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神官長の提案

久々になりましたが、更新しました(o*。_。)oペコッ

今後は頑張って更新出来たらいいなぁ、とは思っております……

 セイディは神殿の廊下を歩き、神官長の執務室を目指す。途中、神殿に雇われている護衛たちがセイディの顔を見てにっこりと笑い、「お疲れ様です~」と声をかけてくる。そのため、セイディもぺこりと頭を下げる。そして、彼らに背を向けて歩き出す。彼らは後ろで何やらこそこそと話しているが、それはいつものことだ。


「神官長、セイディです」


 執務室の扉を数回ノックし、セイディは扉越しにそう声をかける。そうすれば、中から「入れ」という声が聞こえてきた。そのため、セイディはゆっくりと扉を開き神官長の執務室に足を踏み入れる。部屋の中にはこのヤーノルド神殿の神官長であるエーベルハルト・ヤーノルドが真剣な面持ちでセイディを見据えていた。


「セイディ嬢、こっちに」


 その声は落ち着いているようにも聞こえるが、何処か焦りも感じられる。……何か、失敗をしただろうか? だが、そんな記憶はない。そう思い、セイディは「どうか、なさいましたか?」と声をかけ、一歩一歩神官長に近づいていく。そんなセイディを見つめ、神官長は「セイディは、婚姻する気があるか?」と問いかけてきた。


 セイディに、婚姻するつもりは今のところない。もちろん、没落貴族の娘というのも関係しているし、そもそも婚姻というものにメリットが感じられないからだ。それに……正直に言えば、婚姻したいと思えるほど人を好きになったことがない。そう言う意味をひっくるめて、セイディは「いいえ」と神官長に言葉を返した。


「……そうか。だがな、王国からお前に婚姻話が来ている」

「……え?」


 ……何故、自分などに? そう思いながら、セイディは神官長を見据える。たかが一人の聖女の婚姻に、王国が関与するなど普通ではない。そんな疑問をセイディが抱いていれば、神官長は「……お前の力は、強いからな」と言って数枚の紙をセイディに手渡してきた。そこには「セイディ・オフラハティに王国が選んだ男性と婚姻してもらいたい」という趣旨が書かれている。……王国が、選んだ男性。その曖昧な文字にセイディが微妙な気持ちに陥っていれば、神官長は「悪い話では、ないだろう」と告げてくる。


「王国が選んだ男性ということは、かなり有能で将来有望ということだ。セイディ嬢にも、悪い話ではない。ただ、私としてはセイディ嬢の意思を尊重したい……と思っている。が、大臣たちはこの話を無理にでも通そうとしていてな。どうする?」


 神官長にそう問いかけられ、セイディはまた紙を見つめた。……候補にある男性が、どんな人物なのかは書かれていない。それでも、神官長の言葉を信じるのならば「有能で将来有望な男性」ということ。


(そもそも、没落貴族の娘である私がまともな婚姻なんて出来るわけがなかった。それに、好きな人がいるわけでもない。……だったら、このお話はいいものよね)


 婚姻するメリットは、未だに感じられない。それでも、二枚目の髪には遠回しにセイディの血を引く聖女を残したい、という言葉が書かれている。有能な男性と婚姻し、その血を残す。それが王国の望みならば、一般市民である自分に逆らう術はない。それに、これが神官長への恩返しになるのならば、それで構わない。


「セイディ嬢、どうする?」


 神官長にもう一度そう問いかけられ、セイディはまっすぐに正面を見据える。そして「私は、このお話を受けたいと思います」と自分の意思を伝えた。


「大臣の方々が無理にでも通そうとしているのならば、私の意思など関係ありません。それに、有能な男性ならば生活に苦労することはそこまでないでしょうし。……性格が合うかは、別としまして」


 肩をすくめながらそう言えば、神官長は「そうだな」と言ってようやく表情を緩めてくれた。有能な男性ということは、生活に苦労することはないだろう。ただし、没落貴族の娘である自分を妻として扱ってくれるかは、別だが。まぁ、それでもセイディは構わない。大臣たちの考えの通り、聖女となる女児を残せればいいのだから。そうすれば、セイディは一生の生活を保障される。


「では、大臣たちにはそう返事をしておこう。……その後の話だが、多分セイディ嬢の夫となる人が会いに来ると思う。大臣たちが今考えているのは、王立騎士団のメンバーらしい」

「騎士様、なのですか」

「あぁ、しかも本部の人間だ。……頭脳明晰で人望があり、容姿もいい。……婚姻相手としては、超優良物件だろうな」

「そうですね」


 そう言葉を返して、セイディは少しだけ笑った。予想の話だが、セイディは婚姻すればここを出ていくことになるだろう。王都の神殿に、所属することになる可能性が高い。それでも、ここで神官長や同僚の聖女たちに良くしてもらったことは、忘れない。そう、胸に刻み込んだ。……たった一人、とある人物のことだけは、記憶から消したいのだが。

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