1怪
時は戦国末期、関ヶ原の戦い後
「直政、此度の戦での武働き見事であった。
褒美として、近江の領地とこの皿を与える。」
「ありがたき幸せ。」
時は過ぎ、大阪夏の陣後
「孕石、井伊家の将として此度の戦での働き見事であった。
残念ながら赤備えでは真田の方が目立ってしまったが、そなたらの活躍も見事であった。
褒美として、初代藩主・直政様が関ヶ原の合戦後の武働きの褒美として神君・家康公から戴いたこの10枚の皿を与える。」
「あ、ありがたき幸せ。」
そしてまた時が過ぎる。
「どうだ、お菊?
見事な皿だろう?」
「こちらのお皿はどのようなゆかりのあるお皿なのですか?」
「うむ、これは我が家の先祖が大阪夏の陣のおりに武働きの褒美としていただいた物で、さらに遡れば徳川家康公から初代藩主直政様が戴いたものだと伝わっている。
いわば神君から戴いた物というわけだ。」
「政之進様、申し訳ありません。
下女の私には直政様のお名前は存じておりますが、家康公という方がどのような方かわかりません。」
「ほう、そうであったか。
では、徳川家康公というのはだな・・・・」
話しかけたところで、
「政之進様、このような所におられたのですね。
すぐに来てください。」
家臣の1人に呼ばれて政之進は話をやめて
「すまないな、お菊。
また今度にしよう。」
「はい。」
笑顔で答えるお菊の顔をずっと見ていたいと思いながら、政之進は家臣に案内されるままに歩きだした。