『勉強は、革命の第一歩』
目覚めてから数日が過ぎた。
兄のシリルは9歳ながら既に父の補佐をし、ルシエール商会の手伝いをしている。
兄は父と同じいわゆる天才という分類に入るのだろう。
私も将来的に個人的に商団を運営したいからね…
ってことでまず勉強!!
「お父様!」
私は胸の前で両手を握り締め、真っすぐな声で言った。
「私、12歳になったら大公国のアカデミーに行きたいの!だから入学するためにも家庭教師の人にきてほしいの!!今のままじゃダメなの!!」
その言葉に、父の眉がぴくりと動いた。
「ルシエール領にも、立派なアカデミーがあるじゃないか」
「違うの。大公立アカデミーじゃなきゃ意味がないの」
私は一歩前に出て続ける。
「あそこには、周辺国の人達もくる。実力だけで人を見る環境なの。だからこそ、学べることがあるのよ。それに大公様はお父様の旧友なんでしょ?」
1番いい点は周辺国の人達とも交流できることよ
最高の環境じゃん!
これは伯爵領じゃ無理よ。将来的に人材もスカウトしていきたいしね….
「お父様も知ってるでしょ?大公立アカデミーは実力が無いと入学ができないってこと。それにシリルお兄様の入学も決まってるじゃない」
そう、私の兄は早期入学が決定しているのだ。
父の旧友の大公が申し出たらしい。
また大公家には11歳の大公子と6歳の双子の姉妹がいるそうだ。
普通に仲良くなってみたい……なんて、こればかりは“下心”だと自覚しているけど。
「とにかく入学するには実力がないとダメなの、お願い!!」
私はお兄様をじっと見つめて必死にアピールした。なぜなら、兄は私にものすごく甘いのだ。
「お父様、可愛いティアがここまで言っているんですよ?それにティアにとってルシエールアカデミーで習うことだけでは物足りないと思うんです。」
お兄様は将来私が大公立アカデミーへ来ることを前提で話していた。最高の兄である。
「そうか、そうだよね….大公立アカデミーは大陸で1番と言われているしね。入学するためにも家庭教師を雇おうか。1人思い浮かぶ人がいるんだよ。きっと彼はティアにとって良い先生になると思うよ。その人に頼んでみようか!」
父は少しいたずらそうに微笑んだ。どんな人か分からないけど楽しみだ。
ルシエール家ではアカデミーを卒業する年齢…
現代で例えると18歳で補佐などの仕事だけではなく幅広く事業にも関われるようになる。
母のマリエッタは帝国では珍しい女性でのソードマスターである。
そのため彼女はルシエール商団でソードマスター専用に開発された魔導剣の専用設計の特許登録をしている。
また彼女は、自身の戦術や剣技を特許登録しているためこれを使ったり教えるには料金が発生する。
しかし、ルシエールアカデミーで剣術を学ぶ生徒は例外である。
“知を力に変える“ルシエール家は、武器技術の管理・流通も行っており、一部のソードマスターと提携契約を結んで、武器の特許使用料を得ている。
「え、武器にも特許があって、使用料でめっちゃ稼げる!?だったら、女性用の軽量魔導剣を開発して、女性ソードマスター育成と武器流通をセットで始めれば革命では….?」
「ティアは女性剣士に友好的なのね?」
「当たり前じゃない、お母様!お母様は帝国でたった12人しかいないソードマスターのひとりなのよ? 私にとっては誇りそのものだわ。」
母親であることを抜きに考えてもすごいことだ。それに……帝国の教育方針自体がおかしい。女性がアカデミーに入れず、剣を手にすることすら異端扱いされるなんて、そんな時代錯誤がまだ続いてる。
だからこそ、私は変えたいの。女性が学べて、戦えて、稼げる環境を――。
才能ある人が埋もれずに生きられる世界を、私の手で作ってみたい。それは、ルシエール家が“知を力に変える”家だからできることだと思う。
でもそれって逆にビジネスチャンスいっぱいってこと!?
やっぱ早く勉強しないと!!家庭教師の先生はどんな人なのかな?