正解か不正解か、どっちだ? 俺!
「なーんてな!! おい、鵜川!!」
俺は放課後の教室に戻り、帰る直前の鵜川あやみに声をかける。
あやふやな状態でいられるほど今は余裕なんてないんだよ!
「な、何。遠坂君」
教室に戻っていた鵜川とそれを取り囲む女友達達のところにいく。うーん、少し入りがたい雰囲気だ。
「あのな、さっきの菊谷の話なんだけど」
がたりと勢いよく椅子を動かし鵜川が近寄ってきた。
「その話は向こうで出来る?」
顔がこぇぇぇよ! 笑ってるのに目の光が消えてるんだが。
俺は頷いて鵜川のあとに続く。後ろから「なんだー、やっぱり菊谷が本命かぁ」という声が聞こえてきた。ん、やっぱ菊谷なのか?
「何聞いたの?」
「それはだな」
ある程度人気のない場所に来た。ここならいいだろう。
「俺は大好きな子がいるんだ」
「知ってる」
え、知ってる? 勢いよく言った言葉が俺の心につき刺さる。これは続けるべきなのか? だが、言わないと……。
「それで、鵜川の気持ちには答えられない!」
「は?」
は? 鵜川の視線が痛い。急所間近だ。ヤバい、俺は死んだかもしれない。
「勘違いしないでよね。あたしはただ」
「ただ?」
「めっちゃモンを教えて欲しかったの」
「え?」
「あたし、めっちゃモンしてるんだけど下手っぴで、遠坂君ゲームの話してたから、教えてもらえないかなって」
「あ、あー、そうなの?」
あれ? 俺やっちゃった?
じーっと見てくる鵜川の顔が動かないので嘘ではなさそうだ。
自分の顔が真っ赤になる。まさに火を吹いた状態だ。
「ご、ごめん!! 菊谷が、その、鵜川が俺に気があるって言っててそれで」
鵜川の表情は変わらない。もう、何だよ! あとで、菊谷覚えとけよ!!
「あ、めっちゃモンだよな。うん、わかった。今度一緒にやる?」
「ほんと!?」
嬉しそうに笑う鵜川に俺はうんうんと頷いていると、彼女がスマホを取り出した。
え、何ですか? アドレス交換? え、まじで?
気がつけば完了して、約束まで取り付けられてしまった。あれ、え、ちょっと待って?
俺、何しちゃった!? と、友達だったら大丈夫だよな。めっちゃモンするだけだし。
って、俺のめっちゃモン、キャラクター女の子じゃねーか!!
あ、それで引いてくれたらいいのか? よし、それだ! 鵜川はやりこむほどの上級者ではなさそうだし、自分のことをへたっぴという程だし。動画配信なんて知らないだろう。うん、大丈夫だ。
「遠坂君」
「はいぃ!」
考えていると、鵜川は「それじゃあ、楽しみにしてる……」そう言って教室に戻っていった。
これ、マキちゃんに言ったら怒られるヤツかなぁ。
待ち合わせ兼ゲームする場所は家からだいぶ離れた公園だ。
ゲームするだけだし、鵜川は違うって言ってたからいいよな。無駄に心配させるのも良くないよな。
俺はもらった焼き菓子の答えを考えながら、家に帰った。
ちなみにお菓子の答えは正解した。




