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#13ノ巻

1回目

 夜の山にツラヅラ・ホーンベアーの首の無い血だらけの死体が横たわっている。

そんな近くに音もなく着地したのは猟師の男・ガラモ。

白い息を洩らしグワっと顔を微動だにせず確認すると指を鳴らして人避けの魔法を発動させる。

すると熊の死体は黒い(もや)に包まれ次の瞬間、靄が晴れて消えると姿が人の遺体(すがた)になっていた。

もちろん首から上は無く血の海の上に仰向けに倒れていた。

同じようにガラモの上着に返り血が(あらわ)れ、その上着を被せるように脱ぎ捨てるとガラモが装備している小袋から取り出された熊の頭だったはずの物も強張って驚いたような表情の男の顔に(もど)っていた。


「‥‥‥‥やれやれだな。

獣人よりも早く気付くとは、クチこそ悪かったが良い感覚を持ってた。」

 両手を叩いて汚れを払うとガラモは死体処理を始めるために袖を捲った。


 ことの真相は数時間まえに戻る。

ガラモは山の中を見回りしていた。

辺りは暗くなり始めて夕陽も闇色に染まる時間帯。

ガラモは所用(しょよう)で山を()り空けてしまう間、別の人物に管理を任せていたのだが帰ってきた事で、その人物は本日までだったのだが本人の頼みも有って最後の、一回りの見回りをしたら帰る段取りとなった。


「ここに居たかペリモ、悪かったな。

こんなキツい仕事を1ヶ月以上も任せきりで」

 ガラモの声にペリモと呼ばれたガラモより少し年下の見た目の中年男性は屈んで何かを探していたを中断するとサッとポケットに仕舞い立ち上がる。


「なんて事はねーですさ。

それなりに楽しめましたぜ。

自然の清浄つうんですか?

なんて言や~い~か?

そこんとこ学がねぇ~んで言葉足らずだけんですけど、獣の声と木々だけの生活に森の静けさ。

そこに自分が仲間になった感覚ってのかね?

これが悪か~ねっつうのが知れて良かったぞ。」


「‥‥‥‥そうか。

なら餞別の代わりにだ。

この山で取れる(さち)で作る晩餐でも食ってけよ。」


「おー何から何まで悪いですねぇ~旦那っ!」


「‥‥‥‥‥‥あぁ、そうだな。」

 前を歩きガラモが持っていた食材の入った籠を運んでいるペリモをガラモは見詰めていた。


「手伝いますよ、手伝わせて下さいよって!!」


──数分後──


「コイツを最後に、まぶせば完成だ。」


「おー見た目から違いますね~

田舎出の独り身の自分には盛り付けまでは思い付きませんでしたや」


「そうか?

最後の、ひと手間を惜しまない。

そして何事も見た目に(こだわ)る、それが俺の三大流儀なんだ。

それがコト食事になると見て楽しみながら食すに変わる。

一見無駄に見えても人生を豊かにするだ。」


「へー流石は旦那だ!

さぁ~あ食べましょう!!

先に食ってくだせい。

くーウマイ!!

‥‥‥‥‥‥ウマイっすな?」


「あぁ、ココに来るまえに狩った魔獣の熊が良い味を出してる。

‥‥‥ん?

どうしたペリモ、怖い顔して。」


「いっ、いや何も!!

そ、それよりっ、これも食べてくだせーや自信作でして、あぁ流儀の三大でしたっけ?

も1つのは何ですかいねぇ~教えて、ぐっ!

ふも!?

うがっ!?

うぅうっ、だぁッ!?

な・ん・で・だ…………?」


「ペリモ・デワガ、お前は詰めが甘いんだよ。

俺の皿に、この辺り(やま)でしか取れない毒茸を使ったな。

‥‥しかしだ、俺のだけに潜ませ自分のには入れなかった。

その不振な行動と決行しようとする表情でバレバレだ。」


「はぁ?

訳の分からな、うっうっ!?」

 倒れて必死にガラモの足元へと這いながら頭の回らない苦痛の中、疑問を口に出さずには、いられなかった。

しかし無情にも体調は悪化を辿り異変として表れるように進行は早かった。


「助け、助けてくれーーーー!!

旦那ッ!

シャリーの旦那!?

シャぁーーーーリぃーーーー!!!

‥‥ごっ!?」


「プロの暗殺とした時、先の状況なら何気ない動作と料理中の他愛ない会話の中で忍ばせ、そして標的と自分の2つの皿に入れるんだ。

相手に悟らせるなんて言語道断・落第、ましてや即効性なんてのは論外、やり直しも無しの退場だ。」


「ワにおぉすたぁ」

 呂律は正常に作動せず吐き気等の多数の症状が襲う。


「じゃあ、どうやって俺は無事なのか?

答えは簡単!

見せたろ、最後に振り掛けた粉末だ。

アレには、お前の入れた【(にせ)(モモリ)テング(だけ)】の毒成分の中和作用が含まれてる。

まぁ、だからと言って完全に効き目が有る訳でもない。

だから俺達は日頃から毒への耐性をつけるのを忘れないんだ。」


『まぁそうコトは簡単じゃね~が。

個々の1人1人の体質の違いに因る効き目の変化に調節・量(なん)かと来るモンだ。

果てはその日の体調や異常と始まる。諸々加味すれば考えることは五万とある生易しくもなければ一朝一夕でやれんモンでも無いがな。

‥‥‥‥喋り過ぎたな。』


「はにもんた?

はンなんがーーーー!!」

 ペリモに跨がり腰を落とし動けないように乗ると冷たい目線で見下ろす。


「ん?

ネコだよ?

草のな、分かってんだろ。

自分が殺される理由くらい。

金に(てー)つけて逃げてたんだ。

逃走先の都心から離れた田舎で。

それも若い頃、世話になった知り合いの兄貴分と偶然再会する?

んで事情も聞かずに家を貸してくれるだぁ?

なんて~だ。

そんな、お前に全部都合の良い事が起こるかよ。」

 ガラモが顔に触れて手を下ろすと黒い靄が手の動きと同じように移動してガラモの顔は優依達の見た時の見た目に変化していた。


「ふぉ?

がぁれだ!?

どまえは!」


「だから言ってんだろが?

はぁ~晩餐ついでに最後の1つを教えてやる。

変装には成り着り溶け込み時間を費やし信用させ尚、自分の感情さえ(いつわ)(ころ)す。

そして必ず自分の手で始末する!

それが俺の殺人(しごと)の流儀だ。」

 懐から取り出したリコーダーに近く日本で言うトコロの尺八に、よく似ている楽器を二度程振ると、その先端からジャキリとトゲが露出する。

それをガラモはペリモ、目掛けて振り下ろし裂いた。

鮮血が飛び散り、しっかり夜になっていた辺りの小鳥達が羽ばたき逃げるように(やま)(ざわ)つかせた。


 全ての痕跡の後始末が終わったガラモは全身に靄を発生させて猟師の姿から黒ずくめの動き安い格好へと変わる。

結界を昼頃には自然と解かれるように設定すると自身の魔力を探知出来ないように心を落ち着かせると、その場から颯爽と消えるように走り去ってゆく。


「次、会ったら引き抜き(スカウト)してみるかね」

 ガラモは自分での気付かない、うちに顔を綻ばせていた。

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