6怪
彦根藩の加藤領は孕石家の領地の隣にあり、孕石家の下女と加藤家の下女の中に仲の良い者たちがいた。
武士同士の出入りならある程度管理されていたが下女の行き来に関しては特に何もされていなかった。
「それでね、政之進様は相変わらずお菊に優しくしてるし、お菊もなんだかんだ言って政之進様にべったりなわけ。本当にむかつくわ。」
孕石家の下女が言い、加藤家の下女が
「ちょ、ちょっと!そんな話やめてよ。
政之進様の悪口言ってたみたいになったらどうするのよ。」
武士の悪口なんて下女が口走っていたらそれだけで殺されてしまうかもしれない。孕石の領地ならそんな事は政之進が許さなかったが加藤は古い武士なのであり得る話だった。
「あっ、ごめん。」
下女二人は周りを見渡して誰もいない事を確認して、孕石家の下女が
「でも、お菊の悪口言ってるだけだから大丈夫だよ。
それに政之進様についてもあんまり良いうわさ聞かなくなってきたし、どうなるかわからないよ。
なんかあったらお菊のせいにしちゃえばいいんだしね。」
「・・・・ふむ、それは良い案だな。」
二人の下女が振り向くとそこに加藤が立っていた。二人は驚いてまずは謝罪をした。
加藤はそれを適当に流して、
「女、そのお菊なるものが孕石の愛しているという下女で間違いないな?」
「えっ?はい、そうですが・・・・」
加藤はにやりと笑い、
「お菊が邪魔なのだな?」
「えっ?はい。」
下女は加藤の言いたいことがわからずに聞かれるままに答えてしまった。
「では、お菊がいなくなるような作戦を共に考えてやろう。
女は、孕石家の家宝の皿がどこにあるか知っているか?」
「聞いた事はありますが本当にそこにあるかはわかりませんが?」
「そのお菊なる下女はどうだ?」
「お菊は政之進様に見せてもらった事があると話していました。」
「なるほど、それは良いな。
では、お前の信頼できる下女をあと4人集めよ。
そして・・・・・・・・・・」
加藤の作戦を聞いて下女は顔を真っ青にしたが、
「案ずるな。もしこの作戦をうまくこなせることができればお主もこの作戦に参加した下女も我が家で雇ってやろう。孕石の倍の給金も出してやる。いかがする?」
下女は迷っていたが加藤の圧に負けて黙ってうなずくしかなかった。