#11ノ巻
同日、二回目
ラウザの故郷であるンの村こと獣人の颯流弩獣族の里を出発したはずの竹神楽 優依たちは入り口付近にまだ残っていた。
「ちょっと早いってば待ちなさいよ!
これから、一緒に行くんだから歩幅を合わせてよね!!
お姉さんの言う事は、ちゃんと聞くのよ分かった?」
仰け反り倒れてしまう勢いで胸を張ったラウザは自慢気にビシッと指を差して言う。
「はぁ~、あぁ分かった。
‥‥‥‥‥へ~不思議アイテムだな、ゲームみたいって奴だ。」
ラウザから貰ったバックの中身を出し入れしては感心して優依はそこで不意に自分のベルトの後ろに触れて思う。
『‥‥ってこの言葉、このバッグ渡された時も言ったような気がするな。
我ながら進歩して無いのか、それとも語彙が少ないのか、いや多分そのどっちもか。』
「なに?
どしたの?
あっ、そう!
ホントに何も知らないのね!
赤ちゃんバブバブ~♪」
「それ止めろっつってんだろ」
「じゃあ♪物知りで博識な、このラウザお姉様が教えて上げるわ!」
「まず俺の話、聞けよ」
「はいはい、まず魔法には属性ってのが有って、火・水・草・土・風・雷・光・闇・無・竜の基本10系体と呼ばれてるんだけど、今回は闇属性が関係してくるの。
で私達が持ってる、このバッグに附与されてるホワイト・ボックスは闇属性と無属性も元に錬金術で作られてるって話よ!
それで空間を曲げて?
歪めて時空魔法で荷物がいっぱい入るようになったんだって!!
まぁ、詳しくは私も知らないんだけどね。」
「ほ~ん。
って何だそりゃ!?
よく分からんのが分かったよ。」
「そもそも深く知るには、一般民の私達には土台無理って話、………ちょっと聞いてないでしょ?
あっ‥‥ちょっと待ちなさいよ!!」
歩き出した優依に小走りで追い付くと頬を膨らませて不満を表す。
「なんだよ。
あ~そういや、コレ。
結局何だったんだよ?」
手の平に握りっぱなしだった村長に貰った指輪を見せる。
「ん~なになに?
え~と魔従契約輪飾ね!
えっとね、確か~?」
2人は立ち止まって話込み始める。
「あっ!?
そうだ、テイマーの人が従魔…………魔法動物・生物とか魔獣・モンスターを飼い慣らすのに便利アイテム!!
待って!
こんな事も有ろうかと!
何処やったかな?」
自身の肩に掛けているバッグから天に翳すように出して見せるのは分厚い1冊の本。
様子を文句も言わずに伺っていた優依は呆れ気味だ。
「備え在れば憂い無しって正に、この事よね!
えーーーーーと。
なになに、あった!!このページの、この行ね。
こっほん。
まず市販のテイム用のテイマー・リング/エンゲージ・リング、又はその性能を持つネックレスやブレスレット・アンクレット等のアクセサリーでも代用可能………これ関係ない所、読んでた。
戻すわね。
──に、じゃない。
戻って──テイマーリングに使用者の魔力を流して使用者を決めて専用にします。
すると第一段階は完了。
次に契約したい魔力を有する生命体、(しかし人族などの人種は出来ません)
とリングを介して使役・捕獲してください。
これで第二段階完了です。
リングの中にある魔法空間世界で契約生物が不自由なく暮らせます。
許容契約数までの生物が快適に広々と遊べ寛げる森などがあります。
食べ物や水は無いので外に出してあげて別に与えましょう。
育成次第で貴方のペットや召し使いにもなるでしょう。
さぁこれで君も従魔士だ!っですって。」
「1番大事な所が抜けてんじゃね~か!!」
静かに聞いていた優依とレッドスライムが苛立ちを隠さず突っ込みを入れていた。
「うーんとねっ、たぶん色々やり方はあるんだろうけど。
私が知ってるのはリングに魔力を込めて使役したい相手に魔力のパスを繋げて相手が了承?
オーケーだったら、そのままリングの中に入るって感じなんじゃない?」
「なんだそりゃ?
まぁやってみるか。」
「そうね。まずは実践が1番よね、やっぱり!」
「言ってろ。
まず‥‥‥‥魔力を流す。
どうやんだよ。」
「どうやるって普通にすればいいでしょ?」
「だから、その魔力が分かんねぇ~だってば!」
「‥‥‥あッ!?
そっか、そうよね!
ちょっと待って。」
言うとラウザは優依に触れて優依に魔力を、ゆっくりと少しだけ与えてみる。
「今まで治療なんかで光・聖魔法受けてるから体は拒絶してないし全く持ってないはずもないし、これで大丈夫なはずだけど。」
「そうか?」
「うん、多分ね。
心の底?
魔力を司る部分に弱く魔力を当ててみたから、多分イケるはず!」
「多分とか不安しか無いぞ。」
「大丈夫つってんでしょ。
ひとまず、やってみなさいよ!」
「おっ、おう」
「大事なのは互いに信頼と絆を築くことよ!」
「‥‥‥‥‥分ってよ。」
そうは言っても優依は魔力を使えない。
なので自身の常識と考え得る尤も最善策は特異能だった。
リングに微弱な静電気を通すと少しの間の後に、すんなり吸収されいき安堵する。
次にフードから体、腕と裾へと移動して手の平で揺れて待機していたレッドスライムに右手の人差し指に付けたリングを見せてみる。
その時に先程よりも少し強めの静電気を出してみる。
すると、そこから一筋の魔力のラインが宙を描きスライムを円で囲む。
そしてスライムが声高く“ぷ~い”と鳴くとラインがリングに戻ってくる。
その後にスライムを囲んでいたラインは切れてスライムに溶けるように消えるとスライムはリングに吸い込まれていた。
一連の出来事を見守っていたラウザは喜び跳び跳ねて喜んでいたが優依は中腰状態から膝を着いて成功した喜びとテイム事態が無事に完遂した事とで良かったと小さく呟くと立ち上がってラウザに振り返っていた、その表情は彼にしてはニヤけていて感情を隠せないでいた。
「大成功ね!
他には餌付けが簡単だけど成功と同じくらい失敗よ多いのよね。
あとは使役行使する対象を痛めつけて弱らせて脅して契約を恐怖で迫ったり、無理矢理に屈服させてから強行して意思を無視したり、意思その物を消して操り人形みたいにしたりするってのがあるのよ!」
「マジかよ!」
「うん。なんなら、これらの方が一般的だったりする位だから。
まぁ、私達の村じゃ普通にNGだし誰もやりたがらないけどね。」
「そうなのか?」
「って言うか使い魔の1匹ならまだしもテイマー事態がマイナーってか普通に不人気だからね~
食費とか魔力とか大変って意味でだけど。
でもユウイがテイム相手を召し使いや家来って考えが無くて良かったって安心してるんだから!」
「あ~そうかよ。
端から、そんな考え持ってね~よ。
‥‥‥‥ありがとよ………ホラ、もう行くぞ!!」
「ん?
何て言ったのよ?
何て言ったのか教えなさいよ!!
‥‥‥あっ!
ちょっと待ちなさい。
すること有るの忘れてた。」
そう言うと後ろに振り向いて村に数歩近づいて向くと両手を胸の高さで翳すとラウザの周りから、一陣の柔らかい竜巻が起きる。
次の瞬間から彼女の醸し出す雰囲気と空気が変わる。
しかし振り返り治ったラウザからは普段と変わらぬ呑気な雰囲気と様子が流れており元に戻っていた。
違ったのは隠れ里全体に透明な障壁結界が展開されている事だけだった。
「それじゃ用事も済んだし行きましょう!」
「おっ、おう。
出てきてイイぞ、レッド」
レッド・スライムがリングから顔を出すとポンッと出てくる。
スルスルと腕に着々すると登って肩からフードの中に入って何時もの定位置に戻ると、一鳴きする。
「ぴ~」
「ね~アンタ、そう呼んでるけど。
ほんとにレッドにするの?
赤いからレッドって安直過ぎない」
「あん?
いいんだよ。
覚えやすいし、本人も気に入ってるんだから別にいいだろ」
「それアンタが勝手に言ってるだけじゃない!!
まぁ覚えやすいのは確実だけどネーミングゼロなの分かってる?」
「うるせ」
「‥‥‥‥そう言えば、あれから3日くらい。
トータルで六日位かしら?
アンタ、村の男連中と森で狩りとか言って稽古もしてたみたいだけど本当に大丈夫なの?」
「あぁ~そういや回復魔法ってのして貰ってから調子良いし、ココのキズも治して貰ったし、大丈夫だろ」
左足を見ながら太股辺りを擦って痛みが無いのを確めながら優依は1人納得する。
「なんで忘れてんのよ。
でも痕、残ってないでしょ?
感謝しなさいよね、フフン」
◇◇◇◇◇
あれから歩きながら里から離れていっていた。
ラウザが、お喋りで無視をすると機嫌が悪くなる事を数日、一緒に暮らした優依は痛い程、体験しているので、一通り聞き流しながら返事をしてはを繰り返していた。
ラウザは、ふて腐れてはレッド・スライムのレッドに話し掛けたり、優依に話を振ってはケンカ一歩出前までになったりと平和に時間は過ぎていた。
「そう言えば、アンタって魔法じゃないわよね?
魔法陣も詠唱もしてないのに、なんで攻撃する時、叫んでるの?」
「うん?
技名言った方が頭が認識して覚えてたり、咄嗟に体が反応出来たりするからって言ってたな。
あと声に出す事で筋肉に力が入るんだと。
嫌だったけど慣れだな。」
「ふーん。
色々難しい事、考えてるのね?
あっ、ここから人通り多くなる感じね。
フード被りなさい。
…………‥ご機嫌よう!」
少し前に隠れ里へのルートから外れて一般に使用される歩道に出たため獣道から、それなりに整備された土の道に変わっていた。
擦れ違った馬車に挨拶をしたラウザは通り過ぎたの確認してから息を吐くと優依を待たせると小走りで去って行く。
「歩いて見てこなきゃ。」
戻って来るとラウザ自身はフードを取り、大丈夫と言ってレッドを優依に返して先に歩き越していく。
「なぁ帽子被ってんだしフードは、いーだろ?」
「ダメ!
今回はフリーモンデの追っ手じゃなかったけど、それを無しにしてもアンタは黒髪黒目なんだから、その辺注意が必要でしょ?
気抜かないの!!」
「へーへー。
‥‥‥ならよ、やっぱ車は無いか、馬車だ。
‥馬車にしないか?
2時間、歩きぱなしってのは流石疲れんだよ。」
「馬車って高いのよ。
無理言わないでよね。
フリーモンデが乗ってたのもアンタ壊してたけど、直すよりも以前に買う方が高いのよ!
まぁフリーモンデのは使えないんだけどね。
運んでた荷はくれたけど流石に馬車は金綺羅過ぎて兵士さんも押収せざる負えないとか言ってたしね!
ほら愚痴ってないで先、進むわよ!
先は長いんだから。」
「へいへい」
◇◇◇◇◇
里を出た優依達は目的地の貿易都市を目指していたが山の中で夜を越そうとしていた。
「ったく、何が案内は任せろだ!
迷子に成ってんじゃね~かよ」
焚き火を作り、石を積み重ねただけの簡易の釜戸を完成させると
ラウザの持ってきていた具材や大きな鍋等の調理器具で夜食を作っていた。
「仕方ないじゃない!
里の周り森から出た事なかったんだなら!!」
「それで良く偉そうに先導切れたな。
案内結構とか1人で任せなさいとか言ってよぉ~」
「出来ると思ったの!!
ここまで来れたんだから褒めてくれたっていいじゃない。」
「なに言ってんだ、お前。
これなら兵隊のおっさんが案内するって言った時に素直に聞いときゃ良かったな。」
「何よソレ!!
今迄で最高に酷い言葉よ、有り得ないんだけど!
謝りなさい!!
全っ私と歴代の巫女一族を侮辱したも同じなのよ!!」
「はぁ!?
怒り過ぎだろ。」
「いいから、兎に角!!
私と私と私!!
世界的に私に謝って!!
許さないから!」
「意味分からんぞ、何そんなに──
───誰だ!!」
「えっ?」
「黙ってろ!
血の匂いもする気を付けろ」
ラウザを庇う様に前に飛び出て口を手で覆うように呼吸音を消すように優依をラウザを軽く抱き締めていた。
「ホント?
ホントだ、獣人のワタシより分かるなんて凄い嗅覚」
「バカ、黙ってろ来るぞ!!」
「はぁ、大きな声──ムグゥ!?」
より強くクチをを手で抑えられて目をパチクリさせて静かにするように気持ちを切り替える。
それは草木を踏み分ける音さえ立てずに優依の問い掛けに敢えて答えずラウザ達の前に現れた。
「小僧、ソイツを食ったのか?」
開口一番の台詞は何とも間抜けな緊迫した空気を破壊して弛緩させる物だった。
「あぁ!?
おっさん、なに言ってんだ」
“状況分かってんのか”と続きをクチにしようと言おうとしていた優依は前触れもなく倒れていた。
それを当然と言わんばかりに、一瞥するとクチを開く。
「やはり食ってたか小僧‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥これも何かの縁だ、助けてやる。」
優依達が囲んでいた焚き火の様子や料理中の鍋、そして串に刺さったままで焼かれている途中のキノコを見ていた男は、そう告げるのだった。