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騎士団へと

 それからしばらくして。セイディは王宮にやってきていた。王宮の入り口で止められたものの、リオの婚約者だと説明すれば、すんなりと通してもらえた。警戒心が足りないのではないかと思ったが、そこはセイディが心配するところではない。そう思い直し、セイディは入り口で貰った王宮の内部図を見つめながら、騎士団の訓練場を目指す。


 王宮の内部は予想通りとても煌びやかだった。キラキラとした内装はとても眩しく、セイディの好奇心を疼かせる。しかし、今はそれどころではないと思い直し、持ってきた鞄を抱きしめながら歩く。騎士団の訓練場は王宮の裏手にあるということで、とりあえずはそこに向かおう。そう、思っていた、のだが。


「……ちょっとまずいかも……」


 完全に、道に迷ってしまった。王宮はとても広々としており、似たような構造をしている。案内人がいないと、間違いなく迷ってしまうだろう。それにセイディが気が付いたのは、王宮の中層部まで来た頃で。……一人、頭を抱えてしまいそうになった。


「……そこら辺の侍女に訊いてみてもいいけれど……」


 しかし、彼女たちは忙しなく働いている。仕事の邪魔をすることは、憚られてしまった。なんとか一人で解決しようとするものの、やっぱり限度というものがあるようで。セイディはしまいには途方に暮れてしまった。


「案内板でも、出しておいてくれたらなぁ」


 それは間違いなく逆恨みだ。分かっている。それでも、そう思ってしまうのは仕方がない。心の中でそんな悪態をつきながら、セイディは天井を見上げた。白を基調とした天井は、やはりとても美しい。


「……どうしよう」


 その後、途方に暮れたようにそんな言葉を零したときだった。不意に、自身の肩を後ろから誰かに叩かれる。それに驚き慌てて振り返れば、そこには――見知らぬ美しい青年が、いた。


「見たことない顔だな。……道にでも、迷ったか?」


 銀色の髪の毛を持つ彼は、そうセイディに声をかけてくる。その服装は騎士のものであり、セイディには彼が救世主に見えてしまった。やたらと顔の良い救世主ではあるものの、今はそんなことを気にしている場合ではない。神様は、現実にいたのだ。


「……は、はい。えぇっと、騎士団の訓練場に、行きたくて……」


 その青年の美しさに引き気味になりながら、セイディはゆっくりとそう答える。その回答を聞いたためだろうか。彼の眉間にしわが寄る。そして「何の用事だ」と冷たい声で言ってきた。……どうやら、警戒されているらしい。当たり前だ。


「わ、私、セイディと、申します。……その、リオさんの、婚約者、で」


 婚約者の部分は、やたらと小さな声になってしまった。なんというか、口にすると恥ずかしい言葉なのだ。視線を彷徨わせながらそう言えば、青年は「……あぁ、そうか」と言って納得したように手をポンっと叩いていた。


「疑って悪かったな。俺はアシェル。アシェル・フェアファクスだ。騎士団で副団長を務めている」


 それから、青年――アシェルはそんな自己紹介をしてくれた。だからこそ、セイディは「フェアファクス!?」と驚いてしまう。フェアファクス伯爵家といえば、美貌の伯爵家である。なるほど。だから、目の前の青年はこんなにも美形なのか。そんなことを考え、一人で納得する。


「リオの婚約者っていうことは、ヤーノルド神殿の元聖女だな」


 アシェルはそう言って、セイディに自身の顔をぐっと近づけてくる。その所為で、セイディは後ろに倒れてしまいそうだった。アシェルの顔は、さすがは美貌の伯爵家の一員というべきか、とても整っている。その顔は、目に毒だ。


「リオは騎士団の本部の方の所属でな。今の時間は訓練場にはいない」

「そ、そうなの、ですか……?」

「あぁ、案内する。ついてこい」


 それだけを言って、アシェルはゆっくりと歩き出す。……案内させても、いいのだろうか? 心の中でそう思ってしまったが、セイディはこういう厚意は素直に受け取るべきだと思い、静かにアシェルの後ろについて歩く。アシェルはセイディの歩幅に合わせてくれているのか、とてもゆっくりと歩いてくれた。


「……ところで、何をしに来たんだ?」


 さすがに沈黙が辛かったのか、アシェルはセイディの方を振り返ってそう問いかけてくる。……何をしに来た。確かに、普通ならばそう考えるだろう。それが分かったからこそ、セイディは「……リオさんの、忘れ物を届けに、来ました」と言って鞄を指さす。


「……あぁ、そういえばなんか慌てていたような気がするな。……実家暮らしって、そういう点では不便だと思ったっけ。寄宿舎暮らしだと、忘れ物があってもすぐに取りに行けるし」

「そう、ですね」

「……緊張しているのか?」


 セイディの回答があまりにも淡泊なものだったからだろうか。アシェルはふと振り返り、セイディにそう問いかけてくる。そのアシェルの表情が、とても美しかったからだろうか。セイディは……目を回してしまいそうだった。


(こ、こんな美形、今まで見たことがないわ……!)


 その美しい目を見ていると、そんな感想しか出てこなかった。我ながら、語彙力がないと思ってしまった。

次回更新も木曜日を予定しております(o*。_。)oペコッ引き続きよろしくお願いいたします……!

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