春(季節)がきた俺
春、風が冷たいけれど日差しが暖かくなった。ついに学年が一つ上がる。そして俺達は、まだ、キスから先には進んでいない!!
どうやったら先に進めるんだ!? 相変わらず、可愛い俺を脱却できないでいるんだが。
「いよいよかぁ」
「ですね、樹君はもう進路決めてるんですか?」
薄手のコートを揺らしながらマキちゃんが聞いてくる。
「うーん……」
特にない、なんて言い出しにくい。とりあえず無難に生きていくくらいしか想像できていない。
「難しいですよね。私も、何になりたいかな」
マキちゃんが合わせるように一緒に悩んでくれる。
「俺のお嫁さんは?」
ボソッと言うとマキちゃんが照れて耳まで赤くなった。
「それは、その……まだ先の話……かと」
だんだん声が小さくなっていく俺の彼女。声とは逆に顔の赤さは増していく。
こういうとこは本当に可愛い。
あぁ、もう学校の別れ道だ。まだ一緒にいたいな。でも、そのためにはやっぱり決めないといけないことがあるよな。
「マキちゃん、俺さ」
「あ、ナミ! それじゃあ樹君また帰りに」
「あ……、うん。また帰りに」
真っ赤なマキちゃんが走っていく。
あぁ、もうちょっと見ていたかった。学校に行ってもなぁ。どうせ見るのは――。
「よ、樹!」
「ユウキ、また一緒かぁ」
「喜べよ」
どれだけの偶然なのか必然なのか、ユウキと同じクラスだった。
しかも、
「おはよう! 遠坂」
「おはようございます。遠坂君」
菊谷と鵜川も一緒のクラスだ。なんでここに集まってくるんだよ、お前ら。
あー、変わったと言えば、
「……」
無言で手だけで挨拶する亀、じゃなかったマサユキ。
マリヤとマサユキが入れ替わった。
まあ、他にもだいぶメンツは変わっているが、俺の付き合いのあるヤツは少ないのでかなりすごい確率だと思う。
新しい出会いで仲良くするぞが必要なくて気楽ではあるが。
「ユウキはさぁ、もう進路決めてたりするかぁ?」
「決めてるぞ」
「だよなぁ、って、うえ!? 決まってるのかよ」
「いや、もう決めないとダメだろ。って弟に言われたんだよ」
「あー、そうか」
出来のいい弟がいると、大変なんだろうな。色々と。
「僕ももう決めてるぞ! 大好きな彼女の為に」
菊谷は聞いてないのに言ってくる。どうでもいいが、その彼女、リアルだよな?
「一緒の大学行かない?」
これは鵜川。だけど鵜川ってたしか。
「鵜川さん、かなり頭いいとこ狙ってるんだろ?」
「そうよ?」
「俺、そこまで頑張れる気がしないんだよな」
「あたしが家庭教師してあげようか?」
これは危険なフラグしか見えない! ユウキがスマホを握る音がする。
「いや、家庭教師なら両親に相談するよ。鵜川さんは鵜川さんで頑張らないと! 俺応援するからさ」
「うん、あたし、頑張って養ったげる!」
何を? 何を養う気ですか?
「でもさ、樹は大学行ってもずっとゲームしてそうだよなー」
「あー、それはあるかもな」
ゲームがない生活が想像できない。
「いっそゲーム会社目指してみたら」
「ないな!」
「ないのか」
ゲームプレイは好きだが作るのは違う!! たぶん違う!




