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アイスクリームな彼女とクレープの俺

「あ、マキちゃーん」

「樹君!」


 商店街のアイスクリーム屋で待ち合わせの俺。今日はマキちゃんと一緒に帰るんだ!!

 って、なんだそのぎりぎりの戦いは!?

 アイスクリーム五段重ねだと! アイスクリーム屋の店内を見るといつもの兄さんがアイスクリームディッシャーを誇らしげに構えている。プロの技か!

 オレンジ、メロン、ストロベリー、チョコチップ、一番上はなんだ? 虹色……?


「樹君、持ってくれませんか」


 うん、五段は食べにくいよね。さすがに。

 俺はマキちゃんから五段アイスを預かると隣に座る。立ったままのマキちゃんは俺の前に立ち、アイスを上からペロリとなめとっていく。

 うわぁ……。


「美味しいぃぃ」


 うん、美味しいみたいでよかったね。俺は目の前の景色に手がふるえる。だが絶対にアイスを落としてはいけない。マキちゃんが悲しむから!

 気がつけば一段目が消え二段目も消え三段になった所で選手交代だ。


「ありがとうございます。急いで食べたから頭がちょっと痛いです」


 寒いのによく食べるなぁ。俺は思い出したように上着のポケットにいれたペットボトルの紅茶を出した。


「ミルクとレモン、どっちにする?」

「あ、ミルクがいいです」

「はい」


 ポンッと彼女の横にミルクティーを置いて、俺は残ったレモンティーのふたをあけた。

 なんだか、アイスクリーム屋の兄さんが恨めしそうににらんでるのは、俺がアイスを買いにこないからか?


「ちょっと何か買ってくるよ」

「はい」


 クレープも併設だから、今日はクレープを買おう。

 兄さん、なんかニヤニヤしてるけど俺は無視を決め込む。どういう意味で笑ってるのか気になるけども!


「ソーセージのクレープ?」

「え? ダメだった?」

「いえ、ダメじゃないですが」


 しまった、選択ミスか! あれ? なんで俺が食べるのがソーセージクレープでマキちゃんががっかりするんだ?

 …………!


「あの、一口食べて見る? 案外いけるかもだよ」


 マキちゃんの目が疑り深い。えーって顔だ。

 甘いクレープしか彼女のイメージにはないのかもしれない。


「俺もこれが初めてだからさ」

「そうなんですか」

「どっちかというといまはガッツリ食べたくて」


 ぱくっとマキちゃんが最初の一口を食べた。

 むぐむぐと口の中いっぱいに頬張る。俺のソーセージ(クレープだぞ)はなんか3分の1くらい減ってた。


「あ、美味しいです!」

「そっか、良かった!」


 食べちゃった分をアイスで返そうとマキちゃんがぷるぷると俺に差し出す。気にしなくていいのに。


「俺はいいよ。アイスは」


 そう言うと嬉しそうにマキちゃんは続きを食べ始める。


「あ、美味しい」


 口にいれた甘いクレープの皮としょっぱい具とソーセージがいい感じにマッチしてる。

 次回は甘いのとしょっぱいのどっちにするかなぁと考えていると視線を感じた。


「樹君、今日クラスの人に可愛いって言ったのは本当ですか」


 俺の時が止まった。いや、動いてるけど、凍ってる。


「えっと、マリヤから聞いたの?」

「……はい」


 だよな、マリヤも微妙な顔してたし。そういうのはあまり言わない方がいいのかな。

 でも――。


「あたし可愛い? って聞かれたから可愛いって答えたんだ。そこで変な答えをしたら女の子って傷ついちゃうかもしれないだろ?」

「……そうですね」

「あ、俺の中で世界一可愛いのは俺の彼女、マキちゃんだけだよ」

「……っ」

「それじゃあダメかな?」


 マキちゃんがアイスを食べ続ける。


「世界一可愛いのは樹君です」


 ぽそりとそう言って。

 俺、カッコいいって言ってもらえるのは何時になるのかなぁ。


「マキちゃん、俺もマキちゃんが誰か別の男を褒めてたらやきもち妬くと思うよ」

「はい」


 食べ終わったマキちゃんはミルクティーを飲むといつもの笑顔に戻っていた。

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