お泊まり会に心が踊る俺
「年末お泊まり!? マキちゃんが! くる……だと……」
「そうだよー。で、どうするお兄!」
「どうするって……」
マキちゃんがうちにくる? うちにくるだって?
大事なことなのでもう一度言おう。マキちゃんがくる!!
この前のパジャマ姿が目に浮かぶ。あのマキちゃんをもう一度拝めるのか。
「そりゃー、決まってるでしょ?」
「……おい、妹よ」
「なんだい、お兄」
「…………」
ダメだろっ!! マキちゃんはナミのところでお泊まり会であって俺のところではないっ。
いくら、彼氏彼女の関係でも……、一緒にいられるならいたいけれど! いや、まじで。
そしてナミは一緒の部屋で寝ちゃう? とでも言いたいのだろう。答えはもちろんイエs――。
「年末ゲーム配信しないー?」
頭の上をスコーンっといい音をならしながら不純な俺が飛んでった。
「あー、いいけど配信機器が」
完全ソロ仕様だ。ミツキ専用機。出来れば設定はいじりたくないなぁ。
「そこはほら、お隣だし、運んでもらうよー!」
え、それって、やっぱり。
「お、重たい」
俺とマサユキで必要な分の機器を移動する。これって、帰りもだよな。
「いいなー、マリヤも泊まりたい」
「お母さんとお父さんが待ってるんでしょ」
「そうだった。ナミ、大阪のお土産何がいい?」
「んー、大阪って、たこ焼きが真っ先に浮かぶよね」
そんな会話を聞きながら俺は階段をのぼりナミの部屋の前に行く。
「ナミ開けてくれ」
「あー、はいはい」
いや、そっちは俺の部屋のドアなんだが?
ナミが手をかけたのは俺の部屋。まて、掃除とかなんにもしてねぇ。そもそもなぜ俺の部屋なんだ。
目で訴えるとナミはいつもの調子で親指をグッとさせる。
「お兄の部屋の方が広いし!」
一畳ほど広いけど!! 確かに広いけど!
容赦なく開けられたドアの中を見られながら、俺は赤面しつつ自分の部屋に機器を置く。あーもう、そこまでマニアックじゃなくて良かったよ、ちくしょー!
それなりの本はやっぱりあるわけで。隠しきれてない子が転がっておられたー。
中に入ってきてるのがマサユキだけなのがまだ救いだが。
「そこ、片付けとけよ」
って、言われんでも片付けとくよ!! そうか、ウキウキワクワクだけじゃないな。緊急回避出来るようにしておかなくては……。
この日俺は少しはやい大掃除と選別会をしていた。タイムリミットは20時間後。
「お兄ー」
「樹君ー」
呼ばれたけれど二人の配信に参加はしなかった。
「マキちゃんに引かれるのだけは嫌だぁぁぁぁ」
さようなら、俺のコレクション。
挟んで買った歴戦の友よ。あ、これはこっちに置いとこう。棚の裏まではさすがに見ないよな……?
明日のゴミ出しは俺が行こう。朝早くな!!
ちゃんと朝起きました……。




