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#12ノ巻

本日はなろう全体のメンテナンスが行われるので1回のみの更新になります。

 ラウザの故郷(ふるさと)から見送られ、ラウザが友人達との別れで涙しては惜しみを繰り返して予定より遅れ気味になり優依が呆れと苛立ちを覚え始めていた頃、警護や後処理のために滞在している憲兵隊の兵士達の隊長ドイから、ある申し出を受ける。


「フンス。

我々も街での混乱騒動(いざこざ)で忙しくてね。

ここに割り当てられた数も事件の大きさから考えても少ないんだ。

だから大勢貸す事は出来ないが良ければ1人までには成るが街までの案内を付ける位は出来るよ。

ここの所、色々と物騒で危ないからね。」

 優依は出会ったばかりのドイが親切にしてくれる理由が分からず、しかし未知の世界で地理に詳しくも無かった事からドイに了承の返事をしようとしていた。

そこにタイミングを見計らったように自信満々のニヤリ顔の笑顔と胸を張ったラウザが家来を連れるように友人を引き連れて現れた。


「ありがたい提案では有るけれどね!

大丈夫よ!

(なに)せ、このラウザ様がいるもの♪

なにより優依には私が付いているんだから!!

足手まといはこれ以上要らないわ!」


「なんだ、そりゃ?」


「ふふっフンス、そうかい?

なら要らない、お節介だったね?」


「えぇ、気遣いありがとね!」


「お前、なに勝手に決めてんだよ。」


「はぁ何よ?

その言い方ッ別にいいじゃない。

まぁ年長者の余裕を見せてあげるわ!

言う事を聞きなさい。

この辺のことは詳しいんだからッ!

任せときなさいって!!」

 そうして見送りの列に戻ったドイや村長等に選別を貰いながらアーチの出入り口から疑いと不安を新たに荷物に追加しては優依は村を出る事になるのだった。

それから、一様は何事も無く無事に人里(近隣)の貿易都市を目指していた優依とラウザ達は夜になり山で一晩を過ごす事になる。

しかし其所(そこ)に怪しげな男性が出現したことで事態は思わぬ方向へと転がりだす。

そこに来て竹神楽(たけかぐら) 優依(ゆうい)は、一瞬で目眩・頭痛・高熱・腹痛・全身の硬直・大量の汗・息が正常に行えない症状に、一気に襲われ立っていられ無くなり草花の床に倒れてしまう。

優依の事態を察した男は瞬きの内に消えたと錯覚する程の速さで優依に近くと腹部に、一撃を当てていた。

所謂ところの腹パンに近い攻撃方法と衝撃波に魔力とを同時(とも)に対象に、ぶつけて瞬く間に気絶させていた。


「ちょっと何すんのよ、アンタ誰なのよ!!!」


「よく見な、お嬢ちゃん。」

 優依は腹への一撃で食べた物を吐き出していた。

強烈な見た目に反して優依は吹き飛んでおらず、強いダメージを受けた様子も無い。

その場で息を荒げる事なく眠っているだけのようだった。


「これは本当に【テッポウ(だけ)】か?

それなりに山に詳しいようだが爪が甘い。」

 優依達が作った焚き火の回りに刺していた残りの串焼きを摘まむとラウザに見せる。


「これは、よ~く似た【(だまし)(モモリ)テング茸】つまり(どく)(きのこ)だ。

裏のカサから見れば一目瞭然なんだが薄いピンクや紫色の斑模様があるだろう?

気をつけな。」


「なに言ってんのよ!?

これは(かみなり)()(だけ)よ。

変なこと言って惑わす気なら()()からないわよ!!

なっ、舐めないでよねッッ!」


「気が強く、安易に相手を信用せず鵜呑みにしないってのは高得点だが、だが今回の状況下では失点、マイナスの行為だ。

早急な対応と処置が大事だからだ!

まぁだが教えておいてやろう、嬢ちゃんの言う言い方も確かに昔はされていた。

物知りだ、オマケの追加点の対象だ。

でもな?

見た目も瓜二つ。

味も似てるってのは知らなかったようだな。

まさか嬢ちゃんも食べた~なんて言わないでくれよ?」


「わたっ、私は準備中だったし食べてなかったけど。」


「それを聞いて、一安心だ。

安心しろ、吐き出させたし応急処置と治療は今の今で済んだ。

‥‥‥‥っでだ。

何処でソイツを手に入れた?」


「食費の節約にと思って、さっき森の中、歩いてた時に拾ったのよ!

悪い?」

 ラウザの指差した方向を鋭く睨むと男は何かに納得したのか視線をラウザに戻す。


「‥‥‥‥‥‥‥‥そうか、これに懲りたら気を付けるこったな。

おそらく、この近くの生まれなんだろう?

だが山と言うのは1つ越えると、その先は別物(べつもん)に変わっちまう。

そこんトコっ!

絶対に忘れるんじゃないぞ用心するようにな。」


「たっ、助けてくれたのは感謝するけど、アンタがアンタが!!

何者で何をしてたか答えてないわ!

ひとッ、人殺し、してたとか言うんじゃないわよね!」


「‥‥‥‥詰め方が素人だな。

丸で、なっちゃいない。

例えば俺が人殺しの殺人鬼で夜の山に死体を隠しに来てたんなら、この応答は不味い。

下手をしなくても返り討ちにされる未来しかないだろが?」

 眼光と表情を強ばらせて言う男の言葉でラウザは体を震わせる。

逃げようにも優依は倒されラウザ1人ではどうしようも無いのが見て取れる、その事を男の言葉・視線で理解してしまって、しまった後だったからだ。

意地で覚悟を胸に優依を庇うように前に出ようとして、それでも1歩が踏めず気持ちと反対に身体が動けないで居ると優依のフードからレッド・スライムのレッドが飛び出てラウザを守るように威嚇をしていた。


「ピャー!

ピャーー!!」


「‥‥‥ふん、悪かった。

(いた)が過ぎた。

嬢ちゃん達には危害を加えないから安心しな。

勇敢なナイトが2人も連れているとは幸運だねぇ。

まぁ若干その1人は、お姫様の不注意でダウン中だが、咄嗟に守ろうとしたのは肝が出来てる証拠だ。

ふぅ、だが嬢ちゃん?

どうなるかを考えて喋るこったな。

見ての通り俺は猟師だ。

ついでに言うと山伏(のぶし)みたいな生活をしてる。

野盗とは違うぞ、むしろ奴らの天敵ってが花丸、言い得て妙かな。

簡単に言やぁ~この辺り、一帯の地主から頼まれて定期的に見回りと野生動物・魔獣から野盗なんかの駆除の代わりに山で暮らしてんだ。

納得できた~かい?」


「そ、そうなの?

‥‥‥‥‥でも血は?

そうよ血の匂いがアンタからはするわよ!!」


「ハハハ。

あ~ソイツはコイツのだな。」

 男は後ろの袋から熊に鹿のような角が生えた顔の首から上が伐られた姿を見せた。


「丁度さっき狩った所なんだよ。

ツラヅラ・ホーンベアーの若いオスの頭だ。

だから、そんな危険地帯で野宿していて、火を炊いてたら注意もしたくなるだろ?」


「そっ、そうね。

疑って悪かったわ、ごめんなさい。」


「そう言うこった。

いいって事よ。

今後はちいっとは周りや言葉・後先考えて喋る事に気を配るのを忘れないようにな。

世間知らずは命取りってね!」


「あっ、えっと、ありがとうございました。」


「ああ、そうだ。

小僧が起きたらコレを渡してくれ。

ナニ、変な物じゃない。只の連絡の追加チップ用のカードだ。

‥‥‥そういや名前言って無かったか。

俺はガラモだ、宜しく伝えてくれ。

それじゃあ俺も仕事に戻るかね。

今夜は俺が居たが明日はそうじゃない。

早めにこの山から離れるようにな、じゃあな。」

 そう言うとガラモは木の枝に飛び乗り別の枝にと跳んで元の方向へと消えていった。


「え?あ、えっと、ええ。

じゃあホントありがとう。」

 呆気にとられながらラウザは別れの挨拶をしていた。

あっという間の出来事は、あっという間に終わった。


「なにコレ?

初めて見るけど……追加の………カード??

まっ!

後でユウイに渡せば、いっか!!」

 裏返したりしてみたが手の平程の大きさで薄く鉄とも違う素材にラウザは興味を覚えたが夜遅くなっていた事もあってレッドにお礼を言ってから布団を取り出すと優依を移動させたりと忙しく動いてから2人と1匹は仲良く3人で眠り朝を迎えるのだった。


◇◇◇◇◇

 早朝、優依はレッドとラウザと家族のように川の字になって寝ている事を知る。

気恥ずかしさを感じるより先に少しの頭痛の残りと不思議と体調がスッキリしている事、そして以前よりも(なに)か身に覚えのない、特異能が覚醒した時のような、それでいて違う何かを感じて、川の字の恥ずかしさを忘れてしまっていた。

そして、その不調とは完全に異なる変で変で無いソレを無理矢理に優依の感覚で説明するならば、ソレは唐辛子や生姜にワサビ、そしてエナジー飲料らを、一気に大量に摂取して身体を熱く元気にする力が心臓とは違う体のド真ん中に常に居座っていられているような感覚だった。

その不思議で不可思議な違和感の正体が小さく身体を揺さぶるように燻っている(なん)ともザラザラとして慣れない感覚に晒されている異物感。

されど、ソレは小さ過ぎて忘れてしまいそうになる位に消え入りそうで弱々しい。

もう1つの命の()、エネルギーの塊のように何となく感じられて誰かに説明されていないにも関わらず戸惑いの顔を抱かずには要られず、しかしそこには優依の思案する表情に表れていなかった。


 朝の陽が辺りを照らし明るくしては暖かくなって来た頃、ラウザとレッドも目を覚ま出す。


「ってな事が有った訳よ!!

分かった?」


「お前が偉そうに言うな。

俺は言わば被害者で犯人はお前なんだぞ!

ったく。」


「ぷー!!

分かってるわよ!

だから反省したんだってばーー!

‥‥‥‥‥‥でも、これからは気を付けるわよ。

フンっだ。」


『ん?

なんか忘れてるような気もするけど。

~まぁ、いっか!

そのうち思い出すでしょ。』


「さぁ、朝ごはん食べたら行くわよ!!」


「今度は注意してくれよ。

俺はこの世界の食べ物なんて知らないんだからよ~」


「うるさい!

しつこい!!」

 念のために昨夜作っていた鍋はキノコ出汁を取っていた事もあって先祖の巫女(ラウザの家系)山の土地神(グリーン)豊穣の女神(フレイム)に謝罪と断りの祈りを捧げてから捨てる事にしてラウザは(あらかじ)め村長達が用意してくれていた食材を使って朝食を作ってから再度、貿易都市ソネアトーンを目指して出発して、一行は進む。


「虫避けは維持で結界は解除!

さぁ位置は知ってるだからっ、道を通ってけば、いずれ到着するわよ。

だから問題ないわ。

レッツゴー!!」


『‥‥‥‥あれ?

それにしても結界張ってたのに、あのガラモって、おじさん。

どうやって入って来たのかしら?』


先頭(まえ)が急に立止()まんなよ。

置いてくぞ?

‥‥‥‥‥ほら来いよ。」

 なんと無しに差し出された少し上の傾斜からの優依の手と(すがた)にラウザは見上げながら嬉しい気持ちを誤魔化(さとらせ)ないように強く取って引っ張られる事に拒絶は、しなかった。


「るっさいわね!

フンッだ♪」

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