具を眺めたあと、

苛立たしげに頭を掻く。



「……理屈だけじゃ、埒があかん」


「調べる必要があるな」


「あぁ!こうしちゃおれん」



ドウジは、鼻息を荒くした。



「小僧」


「さっさとクエスト終わらせてこい」


「オレは先に、実験させてもらう!」



そう吐き捨て、

足早に自分の作業場へ戻っていった。


……ようやく、解放された。



一息付いてから、武器を手に取り、

ギルドへ向かおうと、扉に手をかけた。


その瞬間、

背中に怒鳴り声が飛んできた。



「小僧!」



振り返ると、

腕組みをしたドウジが、仁王立ちで立っていた。



「そいつは間違いなく、すげぇ防具だ!」


「……グッジョブだ、小僧」



この時、ドウジの笑顔を初めて見た。

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