解雇宣言される俺
「今日は私がマキんち行くから、お兄はこなくていいよ」
「え……」
「こなくていいって言ってるの」
突然の解雇宣言? を朝に受けた。昨日の今日でそれ。
「お兄も考える時間がいるでしょ?」
「う、やはり本当のことなのか」
「……別に、信じないならそれでいいけど、絶対にマキ泣かさないでよね」
それはまたキツイ注文だな。ナミよ。
泣かさないでということは、彼女の気持ちを確認した場合、俺は彼女と……。
「……お兄、歯磨き粉ついてる」
「うぇ?!」
「じゃあね! 私先に行くから」
そう言って、ナミは玄関をバタバタと出ていった。俺は急いで、洗面所にむかう。
「何だよ……。歯磨き粉なんてどこにもついてないじゃないか」
ふぅと大きく息を吐く。ナミは俺とマキちゃんをくっ付けたいって事なのかな。
マキちゃんは、小さい頃、男の子みたいに虫をとったり、走り回る元気な女の子で、今も男プレイヤーが多いゲームをトリプルSまでいくような子。俺の理想はお化粧が上手で、おしゃれで、可愛くて、趣味も可愛い感じのお菓子作りなんか好きそうな子が好きだ。俺が女の子みたいだと言われるから、それよりもっと女の子らしい子なら、うまく行くんじゃないかって思って。だから……、考えた事なかったんだ。
「泣かさないように? そんなの一つしか答えはないようなものじゃないか」
ぽつりと言った時、コンコンとノックする音と父さんが「次いいかぁ?」と聞く声がして、ドアをあけ場所を交代した。
「いってきます」
ナミはマキちゃんとたぶん一緒に出たんだろう。いつもならだいたい同じ時間に出てきて挨拶するマキちゃんが今日は居なかった。
でも、会わなくて良かったのかもしれない。どんな顔をすればいいのかわからない俺はきっと変な顔をしてしまうところだっただろうから。
彼女の家を通りすぎて、俺はいつも通りの学校へと向かった。