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Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。  作者: 花月夜れん
転校生とストーカーに悩む俺の話

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予定外の配信をした俺

「ありがとうございました!!」

「またよろしくにゃーん!」


 ゲリラ配信が終わる。ゲーム機を置いて、ふぅと息を吐いた。

 予定外だったからか、閲覧人数はだいぶ少なかった。いつもきてくれている常連さんも二人か三人いたのかな?

 さて、後ろを見るのが怖い。正直……引いてそうだ。

 男の俺が、にゃーんとか言ってるからな。


「どうでした?」


 マキちゃんがマサユキに聞く。俺は意を決して振り向いた。その顔は無表情で。いや、逆になんかリアクションしてくれよといいたくなるくらい無表情で……。


「……皆で楽しく遊んでるってのは理解できた。けど――」


 少しの間に俺は息を飲む。


「配信なしで遊べないのか?」


 ぐはっ! 遊べます。遊べはするけれど!


「それは出来ますが、配信はやめません」


 マキちゃんはまっすぐに答える。


「だって、樹君と繋がれた大事な絆なんです」


 マキちゃん……。ごめん、最初はマキちゃんに見られて引退かなーって思ってたんだけどね。言えないけどね!


「でもさ、それのせいなんだろ? マリヤがストーカーに狙われてるの」

「っ……、それは、そうかもしれませんが」


 マキちゃんの声が小さくなった。やっぱり、俺のせいでマリヤは危険な目にあってたのか。


「お兄はわざと似たキャラクターにしたわけじゃないよ。覚えてなかったってマリヤから聞いたでしょ?」

「ナミの言うとおりです。たまたま似てしまっただけで」

「どうだか、昔遊んでたなら記憶のどこかで覚えてた可能性だってあるだろ」


 うぅ、確かにそこは確かめようがない。少年時代の記憶はすでに朧気(おぼろげ)だ。

 だが、一つだけ確かなのは、ミツキとマリヤは別人だ。あくまで俺が理想とした女の子ってだけで。


「ミツキってのをやめて他のキャラクターでするとか。ほら、マキみたいに男のヤツで――」


 そこまでマサユキが言った瞬間、俺は反論するべく口を開こうとした。愛情を注いできた大事な半身。俺は何を迷っていたんだ。

 ミツキはもう俺だけのキャラクターじゃないんだ。

 一緒に配信してくれるチームけもラブ。衣裳を作ってくれるコネクトデザインファクトリーさん。配信を楽しんでくれる応援者達。


「俺は――」

「絶対に駄目!!」


 マキちゃんが俺よりさきに反撃した。


「樹君は樹君だからいいんです。他の子に無理やり変わっちゃったら……」


 え、えーっと、俺なんて言おうとしてたっけ。


「マリヤ、お前それでいいのか?」


 マサユキがマキちゃんから逃げるように目をそらしマリヤに聞く。


「怖いのは怖いけど、でも皆で遊ぶのは楽しい」

「話にならねぇな。それで自分が危険な目にあってるってのに」


 マサユキは立ち上がって部屋を出ていく。

 俺は言いそびれたこのどうしようもないものをなんとかのみ込みながらマリヤに聞いた。


「いつからストーカーに狙われてたんだ?」


 まだ、聞けてなかった事を聞きたくて。

いや、はっずい!! 何か反応してくれよ!! まじで!

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