#17ノ巻
1回目
ソネアトーン・ネルカン交易都市を目指していた優依・ラウザ達はブルーナイツが護衛をしていたマーメイドテイル商会達に出会った。
彼らを助けた事と目的地が同じだった事から馬車に乗っていたが、あと少しの距離で落石で道が途絶えてしまっていた。
困っていると人語を話すリッチが現れ襲い掛かって来るだった。
「人語を喋るリッチは過去にも数度目撃はされている。
だが意味を理解し、しっかりと返答が有るなどっ!
生前の人格が魂に強く残っている?
いや、しかし。
それだけでは。」
アルマリカは考え込み黙ってしまう。
「趣味悪いわよ、アンデッドなんてッ!」
ラウザは本心からリッチをテイムしようとしている優依に拒絶を見せていた。
それが叶ったのかテイムは失敗してしまう。
「あれ?
できないか。」
リッチは魔法のパスを破壊して前蹴りすると躱すために優依はリッチから距離を取る。
「レッドの時は特殊すぎたのよ!!
出会い目頭に懐くなんて有り得ないモノ!
普通はリンクに信頼関係なんかを作らなきゃテイム出来ないんだから!」
「そん時っ、うわぁオラぁ!?
つぅーー、お前居なかったろが。
あぁ駄目だ、魔法と近接戦がランダムに切り替わって戦い辛い!」
{{機械じゃないんだ。
当たり前だろう?
ん?
次はどうする?
悪いが、お前達だけに時間は割けない}}
「ユウイさんラウザさん。
私に考えがあります。
私達ブルーナイツが私達独自の陣形でヤツの体勢を崩します。
考えて動いているのなら勝機はあります。
お前等ぁーーいくぞ!
薔薇乙女の陣から百合乙女の陣!
開始!!」
「分かったわ!
私の巨大聖魔法を、その間に完成させてブッ衝突てやるわ!」
「あぁ、隙を突いて黙らせてからテイムだ。」
「まだ諦めて無かったの!?」
ラウザの叫びはブルーナイツのギルドマスター【千見策の戦乙女】の異名を持つ若き女騎士アルマリカの号令と掛け声で掻き消されてしまうのだった。
「そこだ、私が前に出る!
怯まず棘の風勢ッ、変えぇ!
剣掲げ、広がれぇ構え!
続けーーーーー!!
付与魔法忘れるなぁ!」
ブルーナイツの総勢10名が全方位からの風属性が織り成す疾風の素早い刺突攻撃はリッチが背や脇腹、腹からと腕を生やしたために全てを受け止められていた。
スピアや細剣を握られており振り|ほどこうにも異常な筋力に阻まれ1回転で回され投げ飛ばされてしまう。
刀身は握り潰され千切れていたり融かされていた。
13本の腕から地面に散撒かれ鉄の音が戦場に甲高く通る。
取手部分だけになってしまったブルーナイツ達、それはもう戦う事が不可能なのを意味していた。
しかしアルマリカだけが相棒を無事に死守していた。
アルマリカの左手を犠牲にして。
彼女の左腕は巨大な何かに踏み付けられたように潰れて腫れたようになって血を吹き出していた。
{{なんだよ。
面白そうだったから受けてやったがこの程度か。
ガッカリだ。
そろそろ時間だ。
我輩も用事があるのでね}}
言いながらリッチ改-華-は腕を元に戻すと巨大な雷の魔法弾をアルマリカ達に放とうとする。
「貴様ぁーーーー!?
こんな事で!
これしきのキズで戦場の乙女騎士は挫れ足り等はしないぞ!!!」
他のメンバーを庇うようにアルマリカは剣を前に突き出して魔力を練ろうとして痛みから右膝から崩れ倒れそうになる。
「やっぱ何処の世界も女は強いな。」
アルマリカを後ろから支えて、ゆっくり下ろす。
「ユウイさん?」
痛む足に呻きながら優依を見上げていると優依は立ち上がり言う。
「悪い、なんでも無い。
‥‥でもな?
十分、隙は作れたぞ。」
アルマリカの横を走り過ぎると優依は雷の球弾に飛び込んで行った。
「待て!
危険過ぎる!!
あのリッチは普通ではない!!
不確定要素がッ、私のスキルを破ったんだぞ!!」
{{チィっ!
愚かな、自ら自殺するマヌケが。
‥‥‥俺の邪魔をするなら悪いが犠牲も止む無しだ…………何ぃ!?}}
一瞬の衝撃音と衝撃波が波紋すると優依は雷の球を九州して弾け飛ばすと血を流し吐きながら現れて電気ショックの乗ったパンチを繰り出していた。
「よぉ!
誰がマヌケだって、スケルトン野郎?」
{{ぐはぁ!?
ぐおぉ!?
だあぁ!?
この俺を直接殴っただと!!
しかも折れている!?
魔力と魔獣の骨との混合金属で構成されているリッチをだと!?
不味い!!!}}
再生能力で折れた身体を元に戻すとリッチは不利と判断したのか魔法で飛ぶと逃げ出していた。
優依は磁力で宙や木に足場を作って追い掛けて行く。
そのためリッチは距離を引き剥がせず仕方無く牽制の魔法弾や魔法槍を放つも、そのどれもが避けられ弾かれてしまい焦りを加速させる。
{{クソっ何だコイツ!?
何なんだよ!!
魔力を感じ無い‥‥‥だと、魔法じゃないのか!?
まさか!?
どわぁ!!
ぐあぁぁぁぁぁぁあああ!!!}}
優依の電流付きの踵落としがクリーンヒットして木々を薙ぎ倒しながら不時着する。
{{身体に皹!?
普通割れるかよ…………!?}}
立ち上がり動揺でバランスを崩しながら迎撃しようとして、そこに微弱な電流を纏った眼光の鋭い優依が現れるとサッと左腕を横に振る。
「刃雷ッ!」
{{手刀かッ!
かっはぁ!?}}
するとドクロと胴体が分かれ頭が地面を転がる。
動けない頭とは裏腹に胴体は不安定ながらも動いていた。
スライムのレッドが放つ糸に巻かれると呆気なく倒れて動かなくなるのだった。
「ぴゅぴゅぷいぃ!!
ぷぷぷぷぷ~い!」
{{何者なんだよ。
お前!?}}
「素が出てるぞ、リッチなんとかの透けりるとん。」
{{あぁ………もう…降参だ。
そのビリビリは止めてくれ。
それとリッチ改-華-な、エルダーリッチだ。
魔法じゃない相手にコイツは分が悪い。
まさかとは思うが、お前って──}}
駆け付けたラウザやブルーナイツの面々を気にした様子も無くリッチは白状したのか全てを語り出した。
「コイツ?」
「ねぇ?
どう言うこと?」
「黙って聞いてろ」
「何よ、意地悪ねぇ!」
{{たくっ、こうなったら洗いざらい教えてやるよぉ!
そうコイツ、素体のエルダーリッチ、リッチは只の人形つっても元は本物のリッチだったんだがな。
なんだが、だ。
本体である俺は此処から近場に在る街に居て操作をしてんだよ!
さて、金に困ってるってのが世の常だよな?
依頼を出す、指名依頼だ!
指名依頼は高く付くぞ?
報酬ガッポガッポだ!
どうだ引き受ける気になってきたろ?}}
「胡散臭ぇ」
「理解が追い付きません」
「高報酬!?
‥‥‥何よ!
条件次第よ、続き言いなさい!
しっ、仕方無いからリッチなのにリッチなのに!
この巫女が聞いてあげるわよ!」
周りを見渡してラウザは照れたように誤魔化しを入れながら口を再度開いた。
{{なんで、このガキは偉そうなんだ。
まぁ時間も無いしな。
いいか?
よ~く聞けよ。ここからメガリポロンって言う街があるんだが、そこのペールカラーの亜麻色の花って店名の花屋に行け、なるべく早くだ。
そして誰にも見付からず、捕まらず逃がしてくれ、それだけで良い。
ヤバい自壊し始めた}}
「なっ、なによソレ!?
ならアンタがやればいいんじゃないの?」
「確かに、一理はありますね。
ですが何故──」
「そうよ、アルマリカさんの言う通りよ!」
「そこは察してくれよ、こうやって傀儡紛いの物で救出しようとした矢先にお前らに壊されて出鼻挫かれて出来なく成っちまったんだからさぁ!」
「へ~~。なら、お前本人は何処に居んの?」
{{メガリポロンだよ}}
「じゃあ、アンタがやりなさいよ!!!」
{{だ・か・ら・察してくれよ!
無理なんだよ?
分かる!}}
「腹立つわね!」
「っで、なんでなんだよ?」
{{クールだねぇ♪
だって俺、牢獄に繋がられて近日中には公開処刑されるし!}}
「フッ、罪状は?」
{{殺人!}}
「乗った」
「なんでよ!?」
{{全く計画が全部パァ~!
台無しだよ。
ちょびっと脅せばカマキリの子みたいに去っていくと思ったのによ!
果敢に向かって来るんだもな、ホンっと、お前っ──な─だ───……………。}}
寸劇のような奇妙な遣り取りを最後に愚痴を溢して塵に成ってリッチは消えてしまう。
これが優依の生涯の友、心から信頼する仲間、親友との出会いだった。
リッチが破壊した大岩から別れた岩に踏まれ風に靡いている白く細長い布が有った。
それを見つけたレッドは優依に知らせるために頭から飛び降りるとポンポンと跳ねてゆく。
◇◇◇◇◇
時は遡ってンの村でウィザードの3人と謎の2人組の話に戻る。
「ここ何よ?」
「さっきまで我々はチンケな獣の村にいたはずが何故に此処は何処なのか?」
「空間転送、闇魔法の類いか?
しかし魔力の動きを感じなかっダボォ?
何者ダボォンよ」
「悪党に教えてやる義理は持ってないな。」
「儂まで、一緒に転移しをってに。」
「待てよ?
さては~ハハン!
お前等、例の光の柱と無関係じゃないな?
図星だろう」
「いやいや、待ちなさいよ。
闇魔法は解明されていない謎が多い。
反転や吸収で光に変換したのかも知れないよぉ~
違う可能性も有り得るぞ!
まずはやはり捕らえるのが先決!!」
「して、此処は何処だ?」
「地元じゃあ簡単迷路の森と呼ばれてる子供でも抜けられるはずの森の最奥だ。
まだ発見されてない深部だが、弱いモンスターしか出てこないダンジョンだ。」
「「話を聞けぇーーーーーーーーー!!」」
「はいはい、聞いてる聞いてる。」
「簡単の森か、ならば此処から近いのではないか?」
「あぁ~まぁそりゃそうなるな!」
「‥‥‥では行ってみるかの?」
「止せよ。
その気にさせる気か‥‥‥‥‥変わっちまうだろが」
「それも面白いと思うがの~
1度は考えた事が有ろう?」
「アホ言うな、そんな事したら会えなく成っちまうだろがよぉ」
「1度ならず二度までも!!
女性が居ようと我らウィザードを虚仮にして只で済むと思うなよ」
「バーさん、女性だってさ。
良かったな!」
「貴様ケンカ売っとんのか!!」
「うるせぇ~な、耳元で叫ぶなよ。
あー悪い悪い、聞いてるよ~ウィザードさーん!
分かってるよ、わざと無視してたんだぜ、お嬢さん!
さぁ、ここなら幾ら暴れても問題なしだ。
来いよ悪党共、俺達はココにいるぜ!」
両手を広げて怪しげに笑う男のフードからは黒髪が覗かせていた。
そして時は戻り現在の簡単の迷宮森、奥部では謎の2人はと言うと。
「やばいな。
これは完全に迷子だ…………。」
「なに?
あれから数日、先頭を行くから出口に近づいていると言っとたではないか!?」
「あーあーうるさい。
仕方ないだろが!
何年前の話だと思ってんだ!
イチイチ、攻略したダンジョンの道順なんて覚えてるかよ~」
「逆ギレしおってからに!
しかし、そうなると目と花の先に居ると思われるだけにクチ惜しいな。」
「はぁ?
あっ、あぁそうか。
俺の知ってるより早くヴ‥‥ンの村を出たってんなら、あの街に到着してるはずだしな。」
「しようのない、合流は遅れるかも知れんな。」
「そんな目で見んなよ。
悪かった、悪かったよ、急いで脱出しますよ」
フードの2人組とは別にウィザードの3人衆も同じく森の中で遭難しかけていた。
「一体全体ここは何処なのーーーーーーー!?」
「あいつら覚えてろよーーーーーーー!!!」
木や草むらが揺れて震える3人達に拍車が掛かる。
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!
助けてくれ~~~~~~~~」