第44話 キャサリンからの挨拶
ご覧いただき、ありがとうございます。
今話は前話の加筆修正部分の予定でしたが、文字数が多くなりましたので独立した1話といたしました。
「本日はおめでとうございます」
そう爽やかな笑顔で声を掛けたのは、エマの同期で同寮に住んでいたキャサリンであった。
彼女は、栗色の長い髪を三つ編みにして後頭部に髪留めで束ね、裾に上品なレースがあしらわれた緑色のイブニングドレスを身につけている。
また、寮母のマールも同伴し、彼女もブロンドをキャサリンと同様の髪型にし、ベージュのイブニングドレスを身につけていた。
「キャサリンさん、マールさん! 本日はお越しいただきまして、本当にありがとうございます!」
二人が来てくれたことは、エマにとってこの上なく嬉しいことであった。
ただ、すでに退寮の手続きは済ませており、エマの家財道具などは全て公爵家へ運搬済みである。
「エマさん、とても素敵な結婚式でした。幸せをお裾分けしていただけるような温かい気持ちになりました」
楽しそうに笑いながら話してくれるキャサリンを見ていると、エマは胸から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
「そう言っていただけて、とても嬉しいです。こちらこそ、ご出席をいただきましてありがとうございます」
挨拶を終えると、キャサリンとマールはそっと微笑み一礼して立ち去ろうとするが、ふとキャサリンが何かに気がついたのか足を止めた。
「あら? あちらの方は……」
視線を向けたのは、先ほどエマとロベールの元に挨拶に来た青髪の騎士のポールであった。
「キャサリンさんのお知り合いですか?」
「ええ。知り合いというほどではないのですが、図書館の付近の警備を担当なされているので挨拶程度なら交わしますね」
「そうなのですね」
お互いに名前は知らないが、顔見知りではあるという関係らしい。
ただ、キャサリンの表情からそれ以上に彼に対して何かがあるようだが。
「彼に対して、なにか思うところがあるのだろうか」
エマと同様のことをロベールも思ったらしく、彼から質問を投げかけるとキャサリンは恐縮をしながらも、真っ直ぐロベールの方に視線を向けた。
「はい、閣下。騎士様には、以前図書館に少々問題行動が見受けられたお客様がお越しになった際にお世話になりました。お礼をとお伝えをしたのですが、仕事であるからそれには及ばないと」
どうやら、先の一件の際にロベールが王宮内の警備を強化したのだが、そのときに図書館に派遣されたのがポールだったらしい。
「左様か。先の件は由々しき事態だった。対処が後手に回ってしまい申し訳がない」
「い、いいえ! そんなとんでもありません、閣下! 閣下におかれましては、先の件に対してご配慮をいただきまして誠にありがとうございました。……お二人とも、それではこれで失礼いたします」
「はい、ありがとうございました」
深々と辞儀をして、キャサリンとマールは立ち去って行ったが、キャサリンはポールにも挨拶をしていた。
エマは、後日詳細を聞こうとそっと思った。
そうして、エマたちは出席者への挨拶を終え、結婚披露パーティーは無事に終わったのだった。
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