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Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。  作者: 花月夜れん
楽しい? 年末年始の俺の話

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おみくじを引く俺

「明けましておめでとうございます」


 ユウキはそっくりな双子の弟ヒロキとその彼女ナホの三人で参拝にきていたようだ。


「あれ、樹は? いない?」


 いるぞ、ここにな。俺はマキちゃんの後ろを陣取っていた。


「んー、お兄なら」


 ちらりとこちらを見る小悪魔の目。おい、何をいう気だ。ナミ……。


「樹なら家で寝てるらしい。ゲームのしすぎで寝坊したってよ」


 マサユキがナミより先に口を出して誤魔化してくれた。神か? 神はここにいたのか。


「あー、アイツらしいなー」


 ぐぁぁぁ、言いたいが言えない。俺は朝起きたしここにいるのにっ!


「ん? こっちの女の子は?」


 見つかった……。俺は覚悟を決めてペコリと頭をさげまたマキちゃんのうしろに隠れる。


「あー、えっと、この子はミツキちゃん。うちの従姉妹なんだぁ」


 ナミ! お前は俺を見捨てなかったのか!


「そうなんです。あと風邪気味で声が出なくて、ほら」


 マキちゃんが「ね?」とこちらに首を向けたから俺はわざとらしく咳払いをした。


「へー、ナミちゃんの従姉妹かぁー。やっぱり可愛いねー! ナミちゃんに似て美人だ」


 兄妹だからなぁぁぁぁぁぁ!

 心の中で俺は血の涙を流す。親友に可愛いと言われ凹んでしまう。ナミのついでかもしれないがダメージはでかすぎる。


「おーい、ユウキ! 次行くぞ」

「おう! あ、ナミちゃん、もしあとで一緒に回れたら」

「皆と一緒で良かったら」

「あ、あー、うん」


 おい、ナミ。わかってやれよ。男心……。

 ユウキもきっと彼女と出店デートしたいんだろうな。あの日、ユウキが一人だったのを思い出す。弟は彼女とデートでもしてたんだろう。

 しょうがない、親友のためだ。俺は帰ったらナミに話をしようと考えていた。


「前、進みました。あと半分ですね」


 あぁ、もうこれ以上知り合いに会いたくない。まあ、最大の友は去ったからあとは会ったとしてもそんなに親しくないはず……。


「あ、ナミちゃーん! マキちゃーん」


 再び声がかけられる。女の子の声だ。なら問題は――。

 声をかけてきた方向を見る。


「明けましておめでとう!!」


 近付いてきたのは月城唯(つきしろゆい)。二人の友達で、たまに一緒にチームけもラブ配信をしている子だった。その後ろから、背が高い知らない男二人と小さめなこれまた知らない女の三人組が追いかけてきた。前に聞いた彼女のお兄さんや彼氏だろうか?

 顔を知らない方の三人組はペコリとお辞儀する。男の方の一人は真面目そうな、眼鏡委員長といった風で、もう一人はどこかよそよそしい雰囲気。女の方は、正直苦手なタイプの人種だ。格好が派手で、髪の色がかなり明るい。あれは、危険だ! と内心俺はビビっていた。


「ユイちゃん! 明けましておめでとうー」


 ナミとマキちゃんがユイさんのところに向かう。あー、俺の盾が……。


「あれ? あの人って」


 じーっと見るユイさんの視線が俺にささる。

 何かナミとマキちゃん、ユイさんでナイショ話を始めたぞ……。


「あー、やっぱり? すごーい、可愛いー!」

「ね、可愛いですよね!!」

「あはは、すごーい。よくわかったねー」


 何を話しているか察した俺は顔を赤くしながら列が進むあとに続く。

 何も見えない、聞こえない。化粧してるからバレない? バレてるじゃねーか(たぶん)!

 なんだ、今年は厄年なのか?

 ちょうどいいところにあった厄年の看板を見る。厄年じゃない……。


「今年もよろしくね! ミツキさんもっ!」


 ユイさんが叫ぶ。

 ほら、やっぱりバレてる……。

 俺は小さく手を上げてフリフリしておいた。

 もうこれ以上は誰にも会いたくない。はやく列よ、すすめぇぇぇ!!

 あと少し、あと少しで賽銭箱だ。


 なんとか到着した俺は神様にたっぷりお願いしておいた。

 その中で特に強く願ったのは男になりたい!! (いろんな意味で)だった。


「お、ナミちゃーん! 終わった?」


 賽銭箱の隣でやっている巫女さんおみくじを引いているとユウキだけがこちらにやってきた。


「おみくじ中かぁ。って、どうしたの? ミツキさん。ぷるぷるして」


 うるせぇ、俺は今悲しみに暮れてるんだ。


『大凶』


 こういうとこのおみくじって大凶とか入ってるのかよ……。かなりレアを引いたんじゃないか?

 涙で前が霞んで見えるぜ。新年そうそう縁起が悪すぎる。学業も、病気も、願い事も、失せ物も、全部ヤバそうなことばかり書かれてる……。

 はぁぁぁと深いため息をつく。


「あー」


 マキちゃんが覗き込んで納得したように頷いていた。


「ミツキちゃん」


 まるで配信中の呼ばれ方をして、俺はドキリとしてしまう。


「おみくじはね、大丈夫だよ。これからの気の持ち方に気をつけてって書いてるから。だから、ほら」


 マキちゃんの大吉のおみくじを見ると、俺のとあまり変わらない言葉がそこには載っていた。


「ね? 大吉でも気をつけてねって言ってます。だから大凶の方がぜったい気が引きしまりますよ。今年は気をつけて行きましょうね。あ、大吉の私が一緒にいれば中和してくれるかもしれません」


 中和……。俺はふふっと笑ってしまった。神様の占いも彼女なら確かに中和出来てしまいそうだ。

 あぁ、俺、マキちゃんが彼女で良かった。


「ありがとう」


 俺はマキちゃんだけに聞こえるようにお礼を言って、一緒におみくじを結ぶ場所に移動した。

 すでに白いおみくじの紙がいっぱいだ。


「落ちてしまわないように人が少ないところに結びましょう」


 下にポロポロ落ちてしまったおみくじ達が少し寂しく見える。


「なんで人気の場所とかがあるんだ?」

「うーん、もともと木に結ぶのが習わしみたいで、木に近い方がいいからとかでしょうか」


 たしかに、木と木の間にはられたビニール紐よりも木の枝に結びつけているものが多い。それと、木の枝のものが下にたくさん落ちている気もする。


「木の枝だと神社の人が外すの大変だからでしょうね。あ、ここにしましょう」


 マキちゃんは適度にスペースのあるところにささっと結んでいた。俺もマキちゃんを見習って細く紙をたたみ結びつけた。

 よし、これであとは出店だ! ユウキはナミにくっついているからなるべく距離をとりつつ買うぞー!

 ポテトと焼きそばと唐揚げがあれば俺は生きていける!

 どこか懐かしい出店の雰囲気にわくわくしながら俺は歩きだした。

 一番近くにあるのはフライドポテト! なんかトルネード決めてるヤツ。食べにくそう! でも惹かれる!

 並んでゲットして最初の一口とかぶりついた時だった。


「マリヤさん!!」


 聞いた覚えのある声で全身にヒビが走った気がした。

 あと、口の中ちょっとやけどした。

「もう一回引いたら結果かわらないかな?」

「どうでしょう、もう一回引きます?」


もう一度引いてもあれだったら泣くな……。やめとこう。

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