ふたたびのアイツと俺
今俺は、マサユキと一緒に買い物にきている。
いや、何で俺がこいつと一緒に行かなきゃならないんだよと思うだろ?
――――数時間前のこと――――
「さぁ、戦場よ!」
「おぉー!」
大みそか前日、ナミは母さんの手伝いでおせち作り、父さんは大掃除、俺は――、買い出し班。
「あ、川井さんちもマサユキ君を出撃させるみたいよ。樹君、この辺の案内もかねて一緒にまわってあげなさい」
出撃って母さん……。ま、まあそれが俺に課せられた仕事だった。
で、またこの男と並んで買い物に行くわけだが。
視線がいたい。この男の横に立つと俺に向けられる視線がなぜか痛い。
はぁ、気のせいだと思おう。
そう思っているのに、俺は最大級の嫌な視線を感じてしまった。
「お、樹とマサユキ君だっけ? なに、デート?」
ユウキ、まさかここで会うとは奇遇だな。地獄に落ちろ。
俺は心で思っても口には出さない男。
「よう、ユウキ。とりあえず、◯ね」
そう、今言ったのはたぶん気のせいだ。
まったく、その冗談はマサユキにだって失礼だろ。無表情なコイツからは読み取れないがたぶん怒ってるだろう。
「ごめん、ごめんっ。あーでもどうせ会うならナミちゃんが良かったなぁ」
「つーか、ユウキは一人なのか?」
「……断られた」
あ、こっちもなかなか大ダメージを与えてしまったようだ。ユウキが目に見えてへこんだ。
「アイツ、今日は母さんとおせち作りだから動けないぞ」
「あ、やー。聞いてるけどさ。はぁぁぁ」
じゃあ、一人で何してるんだと聞くべきか。聞かざるべきか。悩んでいるとマサユキがぽそりと何か言った。
「ん、なんだ?」
「……、や、マリヤの事、ありがとうございました」
急にペコリとお辞儀する。俺とユウキは慌ててマサユキの頭を上げさせた。こんな往来で目立つんだよ。
「二人が手伝ってくれたから、マリヤも無事で笑ってくれてるのにまだお礼を言ってなくて」
「いやいやいや、マリヤは大事な仲間だし」
「ナミちゃんにお願いされただけだから」
マサユキが無表情を崩している。マリヤに似てるからよく見ると可愛い顔だ。
その顔が、真っ赤になっている。
「もし向こうに戻っても仲良くして下さい」
え、俺マサユキと仲良くしてたっけ?
「マリヤも喜びます」
あ、あーそっちね。はい、はい。って、むこう?
「あれ、大阪に戻るんですか?」
ユウキがマサユキに聞く。マサユキはこくりと頷いた。
「このまま、何もなければ戻れると思う」
「そうかぁ」
そういや、なんだかんだあったせいで、あまり昔話を聞けてないなぁ。
俺とコイツが会ってたりしてなかったのか、とか。
「なぁ……」
聞こうとした時に俺はとある人物と目があった。
「あっ」
そいつはどう見ても、クラスにいるアイツだった。
「遠坂樹!」
いや、何でお前にフルネームを呼ばれなくちゃならないんだ? 菊谷。
元気出せ、ユウキ……。




