第0話『舞台裏』
「首尾はどう?」
「問題ないよ。メンバーも君が言った通りの面々を揃えた。全員一癖も二癖もありそうな人たちだ。きっと、椿も気に入ってくれるだろう」
「そう……流石だね」
「後悔は……しないかい?」
「――今更それを聞いちゃうの?」
「今だからこそ、だよ。今ならまだ引き返せる。まだ動き出してもいないのだからね」
「そうかも……ね」
「それで、どうなんだい?」
「えっと……後悔しないか、だっけ?」
「ああ」
「そんなの、するに決まってるじゃない。きっと、私は望みが叶っても後悔する。どうしてこんな事をしたんだろうってずーっと後悔しちゃう」
「なら……やめるかい?」
「ううん、やめない。確かに後悔はしちゃうだろうけど……それでも、一番見たい物は見れるはずだから」
「そうか」
「うん。そうなの。それに、どのみちここで動かなかったらそれはそれで後悔するもん。ここで動くのをやめちゃったらきっと私はなんであのとき動かなかったのか後悔して、それで自分の事を嫌いになっちゃう。それなら、同じ後悔するでも自分の事を好きになれそうな方向で後悔する。そう決めたの」
「君は……強いな」
「強がってるだけよ」
「だとしても……君は強いよ」
「そう……かな?」
「そうだよ」
「そう……そう言ってもらえると……ちょっと嬉しいかな」
「全く……椿は幸せ者だな」
「そんな事ないよ。私は椿から貰った物を返すだけ。それに、まだ椿は全然幸せじゃないよ。まだ……自分の仮面に囚われてる」
「そうだね……ああ、そうだった」
「だから椿には……無理やりにでも青春を謳歌してもらうんだから♪」