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OLだった私が伯爵令嬢になったので、まずは経済叩き直します  作者: 猫じゃらし
この世界、女の子はお勉強しちゃダメらしいです
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『静謐の灰眼』

その人が、ル・クレール荘園の門をくぐった日私は、運命がひとつ音を立てて動いた気がした。


「君がアリスティア・ルシエール嬢か?」


第一声は、必要最低限。抑揚も感情も削ぎ落とされたような声だった。

けれど、その眼差しだけは鋭く、まるで私の内面を見透かして見るかのような、冷静で知的な光を宿していた。


黒の外套に身を包み、手には厚い本を一冊抱えたその人リュシアン・クラウス。

光の加減で赤みを帯びる甘栗色の髪と、霧がかったような灰青グレイブルー


その印象的な瞳の色と冷徹なまでの論理性から、かつて帝都では彼のことをこう呼ぶ者もいたという…..

“静謐の灰青“。沈黙の中に威圧を含んだその異名に、私は一瞬息を呑んだ。


「はい。私がルシエール伯爵家の娘、アリスティア・ルシエールです」


自然と背筋が伸びた。ただ礼儀正しくあろうとしたわけじゃない。

あの人の前では、そうするのが“当然”だと思わされたのだ。


彼の名は、リュシアン・クラウス。

帝国学術院を史上最年少で首席卒業し、帝国図書院や王立魔導研究所への推薦を全て辞退してまで、今この場所にいる。


理由はただ一つ。

ルシエール伯爵が、”娘に、この国にない学びを与えたい”と願ったから。


リュシアンは静かに言った。

「対応は落ち着いている。では、時間を無駄にはしないとしよう。書斎へ案内してくれ」


それが、私と彼の最初の会話だった。


最初の授業の日。私は緊張と期待の入り混じる気持ちで席についた。

リュシアン先生は、書斎の机に分厚い本を3冊並べ言った。


「まずは帝国の歴史からだ。だが、暗記だけでは無意味だ。必要なのは“問いに答える“力”だ」


そう言って、唐突に問いを投げかけてくる。


「帝国が成立する以前、三つの勢力があった。名とそれぞれが“何を守ろうとし、何を失ったか”簡潔に要点を述べよ」


私は、前世の記憶の中にある“要約”や“論理整理”の授業を思い出しながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「古王朝派は血統の正当性を守ろうとし、民心を失った。魔導連邦派は魔術の自由を守ろうとして、秩序を失った。商業都市同盟派は自由な交易を守ろうとし、軍事力を失った」


しばらくの沈黙のあと、リュシアン先生は一度だけ頷いた。


「良い着眼だ。言葉を切り取る力がある」


それが、彼からの初めての“評価”だった。

それから彼は持ってきた本を私に差し出した。


「これを君にあげよう。きっといい勉強になるだろう」


「ありがとうございます」


私は少し戸惑いながらも受けとった。

先生が部屋を後にしたあと兄がすぐに部屋に入ってきた。


「初日の授業はどおだった?」


「……緊張したけど、すごく刺激的だった」


シリルお兄様は、私の机の上に置かれた本にすぐ目を留めた。


「それ、リュシアン先生がくれたの?」


「うん。授業のあとに、“これを君に”って」


お兄様は、そっとページをめくって、目を細めた。


「これは貴重だよ。……というか、普通なら手に入らないと思う」


「そうなの?全然知らなかった」


「歴史や経済を深く学ぶなら、これ以上ない良書だよ。あ、でも……」


彼は少し眉を上げて、口元をいたずらっぽくゆるめた。


「僕がこの本を知ってる理由、聞きたい?」


「聞かせて」


「……お父様の書庫にこっそり忍び込んだら、たまたま見つけたって言ったら、怒られるかな?」


「最高に面白そうじゃない!今度、私も連れて行って?」


「もちろん。可愛い妹の頼みならね」

お兄様は、いつものように私の頭をぽんと撫でて、部屋を出ていった。


ある日、授業の内容が変わった。


「次からは、“この国の言葉”そのものを学ぶ。帝国共通語だけではなく、古いマルセ語の素読も始める」


彼が机に広げたのは、褪せた羊皮紙の写本。

そこには見慣れない幾何学的な文字が並んでいた。


「この文字…. 表音ですか?表意ですか?」


思わず問うと、リュシアンは驚いたように一瞬目を細めた。


「普通は、そこに疑問を持たぬものだ。…. 表音だ。“音を記録する文字”として発達した体系だ」


私は、古い記憶の中の“ルーン文字”や“象形文字”を思いだしながら、線と点の交差を見つめた。


「そして数字も学ぶ。帝国の計算体系は“セプタム式”…..七進数が基盤となっている」


机の上に置かれた石板には、点と円、三角のような記号が彫り込まれていた。


「七進数….。つまり、0から6までが基本で、7は“10”になるんですね」


「…..君は面白い子だな」


珍しく、先生の声にわずかな興味の色が混ざった気がした。


私は知っている。

この世界の多くの貴族令嬢が、文字や数字を“飾り”だと考えていることを。

つまり彼らにとって文字は読めるだけでいいのだ。


でも私は違う。違わなければならない。

私には剣も魔法も使えない。けれど、言葉がある。数字がある。知識がある。

それらを使って、この国で“女の子が頭脳で戦う“ことの意味を証明するために。


そして、私自身の未来を、誰かに委ねるのではなく自分で掴み取りにいくために!!

私はペンを取り、まっすぐに先生を見た。


「次の問題をお願いします。もっと難しくても構いません」


そのとき、リュシアン先生がわずかに目を細めて…御かに、ほんの御かに、笑った気がした。

….たぶん私の“決意”がようやく届いたのだろう。














































皆様こんにちは。

アドバイスなどありましたらぜひお願いします!!

出来れば優しい言葉でお願いしますm(_ _)m



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