9怪
「あの女の様子はどうだ?」
「最初こそ、自分ではないとわめいておりましたが今では大人しくなっています。」
「政之進様は?」
「まだ納得が行かないようで、家老に文句を言いに言ってます。
家老の方ではどうしようもなくなってきてますね。」
「早急に殺してしまえ。例の下女どもはどうなった?」
「それが行方がわからなくなっております。
これはもしかするとヤバいかも知れませんよ?」
「ふん。どうでもよい。
大事なのは政之進様を当主から引きずりおろす事だ。
そのためなら誰が割ったのかなどどうでも良い。」
「ですが、処刑を早めてはこちらの思惑が知れるおそれがあります。処刑することが当然といった雰囲気を作らなければなりせん。」
「確かにそうだな主人を陥れたなどと噂が立っても困るからな。
確実に進めるとしよう。」
反政之進派の家臣たちも下女が消えたことで今回の真相はだいたいわかっていた。同様に政之進派の家臣は必死に消えた5人を探すことによって真相を確かめようとしていた。
ー孕石家領 隣加藤家屋敷ー
「ずいぶんと早く逃げてしまったのだな。」
加藤が冷たく言うと五人の下女は顔を青ざめさせて、
「あのような状態では嘘に気づかれるのも時間の問題でした。
バレたら殺されてしまいます。」
「孕石の中にも政之進を排斥したい者がいる。
その者達に取り入る事もできたろうが、まぁ下女ではそこまでの頭もないか。どちらにしても時間の問題だったからな。この屋敷の離れでしばらく身を隠しておれば良い。」
「ありがとうございます。」
5人がお礼を言うと加藤家の家臣が来て5人を連れていった。
「あれらの下女はいつ殺されるのですか?」
加藤の違う家臣が聞く。加藤は冷たいほほえみを浮かべて、
「今日は豪華なもてなしをしてやれ。明日には何も食えなくなるのだからな。」
「承知いたしました。」
「ああ、そうだ。あの下女たちと仲の良いうちの下女も殺しておけ。」
「そうですね、今回の件が漏れると大変ですから関係者は皆殺しにしておきます。」
「任せた。」
家臣が出ていくと加藤は一人で
「お菊とやらの処罰は先延ばしにされているようだな。
少し城内で噂を広めてみるか、いや直接、政之進をあおってやる方が楽しいかな。」