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目を覚ました時に最初に見た光景は、これまでに見たことないくらいの満天の星だった。
生きてる?よな?身体も痛くない
てか、ここどこだ?見渡す限り広がる草原。
うちの地元に草原なんてあったか?確かに田舎ではあるけど……。
てか、おれあの後どうなったんだっけ。怖ーいお兄さん方にボッコボコにされて、死にかけて…。
「あ」
木の空洞に落ちて…。え?じゃあここ木の中ってこと?
「いやいやいや、そんな訳…。」
木の空洞、満天の星、一面に広がる草原、痛くない身体。
情報が少なすぎて何がなんだか分かんねえ。
とりあえずおれは移動することにした。
と言っても、どこに行けばいいのかは分からないからテキトーに進むしかないけど。
こんなに夜空が綺麗だと、不安な気持ちが逆に増長されるような気がする。
「……………あれ?」
その不安が一層増すような物が目に入ってきた。
いや、目に入ってこなかったと言うべきか。
坂〇九ばりに夜空を眺めながら歩いていると、1つの違和感に気がついた。
「星座が無い?」
別に天文学に精通してるーとかって訳じゃないけど、夜空を見るのは比較的好きだったから、北斗七星だとか、オリオン座だとか、冬のあーだこーだくらいなら知っていた。
そんな数少ない星座が1個も見当たらないんだ。
いやまてよ?うちの地元も星が綺麗だったとは言え、こーーーんなに綺麗な夜空を見たのは初めてだ。星ってこんなにあるの?って感心したくらいだ。
星が見えすぎて星座が見えない?だけ?
多分、自分の中に真っ先に出てきた答えを認めたくなかったんだと思う。
そんな思いとは裏腹に、おれは自分自身で確信に足を運んでしまっていた。
歩き始めてから30分経ったか、少し疲れたから座って休憩をしようと思い、徐にポケットの中を漁ってみると、まだ半分以上残ったタバコが出てきて、ルンルンで吸っていた時だ。
ガサガサ
何かが徐々に、それもかなりのスピードで近づいてきていた。
「えーーーー、なになになに怖い怖い!!」
でも、立ち上がって逃げる気にもなれないからとりあえずタバコを吸っていると、近寄ってきたそいつらが姿を表した。
「ん?……子ぎつねと子ウサギ?」
え?なにちょーかわいいんですけど〜。
野生のキツネはたまに見かけるけど、野ウサギってほぼ見たことないから新鮮だ。
しかも、2匹とも超オーソドックスなキツネとウサギ。癒しが過ぎる。
……でも、キツネにとってウサギってエサだよな?
なんで共存してんだ?せんっぜんキツネはウサギに興味示してないし、ウサギも怯えてない。
2匹共まだ子供だからか?
「キューキュー」
キツネが鳴きながら近寄ってきて、服の裾を引っ張って来た。ウサギはその後ろで「早く!!」と言わんばかりに来た道に方向を向き直した。
「あー」
こいつらに着いてって何処かに誘われるって事ね。
もうこの時点で普通じゃないって分かる。
……けど行く宛ても無いしなあ。
「わーったよ!お前らに着いてくから引っ張んな!」
それを聞くなりダッと走り出した2匹を必死に追いかけた。
なに?穴に落ちて、知らない場所に着いて、キツネと"ウサギ"を追いかけるって、なんちゃインワンダーランド?おれよく狂ってるとか言われるし、さしずめジョニー・〇ップといったところか(調子に乗った自覚はある)
そんな、なんちゃら船長気分でウサギ達を追いかけていると、そんなに走った訳でもないのに、目の前に森が現れた。
「暗かったから見えなかった?いやでも…夜の割には月が明るいから…?」
一抹の不安を覚えながらも、ここまで来たからにはキツネたちの後を着いて行かない訳にもいかない。
意を決して森に足を踏み入れ、また後を付いて行った。
森を突き進むこと約15分……。
「お、やっと辿り着いたか?お前らどんだけ走らせ………え?………………。」
真っ先に感じたのは"臭い"だった。
逃げ場の無い鉄臭と、鼻を突き刺すような刺激臭。
「グルルルル」
子ぎつねが必死に牙を剥いて、威嚇をしている。
子ウサギは兎に角怯えてしまっている。
徐々に視線を上げてくと、目の前には真っ赤に染まった地面に、見るも無惨なキツネとウサギの遺体が無数に転がっていた。
「なっ、なにこれ……」
そして、その遺体にはハエが集るかのように
緑色の小柄な怪物が群がっていた。
「ケケケケッ」
その全ての情報がおれに恐怖心を与えた。




