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褒め殺しなのか、はたまた

「……あのねぇ」


 セイディの言葉を聞いて、リオは呆れたような声を上げる。それをどう捉えてしまったのか。セイディは必死に「本当に、お綺麗です!」と力強く言っていた。


「リオさんは、お綺麗です。特別な意味はありませんが、私が保証します」


 どうして、ここまで言えるのかは分からない。ただ、多分リオに自覚を持ってもらいたかったのだろう。それだけは、分かっている。


 そう思いながらセイディがリオのことを褒めていれば、リオは「もう、いいわ」と言ってそっぽを向いてしまう。もしかして、褒めすぎたのだろうか? そんなことを考えてしまうが、それはどうやら真実だったようで。リオは顔を真っ赤にしていた。……何だろうか、彼は何処となく照れ屋な部分があるのかもしれない。


「もう、本当に貴女は油断ならないわね」


 その後、リオはそう零す。その油断ならないの意味が、よく分からないため、セイディは小首をかしげてしまった。それを見たためなのだろうか、リオは「本当に、無意識なのね」と呟いていた。


 それから、リオの手がセイディの方に伸びてくる。それに驚いて目を見開けば、その手はセイディの頬を掴み、ぐにーと伸ばしてしまう。その行為に、セイディは目を丸くすることしか出来なくて。


「にゃにするんですか!(何するんですか!)」


 しっかりとした言葉にならない抗議をすれば、リオは「バカな子に分からせてやっているのよ」と告げてくる。セイディは自分がバカだとは思っていない。そりゃあ、貴族の令嬢としての教養はない。それでも、まだそこそこ頭は良い……はず、だと信じている。


「貴女、男にそういうことを言うと勘違いされるわよ? 自分に気があるんだって」


 渋々といった風に、リオがそう伝えてくる。その言葉の意味を、セイディは分からなかった。だが、すぐにハッとする。多分、リオはセイディが誰彼構わずそんなことを言わないように、注意してくれているのだ。たとえ、セイディにその気がなかったとしても。


「大丈夫です。私、リオさんにしか言いませんから」


 でも、それは不本意すぎる。セイディは顔が綺麗だと思ってもリオ以外にはまっすぐに伝えるつもりはない。もちろん、同性には伝えるかもしれない。でも、異性はリオだけ。むしろ、リオ以上に綺麗だと思う男性は、いないと思う。……あの、アシェルでさえも、セイディからすればリオには劣るのだ。


「……それに、私、リオさん以上に綺麗だって思う男性、いらっしゃらないと思います」


 リオの目をまっすぐに見つめてそう続ければ、リオはその顔をさらに真っ赤にしてしまう。そして「……本当に、油断も隙もないわね」と言っていた。


「まぁ、いいわ。ほら、さっさと行くわよ」


 リオの言葉に戸惑うセイディを他所に、リオはそう告げるとさっさと歩きだしてしまう。それに驚き、セイディは慌ててリオの隣に並んだ。リオの歩くスピードはとてもゆっくりであり、あっという間に追いついてしまう。結局、リオは何処まで行っても優しいのだろう。セイディのことを、思いやってくれるのだろう。


 しかし、無言が辛い。セイディは元々無言の空間が苦にならないタイプだったが、何故かリオといると変に緊張してしまって、無言が辛くなってしまうのだ。だからこそ、リオの横顔を見上げれば、その美しい顔に見惚れてしまう。……美しいことは、分かっているのに。なのに、最近その顔が輝かしく見えてしまう。


(……本当に、どうしたのよ、私)


 今まで、こんな気持ちとは無縁だったのに。そう思いセイディが視線をそっと逸らせば、目の前からこの騎士団に所属する騎士が数人歩いてきた。彼らはリオとセイディを見つめ、「おはようございます」と言ってにこやかな挨拶をしてくれる。


「おはよう」


 リオはなんでもない風にそう返すが、セイディは少し躊躇ったのち「おはようございます」と挨拶をした。


(私、ここだと場違いだものね)


 ここは騎士団、つまりは男性の場所。それに対し、セイディは聖女といえど女性である。いくらお客様だとしても、遠慮してしまう。


 セイディが肩をすくめながらそう思っていれば、騎士たちが「本当に、綺麗だよなぁ」という声を零していた。……多分、リオのことだろう。


「つーか、俺たち出会いがねぇし? あんな綺麗な女性とお近づきになりてぇなぁ」

「無理だってば。お前、自分の顔分かっているのか? それに、あの女性はリオさんの婚約者だろ? 俺たちには勝ち目ねぇって」

「そうだよなぁ。美しい女性の側には、大抵顔の良い男だしな。相場は決まってるんだってば」


 が、何処となく会話の内容がおかしくないだろうか? そう思い頭上にはてなマークを浮かべていれば、リオが「行くわよ」と言って早足になる。……もしかしたら、何か不機嫌になることがあったのかもしれない。そう思い、セイディは「はい」と返事をして、歩くスピードを速めた。


「こわっ!」


 後ろから、そんな声が聞こえてきたことに、セイディは気が付かなかった。あと、リオが騎士たちを睨みつけていることにも、気が付かなかった。

言い訳になるのですが、私の家のネット回線の調子が悪くて、更新が遅れました(´・ω・`)

すみません。

次回更新も木曜日を予定しております。

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