15怪
-孕石家屋敷-
「毎夜のようにお菊の霊がでているな。」
「もうこの家も終わりかもしれないな。」
屋敷の門を掃除していた二人の家臣が話している所に訪問客が来た。
「すみません、政之進殿はご在宅ですか?」
「政之進様はお出かけ中です。
家老の木俣様のお屋敷に行かれています。何か御用ですか?」
「実はこのお屋敷での幽霊騒動で周囲の領地に不安が広がっていまして、詳しくお話をお聞きしたかったのですが、お二人のご存じの事でいいので教えて頂けませんか?」
訪問客に聞かれたので家臣が
「毎晩お屋敷の井戸のところに処刑されたお菊の霊が出るんです。
お菊がお皿を割った事が原因で処刑されたので、お皿の数を数えているのです。」
「そのお皿を割ったのは本当に度の下女だったのですか?」
「それが良くわからないんです。
お皿を割っている所を見た下女も姿を消してしまいましたし、お菊の処刑を強く訴えていた家臣もいなくなってしまいました。不可解な事が多くて真相はわからないままなんです。
もしかしたら、真相がわかればこの幽霊騒動も収まるかもしれませんが。」
「・・・・なるほど。
それはそうと政之進殿はそのお菊という下女下女と特別な関係だったと聞いてますが、政之進殿も幽霊を目撃されているんですか?」
訪問客が聞く。家臣の一人が
「それが政之進様がお菊の霊に会いたいと待ち伏せた時に限って現れなかったり、別の場所に現れたりするので政之進様はまだ会われていません。」
「そんな事があるとは、前もって誰かが仕組んでいるといった事はないのですか?」
「そんな事はありませんね。政之進様が独断で動かれているので相談する事もないですし、最近は政之進様の様子がおかしく、正常な判断もできていないように思えます。
お菊の呪いなどという者もいます。
木俣殿がどうにかして頂けないかと願っております。」
「そうですか・・・・。わかりました、またお話をお聞かせください。」
訪問客が帰っていくと、それを追うように孕石家の中から男二人が追いかけていった。
それを見て、門を掃除していた家臣二人が
「あれでよかったのか?」
「政之進様からのご命令だからな。
まあ、もうこの屋敷の中に反乱分子はいないからな。
あとは外の勢力の排除だけだろう。」
「この後はどうなるんですか?」
「さぁな。この偽幽霊騒動を終わらせて孕石家再興って感じなんじゃないか?」
「えっ?あれって噓の幽霊騒動だったんですか?」
「幽霊なんているわけないだろう。」
「本当にそうでしょうか?」
突然声が聞こえたので家臣二人が振り返るとそこに家老の木俣が立っていた。
「こ、これは木俣様。政之進様は木俣様のお屋敷に行かれたのではないのですか?」
「幽霊騒動でお疲れのようだったので、私の屋敷でお休みいただいています。
信じる、信じないはご自由ですが、信じていなければもしかしたら次に幽霊を目撃するのはあなたかもしれないですね。」
「そんな・・・・・」
「少しお屋敷の中を見させてください。
何か手がかりがあるかもしれないですからね。」
「あっ、どうぞ」
木俣は屋敷の中に向かって歩いて行った。