#6 生命の尊さとは?(Be angry)その四,の巻
前回より長いので御注意下さい。
2024年3/16にキアチのセリフを追加しました。
3/20、前回の加筆修正や主人公他のセリフを変更しました。
4/7、主人公の台詞の追加・修正を行いました。
プラザは自身に一瞬で伝ってくる静電気に怯えそうになるもソレは何処か温かく、優しくて優依その物を感じた気がして自然と怖くなくなっていた。
瞳を開けた先に広がる光景は夜の村を空から見渡してキラキラと輝いているのが堪らなく楽しくて自分達の置かれているはずの辛い状況を忘れてしまっているかの様だった。
「大丈夫だ。
その上着にはレセプタと絶縁体がある‥‥それに俺が、お前を傷つけるかよ。」
◇◇◇◇◇
「勇者と少女を早く見つけて此処に連れて来なさい!
死ななければ両方もワタシの新たな手札になる事です。
墓標の父上も悲願が叶ったと草場の影から喜んで下さりますよ。」
短く返事の後には奴隷達は優依とプラザを捕らえなければならない命令に従わされ動いていた。
彼等はオオカミや犬が大半で構成された隠密班だ。
各自がプラザと優依の匂いを辿って行き着いた先は家の裏や屋根の上といった場所には案山子が仕掛けられていた。
彼等は命令の範囲内で互いに獣の鳴き声で連絡を取り、フリーモンデに報告・連絡を済ませると案山子と分かっていながら敵として優依達の残りの匂いのする場所へと追跡を開始した。
『我々はフリーモンデの奴隷だが味方では無い。
そして彼は長年の悪夢を晴らす太陽だ!
これからする行動はフリーモンデの命令のままに、ターゲットを捜しているだけだ。
だからコレは。
ソコにフリーモンデへの敵意も反逆の意思も存在しない!!』
班のリーダー、イデンは壁を走るように屋根に登ると、一瞬の間に瞳を瞬かせるも視線を戻すと案山子の匂いの元へと走った。
◇◇◇◇◇
時を同じくしてフリーモンデは苛立ちから歯軋りと貧乏揺すりをしてはステッキをクルクルさせて独り言を吐く。
「遠吠えでは意味が、さっぱりです。
伝令役も行かせたのは失敗でしたね。
次からは予備も用意しておきますか………そこ!?」
フリーモンデがステッキから放った火球は家の前にあった水の入った木樽を爆発させるに終わる。
「よぉ、ハズレだぜ。
自由野郎ぉぉぉぉぉぉお!!」
優依は声を張ってフリーモンデを屋根から見下ろして現れる。
しかしその声は怒りを数ミリも隠さず全面に表現している。
「証拠にも無く又もや現れましたか。
これはこれは大事に抱えて、ぜひ大事に守って下さいよ!!!」
「{火球放射線}」
いきなり視界に姿を表した優依に空かさずステッキから魔法を発動させてプラザごと、殺そうとする。
「フッ」
屋根から身を投げ捨てるように落ちて火炎放射を避けようとも何もせずに降下していると空中から透明の床があるように闊歩すると、アッと言う間にフリーモンデの近くに着地して猛スピードで駆け寄ってくる。
その表面には電撃が走っている。
「何っ??
案山子ですって!!??」
優依が抱えていたのはプラザの格好をしていた藁などで作られたマネキンだった。
端っこ部分から燃えているとフリーモンデが目を見開いた瞬間には全体に燃え広がっていく。
優依はそのカカシをフリーモンデに投げ渡して殴り掛かるとする。
カカシを地面に捨て咄嗟に顔を隠すように構えるも痛みの刺激はフリーモンデには訪れなかった。
部下が事前の命令に倣ってフリーモンデと優依の間に入り攻撃を防いでフリーモンデを庇い守っていたからだ。
「よっ、よくやりました!!
誉めて使わしますよ。」
冷や汗を誤魔化してフリーモンデは得意気になると調子と心の平穏を取り戻す。
「クソっ」
捨て台詞を吐いてバックステップで距離を取ると優依はカミナリを纏って姿を消す。
「万策失くなったのではありませんか、格好を付けての登場でしたからね??」
「うんにゃ、後ろだ。」
フリーモンデの頭上空中に着地すると一瞬で地面に移動すると肘で殴り追撃しようとして優依は破顔する。
フリーモンデは倒れて顔を腫らしながら痛い痛いと泣き喚くだけだったからだ。
「拍子抜けだな、この程度かよ。
ほら痛いの嫌なら、さっさと──だぁ!?」
鉄パイプの杖を振り翳すも攻め倦ねて気が緩んだ瞬間、いきなり視界の外からタックルを優依は食らう。
ジタバタし終えたフリーモンデに奴隷の1匹に回復薬を掛けてもらい立ち上がる。
「ふぅ~。
私に1度までも2度まで膝を着かせるとは。
許し難い、許し難いですねぇ~!!
………あの小娘を何処にやったーーーーーーーー!!!」
大声で取り乱して癇癪を起こすと自身とステッキから魔法を撒き散らすように放ち始める。
「てめぇ!」
「どうしましたか。
ほら早くしないと大事なペットが死んでしまいますよ?」
家屋は燃え上がり、一帯は火災と煙で惨事となる。
「やっぱ、悪人は悪人だな。
間違っても、お前に教えるかよ。」
フリーモンデに近付こうと、一歩踏み出そうとして優依は止まる。
フリーモンデが消火していた村人と彼に控えていた奴隷を魔法で砲撃したからだ。
「間抜けですね。
動けば撃ちます。
時間が経つに、つれて被害は拡大しますよ。
……全く、ペットの分際で一丁前に刃向かいやがって身の程を知りなさい。
早く居場所を吐かないと大勢のペットが死にますよ」
「黙れ」
「へ?
なんと言いましたか?」
「‥‥黙れって言ったんだよ」
「いい加減、口の聞き方が成っていませんね。
コイツらを殺したら、お前も奴隷にしてやる。
真の勇者の奴隷なんて、なんて魅力的てしょうか。
大人しく隷属されていろぉ〈奴隷契約〉!!」
手から奴隷にするスキルを発動して魔法陣を出現させると魔力の鞭が伸びて優依を狙う。
「喋ってくれるなって言ってんのが分からねぇ~のか!」
下を向いたまま鉄パイプでソレを凪払うとバリバリと静電気は雷に変えて優依に纏うと電気は地面にを伝って半径2メートルのサークルを出現させる。
電気のサークルは優依の周りから静電気や磁力を集めて範囲に入った者を浮かせて痺らせて拘束する。
「阻止されたですって!?
ドコまでワタシを虚仮にする気だ!!
消えっ!?
ぐぱぁっ???」
一瞬の淀みも見せず目の前に現れた優依に正面蹴りを喰らい地面を転がる。
「何様のつもりだぁ?
身の程を知れ……だと。
お前こそ身の程を知りやがれ!」
一歩一歩と近付いて来る優依に恐怖で尻餅のまま後退りをしていると反対側からプラザを抱えた1号、マボスが勢いよく着地して揺らすとフリーモンデに迫る。
プラザは意を決した様子でフリーモンデに己の意思を声を上げて、彼女の全ての勇気を張って叫んでいた。
「私は貴方を許せません!
だから、でも、でも貴方と同じ事は、したく有りません!!
神や偉い人は関係ありません!
私の、巫女の権限で貴方の呪縛から解放する事を宣言します!!
だからもう、逃げません!
私も戦います!!」
「ご…ろ"す、じた…い"。
だも、オレ"は…巫女の守りび…と…神官だ。
…お…前を…捕…まえ…て…裁かれ…る。」
「ふざけるな!!
ワタシに血を流される等と!!!
奴隷風情が口答えするな!!
血迷ったのかぁぁぁ、この俺にぃ、主に従え!!!
ぶほぉ!?」
「うるせぇ!
好き好んでペット扱いされてーー奴がいるわけねぇだろうが。
コイツの言う通り、お前は警察に届ける。
プラザ、隠れてカカシ作るって言ってたろが!」
「警察?
訳の分からない事を!
そうだ、この村の名前の由来をご存知ですか?
ワタシの父が名付けたのですがね。
エンドのンの村、ンに次の言葉は無い!!! 最初から此処に希望など有りはしないのですよ。
終わりを迎えた湿気たお前らを使ってやっていたんだ!
有り難がって貰いたいのは、こっちの方なんですよ!
それを獣人の分際で、大層な名を名乗りぃ?
自然と大地を守ってきただぁ?
アホ臭いったら有りゃしない!!
古くさい神だの精霊だのと!」
「何処までバカにすれば気が済むんだ!!
お前みてぇな屑は──」
「屑?
ワタシは彼等を服従させただけですよ。
そのお蔭で充分な衣食住が与えられているはずですよ。
グズなのはコイツらの方です!
そしてワタシを口汚く罵る貴様もグズなのだよ!!
そら、やりなさい!」
フリーモンデの合図でムサブ達が屋根から降りて駆けつけるとプラザ達や優依に飛び襲い掛かる。
「1匹ではなくて5匹以上で掛かりなさい。」
忍者の攻撃を捌きながら、この場からプラザを逃がそうとしていた優依はフリーモンデの、一言に忍者1人の拳を受け止めて電気ショックで眠らせて睨む。
「匹?
‥人だろ?」
「これは又、可笑しな事を言う。
獣人なのですよ?
我々、人とは成り立ちが違うのですから。
きっかりと区別しなくてはね~」
「それを言うなら、お前も俺も元はサルだろ。
見て呉れだけで物事を測ってるから、お前は三流以下の屑なんだよ。」
「猿?
三流のクズですか?
異世界の知識ですかね?
散々ワタシをバカにして、それでもワタシを殺さず捕まえると善人ぶっても出来ていないではありませんか?」
「捕まえるだと?
ユウイ、どう言うことだ!
フリー‥モン‥‥デ‥さ‥ま‥を!?
私達との約束は?
プラザを託した我らの気持ちを、うあ!?」
「ムサヴァ!?」
「フン、奴隷が主人を無視して、それも命令違反を犯して口を開くとは。
ココに来てから思い上がっているようですね!」
「思い上がっているのは最初から貴様だフリーモンデ、あぁうぁ!?
うあぁあああああああああ!!」
ムサヴはフリーモンデからの奴隷印から発せられる罰から起き上がるとタトゥーの炎を受けながらも続けて仲間が止めるようにするのさえ振り手解き止まらない。
「衣食住を与えただと!?
そんなモノは貴様に壊される何十年も昔から私達は、この村には有ったんだ!
それを踏み潰し、燃やして破壊して家を!
子を!
友を!
家族を!
全て奪うような良心の欠片も無い、お前に語かれる屈辱はぁ!!
お前に資格がぁ何処にある?
感謝するとでも思うか、何処にある!!
我らは黙って従がっているような、お前のオモチャでは決してないんだぞ!!!」
必死の形相と火を昇らせるムサヴに詰められフリーモンデは呆気に取られ尿を漏らして燃え盛っている家屋の無事な壁に後退され背を当てて逃げ場を失う。
炎に気力を失い前へと倒れそうになるムサヴを抱き締めると優依は2人が心配から急いで駆け寄ったプラザに回復魔法を掛けてもらい、その場から移動しようと開始する。
「プラザ避けろ!!
お前、プラザを抱えて直ぐに隠れろ!
俺も直ぐに行く!」
急いで優依が叫ぶ。
抱えているムサヴは積年の恨みを吐き出し言い切った気分からか表情は思いの外、スッキリしているように見えた。
◇◇◇◇◇
我に返り激情したフリーモンデは感情に任せて唾を飛ばしながら魔法を乱発しては悪戯に破壊と炎上を散蒔いていく。
「うるさい、うるさい、うるさーーい!!
貴様らぁーーワタシを愚弄して只で済むと思うな!!
こんな醜態をぉぉぉおおお、貴様らを殺して、切り刻ざんで家畜の餌にしても、この怒りは収まらんぞ!!!」
獣人に聞こえる笛を吹いて消火していた村にいる全て奴隷に命令を下すとフリーモンデは荒ぶる。
「そうです!
栓を抜きなさい!!!
このワタシを怒らせたのです、この村はもう終わりですよ!!
ここは嘗て火山が合った地、太古の獣人が神と盟約し、恵みに変わり守っている土地なのです。
そして温泉の源泉が地下にあるんですよーー!」
村中にある大小のバルブが大量に一気に開けられ温水や蒸気が溢れる。
噴水した温水はフリーモンデが燃やした家や村の火を消して、温泉水は湯気を作り水浸しにしていく。
刻一刻と湯気は視界を白く染め始める。
そこにプラザと、そっくりな少女が村に丁度帰って来る。
「何よコレ?
どうなってんのよ?」
籠を落とし入っていた果物が散らばる。
彼女はプラザと同じ年頃に同じ髪型と格好だったが1つだけ違うのは兎耳と尻尾では無く、猫耳と尻尾と言う点だった。
「ラウザ!?
今まで何処にいたんですか。」
追手の奴隷達を気絶させてプラザ達の元に空から降りて来た優依は一瞬、静かに驚く。
「ラウザ?
‥‥プラザが言ってた妹か?」
「何よこれ。
プラザの好きな果物、取って来てたら遅くなったの!
どういう事よ。
説明してよ、何がどうなってんの?」
マボスの後ろに抱えられていた村長ギアはフリーモンデの隷属魔法を無効状態下でラウザに状況を教えようと肩から姿を見せる。
「ラウザ!!
それより隠れなさい。
話はそのあとです。」
フリーモンデから距離を取るため村長宅近くに移動していたプラザ達から、一通り話し終えた所でマボスの両手に抱えられていたムサヴが目を覚ます。
「……プラザの姉妹だ、うぅぅ」
「そうですユウイ様。
我ら獣人には姉・妹の概念は在りませんがラウザは同じ母から産まれたプラザの妹と言っていいでしょう」
「それにしても、こんな大変な時に今まで何処にいたんだ。
ぐうぅ。」
痛みに堪えながらムサヴはマボスに支えられながら立ち上がる。
「だから今朝、プラザとケンカして、それで──」
「やはり双子でしたか!!
一匹は頂きますよ」
湯煙の切れ間から熱を帯びて発光するステッキが凄まじい回転をしながらラウザを狙って射殺そうと石突きが顔を出す。
フリーモンデの奇襲にラウザとプラザの前に出ようとして優依は特異能エネルギー補給強化薬の効能が切れるのを感じて身体の感覚が衰え前方に倒れてしまう。
「糞っ、こんな時にかよ。
ラウザ、逃げろーーーー!」
優依は急いで動けなくなる身体と眠気を気力で気張るとベルトの後ろにあるバックからチョコの特異能力エネルギー強化薬を取り出すとクチに運んで直ぐに立ち上がるも、その時には手遅れだった。
プラザはラウザを庇い右腹に穴を空けられ後ろに転倒してムサヴに抱き抱えられるも血溜まりを作って染めていた。
「きゃーーーーーー!?
ウソ、ねえ何で?
何でよ?
プラザ?
私、ヒドイ事言ったのに。」
「‥‥‥‥私達は家族ですから。
母のいない私達には私が母に‥ぐぐぅ。」
「プラザ喋るな、気管に血が入って反って良くない」
「ユウイ大丈夫か?
お前も体調が芳しくないのだろう。
おい誰か!!
回復魔法を使える奴を呼んで来てくれ!
早く!!
村長、遠吠えだ!」
血を吐きながら起き上がった優依はバックから補給強化薬を取り出そうとして躊躇する。
そもそも強化薬とは特異能力者用の代物だ。
そして独自能力専用、つまり使用者を優依に限定・前提条件に作られた物であり他人の使用は度外視されている。
仮に服用したとしてもリスクしか考えたられず、しかもプラザは異世界人で特異能も持っていない。
それだけで体は拒否反応──拒絶現象──を起こし最悪の場合、即死も考えられる。
「クソっーーーどうすりゃいいんだ!!」
「だから仲直りの印にプラザの。
私達の好きなルルミの実を取りに行ったの。
ねぇプラザ食べてよ?
死なないで、お願い。
食べて。
元気になって、いつもみたいに笑いたいだけなの。
お願い、プラザ!!
私、こんなのイヤだよ。」
すると優依のパーカーのフードで眠っていたレッドスライムが飛び起きてプラザに覆い被さる。
「ちょっと!?
何してるのッ?」
レッドスライムがプラザの傷口を塞ぎ再生を促し活性化させているのだと気付くと優依はレッドスライムを引き剥がそうとしていたラウザを止める。
「おまえ、応急措置してるのかスライム!
なぁ魔法の世界なんだろ?
プラザが使ってた回復魔法使えよ!」
「私は回復魔法の適正がないのです。
ラウザ、お前少しは行使出来るはずだが見た所、魔力を使い切っているな。」
「プラザァァ、。
‥‥ハイ、夜の森で怖くて魔除けと灯りの魔法を、でもまだ出来ます、残ってます。
他の皆と、一緒ならプラザは助かりますよね?
そうですよね村長?
ねぇプラザ、目を開けて!」
「マボス、儂を反対に移動させておくれ」
ムサヴと位置を交代してマボスに抱えられていたギアは立つと地面に倒れているプラザにラウザに回復魔法を唱え始める背中に手を沿えて魔力を流して渡していた。
「ちょっと待ってろプラザ、俺に出来る事をしてくる。
他の回復使える奴を連れて来れるようにしてくるからな。
………1分いや30秒で倒して戻ってくる。
今、アイツを殴ってくる。」
「ユウイ、お前…………。
‥‥‥ワオォォォォォウウゥゥゥゥゥ!!
ウウゥゥゥゥォォォアァァァォォォォォォォォォ!!
(※奴に、フリーモンデの命令を更新されていない者は直ちに此処に急行しろ!!
特に回復魔法が使える者だ、プラザが緊急だ
他の者はユウイを援護するんだ!!)」
ムサヴは遠吠えで村全体に現状を伝えて出来る限りの精一杯の手助けと優依を激励で送り出した。
◇◇◇◇◇
薄れゆく意識の中でプラザは理由も無く離れていく優依の姿へと手を伸ばしていた。
『…ユウ…イ様………。』
「コホッ、ゴホォゴホォ。」
一面が白色に迷いそうにながら優依はフリーモンデを捉えていた。
それは本来なら1日に1度しか服用しては成らない強化薬のチョコレートの効果にある。
飴玉の場合、身体機能の時間限定のドーピング投与と特異能力の増加と、まだ体にそれでも優しいが、しかしチョコレートのボールは1度、内側から回復をナノマシンが促すと筋肉組織の過剰強化と特異能力の無尽蔵の吸収だからだ。
破壊と再生を、一時的にハッキングして効果時間が切れるまで気絶や眠りを拒否し覚醒を強制する。
空気中の静電気や地面等の電気エネルギーを表面から吸収して体の限界を無視して蓄えてゆく。
そのため常に体に電撃を纏い、プラズマを放出していないと自身の電気信号を阻害し兼ねない諸刃の剣の効果を発揮する。
使用期限は5分と飴玉より短くなっている。
だが使用者の効果後のダメージは絶大だ。
異空間から手探りで手触りだけで少しザラザラしている飴とツルツルしているガムの中からスベスベしているチョコレートを咄嗟に見分けた優依は限られた時間の中で湯気から不意の攻撃を素手や足で受け止め払いながら周囲の静電気を把握している優依はフリーモンデの場所へと走る。
『くっ!?
なぜ何度も、一直線にワタシの元へ来れるんだ?
位置がまさかバレているのか?
ならば……………』
「これでも喰らえ!!!」
火球を射った後に空かさずバルブからホースを伸ばすと湯気を勢いよく放出する。
一点に集中させて煙のように浴びて優依は煙たく目を閉じ、咳き込み顔の前に手を出して湯気から逃れようとする。
そこにフリーモンデがステッキで刺すように突いたため優依はバランスを崩し、そして地面に水滴に帰化した水溜まり程でも無い一部で滑り傾斜していた事も有って転けてしまう。
そのため追撃のスキルの乗った斬撃を躱した形になり立て直すとグッと前に出るとホースの噴射口を鷲掴みにしてフリーモンデへと向けて激しい勢いの湯気を浴びせ返す。
咳き込んでいる間にチャージせず電気ショックを当てるが弱かったため飛び退いてホースの先にある栓を見つけると電撃の乗った拳で破壊、温水溢れ出る穴を内靴で踏んで飛び出る方向をフリーモンデに勢いよく直撃させて押し流すと宙を走って火球から避ける。
「貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
水浸しになりながらステッキを振って至る所に火球を放つと声を張り上げながら優依を探して練り歩く。
その間に優依は畜舎の入り口を取り払って納屋のモーモー猪牛や、トクトク羊鶏を解き放って更にフリーモンデを混乱させる。
栓を閉じ宙や屋根を駆け回る。
プラザが作っていたカカシを仕掛けてフリーモンデを騙すが燃やされ時間稼ぎは失敗に終わるも、その頃には視界は開けて湯気も少なくなると改めて2人は対峙する。
モーモー猪牛等は既に辺りに散らばっていて納屋に戻っているモノさえいた。
それらを気にせずに汗を垂らし肩を上下するフリーモンデと涼しい顔で雷電を纏っている優依は言葉を交わさず距離を詰める。
「〈ホーン〉
〈スピン〉
〈スティング〉
{ファイアー}」
ありったけスキルでステッキを刺すように振るうフリーモンデの攻撃の全てを容易に躱しては往すとプラザとの約束を果たそうと、一撃の拳しを当てようとしてフリーモンデは雲の様に穴を開けてユワリと溶けていく。
「陽炎ですよ!
クフフフフ。
カカシの、お返しです。」
湯気から着想し気温の高い今しか使えない魔法が成功してフリーモンデは笑う。
優依は間髪入れず退くと壁を蹴って飛び上がると降下する重力を使ってフリーモンデを殴り付ける。
『今度こそ、プラザの分だっ!!』
「寝たフリ止めろ、起きてんだろ?」
蹴ろうとするとフリーモンデは急いで跳ね上がる。
「‥‥‥‥‥まっ、待て!?
金を、金をやる。
今なら部下に取り立ててやるし、今までの失礼な物言いも許してやる!!
そうだ、貴方の武力とワタシの財力、この2つが手を組めば最強になれますよ!
とうだ?いや、どうです!
破格の対応でしょう?」
無言で詰め寄ると優依はフリーモンデの首根っこ、を掴み持ち上げる。
地面から足が離れプラプラ、バタバタさせると苦い表情は冷や汗と青い顔で染まる。
「金で救えるのか?
金で命が助かるのか?
金があるだけで偉いのか?
それで、お前の所業が無かった事になんのかよ?
その金と地位を得るためにやった、お前の悪事と罪は消えたりしねぇーんだよ。」
「‥‥お前は何も、わかっちゃいない!」
一呼吸置いてから手を離すと反対の腕で顎をカチ割って壁に激突させる。
目を回し気絶しているフリーモンデに土埃と静電気で一瞬、優依は制限時間の事を思い出して近寄ると転がっていたステッキをヘシ折ると左右に放り投げる。
あっさりした巻く引きに、やる背なさと今だ燻る感情を感じながら気が弛みそうになっていると、そこに村人や忍者達が近寄って来て殺気立つも杞憂に終わる。
彼等の誰も彼もが笑顔で諸手を上げて喜んで嬉し涙を流している程だったからだ。
「ユウイ様!!
一時的ですが我々は隷属魔法から解放されております。
これでプラザの回復に縛りなく仲間達が行えます。」
「あぁ。
プラザは無事か?」
プラザの元に優依と向かいながら村長は村人達に指示を出していく。
村の入り口近くに今は使われていない小屋が有り夜が開けるまで隔離し、口や手等を塞いだ上で外から監視して昼には近隣の町から衛兵に受け渡す予定らしく、既に町に何人かが向かっている。
そしてプラザは村長宅より設備の整ったフリーモンデの洋館に移されていて回復魔法に覚えのある者達が集まりプラザを治療しているので優依達は坂を上って洋館の庭に入った時だった、フリーモンデを収監した小屋が爆発してキノコ雲が立ち込める。
小屋の中に有った栓に折れたステッキの水晶を暴発させたフリーモンデは納屋に仕舞われていた火薬も威力を助けて大爆発となり皮膚や身体、衣服を燃え焦がしながら出てくる。
たどたどしく歩き怨嗟を吐きながらフリーモンデは水晶を飲み込むと火炎を放って宙に浮いて優依を見つけると家屋を吹き飛ばす勢いで優依の元へと空中移動を開始する。
もう少しで洋館に辿り付く所の優依達を捉えた場所に降り立とうとして左顔を強い衝撃で打たれ地面に激突する。
磁力を操り宙に電気のサークルの足場を作っていた優依は素早く土に足を着けるとフラ付きながら強化薬の限界を感じて焦る。
「貴方の真似をしてみましたよ!
‥‥‥コレで貴様を今度こそ殺してやるーーーーー!!」
起き上がったフリーモンデは火炎を揺らめかせながら炎弾を連続で放ちながら奇声を発する。
その全てを掴んで時に身体で受け止めて、コレ以上の村への被害を抑えようとして優依は被弾して地に倒れる。
「ユウイっ!
これを使えーーーー!!」
屋根の上にいるムサヴはフリーモンデの後方からアーチを描きながら優依にキャッチさせる。
手の平に有ったのは粉の入った小袋だった。
「んっ?」
「それはフリーモンデを隔離した小屋に使われずに仕舞われていた火薬と同じ物の、一つだ!」
投げ渡された火薬は小袋に穴が開いていて中身が漏れていた。
フリーモンデや土にその後が優依に一直線の元へと作られ、それに電流を流すと発火して更にフリーモンデの纏う炎とで威力を増大させて爆発と爆風を巻き起こす。
「やったのか?」
「まだだ。」
「何っ!
ではどうする気だ?」
優依の元へと降りて来たムサヴや他の同じ班のメンバー達は優依の言葉に戦闘態勢をフリーモンデに向ける。
その言葉を掛けた張本人は肩幅まで両足を広げてからムサヴに耳打ちするとプラズマを周囲に纏わせながら素早くフリーモンデへと走って殴るがフリーモンデも炎を拳から肩に発動させて殴り合いになって村や奴隷から逸らさせ優依に攻撃を集中させた。
◇◇◇◇◇
獣人の耳は敏感だ。
それを知らず、そしてそれ処ではない優依にムサヴは身を震わせるも、フリーモンデと優依の自身の付いて行けない戦闘を眺めながら彼の真意に頭を悩ませていた。
[俺が合図したら此処にいる村の全員で俺ごとフリーモンデに雷属性の魔法を一斉に射ってくれ。
この一撃でアイツを倒す!]
『どういうつもりだ?
ユウイが雷属性なのはコレまでの戦いで知っているが、いくらお前でも只では済まないぞ。』
姿勢を下げて敵の視界から急に消えて外から飛び蹴りと踵落としでフリーモンデの態勢を崩してから後ろに回り羽交い締めにすると声を上げる。
「お前ら俺を魔法で撃てぇぇぇぇぇえええ!!!」
元来、獣人は魔法を得意としない。
しかし颯流弩獣族は魔力との緩和性が高く魔法の扱いが出来る珍しい獣人だった。
それが仇となりフリーモンデに狙われたという経緯がある程に珍しい種族と言える。
されど雷属性のみに限定すれば獣人を関係なしに人数は少なかった。
総数人は住人、部下の奴隷達の全員を合わせても11人。
四方から屋根の上等の場所から優依達に放たれた雷属性は爆発も爆風も一切起こらずフリーモンデを地面に倒せ伏させた。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!
変電・ボルトッ!」
雷属性を避雷針の様に吸収し身体を伝って雷撃として変換した結果だった。
これは村人達の全員に配慮した作戦でもあった、優依を巻き込んだ攻撃ならば彼等も隷属の違反の炎に晒される事なく済むはずだと咄嗟に優依が考えた一か八かの賭けでもあった。
尻餅を着けて荒い息で上下させていると驚きを通り過ぎて呆気に取られたムサヴ達が駆けつける。
優依の持っていた鉄パイプを拾ったようで手渡されてムサヴの仲間の1人に肩を借りながら起き上がっていると自我を宿した瞳で這いつくばっているフリーモンデが優依に向かって来ようとしていた。
「‥‥マジかよ。
悪者程、諦めが悪いな。」
その言葉にウムとムサヴ達は無言の信頼を見せると優依は蹌踉けそうになりながらフリーモンデを見下ろすと、一種の哀れみを感じながら電気を終息させる。
「た、助けて、くれ。」
「あぁ?
‥‥本音で言ってんのか。」
立ち上がれずも再度、優依を隷属させようと手から魔法陣を発動させ魔力の鞭を伸ばすも鉄パイプで軽々跳ね返されて逆にフリーモンデ自身に直撃する。
奴隷契約を無理矢理にさせ隷属状態になる違法な魔法は、勢いのままフリーモンデに巻き付いてゆく。
身動き出来ずにいる所に優依は距離を詰めると動けず動揺しているフリーモンデを余所に、一本背負いで投げ飛ばす。
「これで終いだ、三下悪党!」
「うぎゃああぁぁあぁぁあああ~~~~~~!!!」
大きな土煙とを響かせてフリーモンデが権力の象徴のように夜でも煌々と輝かせてていた豪華絢爛な馬車と荷場所を凹ませ雪崩込む。
積んでいた宝石や硬貨、私物の高価な品物が弾けたように舞う、それはまるで長年の理不尽が壊され彼の富が飛び散ってフリーモンデから離れてゆくようで真の解放を告げているのを意味しているようだった。
「やったよコアタ、貴方、見えているか?
ついに私達は奴の非道な支配から、うぅ。
抜け出せたよ…………。
ごめ、ん……………ありがとう。」
ムサヴは息子と夫の二人に抱き締められ、そして安らかに天に昇る幻視を見た。
「見ていてくれたんだろうな、幸せ者だなムサヴ☆彡
‥‥‥あの時は助けてやれなくて悪かった。」
「キアチ、お前!?
‥いいや私達は寧ろ縛ってしまっていたのかも知れない。
違うな‥‥‥ありがとう見守っていてくれて。
お前達、今度こそ安らかに眠ってくれ………。」
「あぁ、生き残った者の。
生き残ってしまった者に出来るのは…………願うだけだ……。」
宝石やコインが夜空に月の光を反射してキラキラと星が降り注いでいるようでフリーモンデとの決別を着飾って祝福しているかのようで気分は晴れやかだ。
キアチの言葉は、とても小さく朝露のように誰に聞こえるでも聞かせるでも無く溶けるように消えてゆく。
もうすぐ夜が開ける。
朝陽が山の頂上から顔を見せて空にオレンジと黒のコントラストを作る。
辺りは少しづつ温かくなってゆく。
小鳥が飛び、草木が揺れる。
新鮮で清みきった空気と風が運ばれてくる。
新しい朝と新しい日が始まろうとしている。
ムサヴ達、この隠れ里の全員は毎日みていた同じ光景が全く違う景色と意味合いに感じられていた。
それを成したのは異界より現れた目付きと態度の悪い1人の少年だった。
※レッドスライムの赤ちゃんは宴に参加していて1人モリモリモリ、ご飯を食べていました。
その後、優依のフードで就寝。
戦闘時も終始爆睡していた所、プラザの窮地の匂いを感じて叩き起きました。
プラザの救命に尽力する活躍を見せる。