ルーレットはいつも当たる(悪い方に)俺
「カラオケ配信?」
「うん、だから手伝って!! マキちゃん」
手を合わせて全力でお願いした。
◇
お、フォロワーの数がもうすぐいい数字だな。よし!
「ミツキのファンサ、今度アンケートするから答えてね!」
そして集まった大量のファンサービスリクエスト。それをルーレット型の抽選にしてくれるサイトに入力していく。
「それじゃあ、回すよー!」
ぐるぐると回りだす。そっと苦手なものはパーセントを減らしてある。当たらないようにな!!
なのに、なんで――。
「抽選結果は、歌ってみた!! 歌配信をするね! 待っててにゃん!」
と言ったはいいものの。
◇
二人で部屋に入る。飲み物を頼んだから、いつスタートしてもよくなっている。
「はぁ、それじゃあ歌ってみて下さい」
「ちょ、まって。って始まってるし」
歌詞が表示される。歌が始まった。
「あの子がぁーすきだぁー! でも俺はあの子にぃーまだ言えないぃー」
マキちゃんの顔がふふっと笑ってる。だんだん目が、口が笑いを堪えきれなくなっていく。
ガチャリとドアがあき、ジュースを持ってきた女の子の店員と目があった。俺は声を小さくする。店員も頑張ってはいるがほんのり笑っていた。
「ありがとうございます」
「失礼します……っ」
店員、いま吹かなかったか?
そうしていたら、歌は終わった。
「なるほど、そのままいったらいいのでは?」
「いや、なんとかしたいからこうやってマキちゃんと特訓にきたんじゃないか!」
「可愛いですよ?」
「じゃなくてですね、あまりにも……」
俺は歌うとこぶしがすごいのだ。それはもう演歌歌手のように。
「うーん、演歌を歌えばいいのでは?」
「いや、お題は最近の流行りの歌なんだよぉぉぉ」
マキちゃんの番の歌詞が出た。
「あ、私の番ですね」
マイクを持って歌いだす。って、マキちゃん、それ男性ボーカルの曲では……。
すぅっと大きく息を吸うとマキちゃんはすっげぇカッコよく歌いだす。もう、なんでこんなカッコいいんだよー!! その歌声を俺に下さい!!
「ふぅ、でもこれじゃあ意味がないんですよね」
「はい」
そう、歌うのはミツキなのだ。なので女性の歌をリクエストされていた。
マキちゃんは困った顔をしながら続ける。
「私、女性ボーカルの曲歌えないんですよね」
…………。
二人で笑いあいながら、次の選曲をする。こうなったらやるしかない!
見せてやるよ!! 俺の本気をっ!!
「あ、あーそういえばさ」
ジュースを飲みほしながら俺はマキちゃんに聞いた。
部屋を出る五分前だ。
「マサユキってさ、昔俺会ったことあるよな? どんな感じで遊んでたか覚えてる?」
「それ、彼女に聞いちゃいます?」
「え、ダメだった?」
マキちゃんは、んーと猫みたいに伸びながら答えるかどうか考えていた。
「普通に遊んでましたよ。あの日まで」
「な、なんか不穏な感じだ……」
荷物を手に持ち、マキちゃんが立ち上がった。
「外に出ないと、時間です」




