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Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。  作者: 花月夜れん
高校三年生の俺の話

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可愛い女の子から卒業したい俺とそれを止めたい女の子

 俺は勉強をした。それで、無事試験も合格し大学生になった。さてと、それじゃあ始めようか。

 狼耳と狼しっぽが揺れる。うさ耳がぴょこりとのびる。猫耳がぴんと立ち上がる。


「チームけもラブ配信はっじまるよー!!」


 え、やめたんじゃないかって? それはさ――。


 ◇


「話は聞かせてもらったわ!!」


 母さんが勢いよく入ってきた。俺は彼女を抱き締めてるとこを見られて顔を真っ赤にする。


「全部わたしと繋君にまかせなさい!!」


 そんな俺をよそに母さんが思いっきりいいところを持っていったのだ。


「圭君の方は由香ちゃんに連絡しておくわ! それと、樹君。よく言ったわ! えらいわー。言った言葉に責任持ちなさいよー」

「もちろん!」

「ふふふ、なら勉強頑張ってね!」


 ミツキは今日でおしまい。俺は美少女を卒業する。つもりだった。


「その間はこの元美少女が代わりをつとめておくわ!!」


 一緒に入ってきた父さんが、キョトンとした顔で母さんの顔を見る。


「え? 何の話?」

「繋君は樹君の父親だもの。大丈夫出来るわ!!」

「千夏ちゃん、だから何の話だい!?」


 ◇


 そうして、俺のミツキは中身が入れ替わりながらも誰にも気がつかれず、維持され続けた。

 菊谷にももちろん気がつかれていない。誰か突っ込んでくれよ!!

 マキちゃんの真樹は引退して、チームけもラブは一度解散した。脅してきた相手は圭さんが娘に手を出すヤツは滅する!! と頑張って事実滅してきたそうだ。あ、社会的にな。怖い。俺も気を付ける。手を出すのは大人までまたないとダメだよな。あの調子だと。


「こんなふわふわ、なんだか私じゃないみたいです」

「可愛いよ、マキちゃん」

「むー、可愛いのは樹君なのに」

「父さん、凄いよねー。これは可愛いわー」


 ナミがマキちゃんの新しいボディ、遠樹(トオキ)を誉める。

 ふわふわの仔狼君。真樹引退で穴埋めにコネクトから送られてきたVという設定だ。

 そうそう、俺達は全員個人配信ではなくなった。


『個人では母さん限界があると思うのよ。だから繋君とも話してたんだけど、Vちゃん達を支援する総合プロデュース会社コネクトを立ち上げるの! ぜったい必要になってくるはず』


 母さんと父さんが作った所属配信者を応援する会社。

 コネクトって名前が気になって母さんに聞いたら、まさかのミツキ衣裳、俺が発注してたのは親だった。そんなバカな!

 まあ、そのコネクトデザインから総合プロデュースへと進化したコネクト。そこへ俺達が所属する事を条件に存続を許可してもらった。何かするにも代表が動くので、俺達は全力で守ってもらえるわけだ。もちろん売り上げは吸いとられるが!! 俺とナミは小遣い還元……。将来用にきちんと貯金してるらしいけど。ほんとだろうか。


「お疲れ様ー!!」

「あぁ、お疲れ様」

「樹君。今日はこのあといいですか?」

「もちろん!」


 マキちゃんが今度は受験生だから、夏からは配信休暇予定。ちなみに俺は今、マキちゃんの家庭教師だったりする。


「じゃあ、お兄。ごゆっくりー」

「あぁ、ナミ。ユウキがさ」

「はいはい。今から行ってくるんだ」

「そうか。じゃあ、ここで見とくよ」

「えぇー、勉強に集中しなよー」


 ナミは笑いながら部屋から出ていった。

 少しして、スマホをつける。配信が始まった。


『ななみんのお部屋にようこそ。今日も元気に配信するよ』


 一緒にいるのはペットの亀とミツキそっくりさんと、うさみみのついたピンク髪の美少女。


『ゆうちゃん、今日は何しよっか』

『あぅあぅ、えっと』


 これが誰だかは触れないでおいてやろう。


「樹君、ここがわかりません」

「ん、どこが?」


 振り向くとマキちゃんの唇が俺の唇にくっつく。


「えへへ、ここです」


 くそ、なんだよ。この可愛い彼女。あと、何年我慢しないといけないんだ? 俺はー!!!!

 今すぐにでも抱き締めたい気持ちを抑えながら俺はマキちゃんの指さす場所を見る。


 Vの世界で理想の美少女やってたら、マキちゃんに見られて引退考えたけど、いまだにVの世界で美少女やってる俺。

 だけど――、


「ここはこうだね」

「あ、なるほど」


 笑うマキちゃんに仕返しのキスをする。


「えっと、えへへ」

「あはは」


 少しずつでも可愛いから卒業してみせるんだ。

可愛いから卒業はまだまだ出来そうにない俺です。

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