12怪
「それでは、お菊の処置を決めていきたいと思います。」
孕石家の屋敷内の一室において家臣団による話し合いが行われていた。
「他の家に示すためにもここは死罪にするべきでしょう。」
「下女の数が減りすぎるのも問題ではありませんか?
すでに行方不明の5人もいますし、ここで下女を減らし続けると今後の奉公者が減る可能性もあります。
死罪ではなく解雇としておくべきではないでしょうか?」
「ですが、割られたお皿が家宝のお皿ですからね。」
「領民からの信頼を失うことも問題ですぞ?」
「う~ん・・・・・・・・・・・」
全員が頭を抱えたところに政之進が現れ、
「今回の件について解決策を提案してくださっている方をお連れした。
皆、姿勢を正せ。」
全員が姿勢を正したのを確認してから政之進が
「では木俣殿、よろしくお願いします。」
「彦根藩家老の木俣です。
今回は孕石家の問題ではありますが、井伊家より賜った家宝のお皿である事や今後の下女の確保などの問題も含めて孕石家だけでは解決できないと判断し、家老家である私がお預かりいたします。
当家で秘密裏に処理させて頂きます。当然、政之進殿にはつらい結果となりますが、そこはご容赦頂く事で納得いただきました。」
「政之進様が納得されたとは・・・・・・」
「家老家にお任せすれば大丈夫でしょう。」
家臣の中からも賛同の声が聞こえてきた。その場で会議が終わり、木俣と政之進は屋敷の牢屋に向かって歩き出した。
「お菊!」
牢屋で人払いが済むと政之進はお菊に駆け寄った。
「すまない、私に力がなかったために今まで辛い思いをさせてしまった。」
「政之進様、私はやはり死罪となるのでしょうか?」
「失礼、私は彦根藩家老の木俣と申します。
今回の一件は何か隠されているような気がしますが、あなたをこのままの状態にしておくと真実がわからなくなるでしょう。そこであなたには私の策に従って頂く事になりました。
とりあえず、私の屋敷に移って頂きますのでそのつもりでいてください。」
「そこで私は何を?」
「それはおいおい説明しましょう。
とにかく今は私についてきてください。そして、政之進殿を信じてほしいのです。
これまでは色々なしがらみもあり自由にできなかったこともあったと思いますが、これからはあなたと寄り添っていけるでしょう。」
「木俣殿・・・・・・。
よろしくお願いします。」
政之進が頭を下げた。そしてお菊は木俣家の家臣に連れていかれた。