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【電子書籍化】断罪された悪役令嬢を助けたら、宰相閣下に求婚されました【完結】  作者: 清川和泉
第4章 着々と

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第48話 共に過ごす時間

ご覧いただき、ありがとうございます。

「それではこちらへどうぞ」


 七月の中旬。

 エマは、隣国アウル国のルイ使節をアウル国の常用語であるアウル語で対応をし、王太子妃であるケイトの執務室へと案内をした。

 アウル国の使節は滞在期間の一週間の間、王宮の様々な場所へと赴き国王や王妃といった国の重鎮らと会談を行っているのである。


 隣国アウル国とは長年国交を結び友好関係を築いてきたのであるが、この度新たな街道を開発し、それによりそれぞれの関所の新設や行商のルート等が変更される運びとなったので、アウル国から使節が赴きそれらの照らし合わせを行なっているのであった。


「お疲れ様でした、エマさん」


 先輩女官のミントは、控室のエマの目前のテーブルの上にティーカップを置いた。


「ありがとうございます」


 そのティーカップを手に取り一口飲むと、温かい紅茶が身体に染み渡って疲れが癒えていくように感じた。


「エマさん、今日は早めにお帰りください。最近は、随分と遅い時間まで残っていただいていますので」

「ありがとうございます。ですが皆さんも遅くまで残っていらっしゃいますし、ルイ使節の滞在は明日までですので、皆さんと今日を乗り越えられたらと思っています」

「左様ですか。ただ、エマさんのお陰で随分と業務は捗っておりますし、後は主に王太子妃殿下にお話をお伺いするだけですので」


 それは先輩の女官が行うことであるので、エマは出仕時間を超えて残る必要はないとのことだった。


「ありがとうございます。それでは今日は出仕時間が終了次第、帰宅させていただきます」


 このところ毎日エマの帰宅の時間は二十一時を超えており、ロベールと食事を共にすることがほとんどできていなかった。

 それどころか会うこともできず、最近では寝所を共にすることもなかった。


 そう思いを巡らせながらケイトの執務室へと赴くと、ケイトに最近何か気にかかることはないかと訊かれたので、そのことを打ち明けたのだった。

 もちろん、寝所のことは伏せて伝えたのであるが。


「最近は、共に食事を摂れていないのですね」

「はい、左様でございます」

「それでは、王宮の食堂で一緒に食事をなさったらいかがでしょうか」

「食堂ですか?」


 王宮の食堂は宮ごとに幾つもあり、王族のみが使用することのできる特別な食堂以外であれば、事前に申請をすれば一部の食堂は使用することができるのである。


 ただ、ケイトからのその申し出は嬉しいのだが、夜に食堂を自分たちのために解放してもらった上に料理人に働いてもらうとなると、それは職権濫用にならないかとも思った。


「お心遣いを賜りまして、ありがとうございます。ですが、わたくし共のために料理人の方の業務を増やすのは申し訳ありませんので」


 ロベールは宰相なので特に問題はないと思うが、エマはあくまで女官であり、この国の女官が夜も食堂を利用する例はあまり見受けられなかった。


「左様ですか。……でしたら場所はお貸しいたしますので、食事はそちらでご用意していただくのはいかがでしょう」

「こちらでですか?」

「はい。ご負担はおかけしてしまいますが」

「いえ、それなら問題はないと思います。王太子妃殿下、ありがとうございます……!」


 ケイトはそっと微笑んで小さく首を横に振った。


「いいえ。むしろこのくらいの配慮しかできなくて申し訳なく思っております」

「そんな、もったいないお言葉を……」


 エマは、ケイトの心遣いを心からありがたいと思ったのだった。


 ◇◇


 そして翌日。

 エマは共に屋敷で朝食を摂っている際に、早速ロベールに王宮で食事を摂ることを提案をした。


「ああ、分かった。所定の時間に必ず向かうようにする」

「ありがとうございます」


 正直なところ断られるかと思っていたのだが、快諾をしてもらえたのでホッと胸を撫で下ろした。


 また念のため、前日のうちに執事を通して公爵家の料理人に二人分の持ち出すことのできる食事を用意できるようにしておいて欲しいと伝えてあったので、準備にはさほど困らないと思われる。


 これまで、ロベールはどんなに帰宅が遅くなっても王宮で食事を摂らず屋敷に戻ってから軽食を摂っていたので、「旦那様の健康を心配していたところでしたので、とても素晴らしいご提案をいただきましてありがとうございます」と執事と家令のビクターからは感謝の言葉をもらったのだった。


 そして、勤務時間が終了して一時間ほどが経った十八時半頃。


 エマは、本宮の三階にある普段は主に宰相であるロベールや宰相補佐官らが利用する食堂へと赴いた。

 食事は、業務が終了したしばらく後に公爵家の遣いから受け取ったもので、それらをテーブルの上に広げて準備を始めた。

 すると、間もなく扉が開きロベールが入室して来たのだった。

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