表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/58

第35話 花束

ご覧いただき、ありがとうございます。

 婚約披露パーティーの翌日の月曜日。


 エマは、本日は特に休暇は取らずに通常出仕をしていた。

 流石に結婚式の翌日であれば、休暇願を出したのかもしれないが、今回はあくまでも婚約披露のパーティーであったので通常通りで問題ないと判断をしたのだ。


「エマさん、おはようございます。ご婚約おめでとうございます」


 クロエとサニー、ミントら王太子妃付きの女官たちが、エマが控室に入室するなり声を掛けてくれた。

 その手には、ガーベラやマリーゴールドなどのオレンジ色の花で束ねられた花束が抱えられている。


「皆様、ありがとうございます」


 受け取った花束はとても艶やかで、見ているだけで心が潤うようだった。


 思えば二ヶ月ほど前に、先輩の女官らにロベールとの婚約のことを打ち明けた際は、皆心底驚いていた。

 だが、宰相と結婚することになったエマのことを分不相応と言って拒否することは決してなく、反対に本当によかったと祝福をしてくれたのである。


「お疲れではないですか?」

「今日はよかったら、資料室で資料の整理を頼めるかしら。ゆっくりと自分のペースでよいので」


 次々とエマのことを労ってくれる先輩女官たちに、彼女は心がじんわりと熱くなった。


「皆様、ありがとうございます」


 正直なところ、昨日の華やかな世界から急に現実に戻ってきたように感じていたので、その申し出はありがたかった。


「それでは、今日は資料の整理をさせていただきますが、その前に王太子妃殿下にご挨拶をしたいと思います。よろしいでしょうか」

「ええ、もちろん。いってらっしゃい」


 気持ちよく送り出してもらい、エマはケイトの執務室へと移動した。


 先輩の女官たちは、これまでエマに対して常に朗らかで誠実に対応をしていた。

 決して身分で人を色眼鏡で見たりしないし、時折図書館に赴いた時に会うエマの同期のキャサリンに対しても、優しく接していた。


「王太子妃殿下、失礼いたします」


 四回ノックをした後に、綺麗な声で返答があったので静かな動作で入室する。

 すると、部屋の中央にすでに大きなピンク色の花束を抱えたケイトが立っていた。


「エマさん、本当におめでとうございます」

「王太子妃殿下……!」


 先ほどクロエらから受け取った花束は一旦控室に預けてあるのだが、ケイトはその花束よりも一回り大きな花束をエマに手渡した。


「本当におめでとうございます。あなたの婚約を心から祝福しています」

「殿下……誠にありがとうございます」


 ケイトはあえてなのか、それ以上の言葉は紡がなかった。

 今回の婚約披露パーティーには王太子妃付きの女官らや、ケイトを招待はしなかったのだ。

 というのも、半年後には王宮の敷地内の礼拝堂を貸し切って結婚式を挙げることが決まっているし、今回は公爵家邸で開くこともあり主に身近な家族やロベールの関係者を招待したからだ。


「もしよろしければ、記念の絵姿が出来上がりましたら、是非お見せくださいね」

「はい、必ずお持ちいたします」


 そうして挨拶を終えると、資料室へと移動した。


 今日一日は、いつの間にかテーブルの上に大量に積まれたままになってしまった資料をゆっくり整理することができると思い作業をしてから三十分ほどが経つと、突然ノックの音が室内に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ