表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/94

証拠を押さえられ 、勧誘(強制)される俺

「あん、お兄……もうダメ」


 いや、ダメじゃないだろ? まだ、始めたばかりだろ?


「ナミ、そこは、だめです。その奥は、あ……あぁーー」


 やめてくれ……。


「「あ、あぁ、あぁぁぁぁーーーー」」


 マキちゃんとナミの声が響く。声だけ聞いてるとエロにしか聞こえない、あえぎ声のようなゲームの会話と叫び声。

 彼女いない(れき)イコール年齢の俺の耳に毒だ。いや、……正直いいものだ……。しかし、親が帰ってきてこの声を聞いたら、俺は殺される。


「お前らいつもそんな声だしてやってるのか?」

「え? 出してないよ?」

「はっ?」

「いつもはおやつ食べながらだから、ねー?」

「そういえば、おやつ食べてませんでした」


 おやつを口に入れておかないと、危険どころじゃない。わかった、何か持ってこよう。そう思い、何度目かのローディング画面になったので、立ち上がった。何かあったかな――。

 お菓子ストックをいれている棚の扉を開き、口をふさぐのにちょうどいいモノを探す。


「ね、やっぱりお願いしようよ」

「え、マジで?」


 いったい、何度目のトライだろう。そろそろ終わって欲しいと願っているのに、まだコイツらは(あきら)めないでやる(再挑戦)相談か?


「ねえ、お兄」「樹君」


 二人が同時に話しかけてくる。なんだよ、なんか怖いぞ。


「「一緒にVチューバー、ゲーム部しない?」しませんか?」


「……は?」


 手に持っていた、はっぴーな粉付きそふとな煎餅(せんべい)がガサッという音を立てて落ちた。


 ◇


「これが、真樹(マサキ)。私のV君」

「こっちがななみん。私のVちゃん」


 彼女達のスマホには、狼耳が特徴的なイケメンアバターとウサギ耳をつけた可愛い女の子のアバターが並んでいる。


「女の子メンバーを増やしたいねって二人で話してたんだけど、いい人がいなくってさ!」

「昨日、樹君、やってるとこを見て、その……。一緒にしてくれないかなって」

「お兄、一人でやってるなんて知らなかったからさー! びっくりしちゃった。ね? 一緒にしようよ! ……ミツキちゃん」

「お願いします。……ミツキちゃん」


 二人が、俺に笑顔を向ける。その後ろに、天使の羽をつけた悪魔が見えた。

 これは、断ったら、世間に話が回るぞということか?

 だが、証拠はすでに隠蔽(いんぺい)を!


「あ、全部ダウンロード済みだからね、お兄」

「録画もばっちりです、樹君」


 ジーザス! 神も仏もないのか!

 にこにこする彼女達に連行され、俺は自室に着いた。


「この子、移動は出来るの?」

「あ、あぁ、一応」


 上手く隠していた、あの子を引っ張り出される。


「じゃあ、決定だね」

「あ、私がいない時でも、二人でやっててもいいからね。お兄」

「ナミは他の付き合いがありますからね」

「そうそう」

「よろしくお願いします、樹君」


 俺に、拒否権はないらしい。


「……男のあば――」

「ダメです。私が紅一点――というか、男性アバターは私だけでいく予定の部活なので! 樹君はこの猫ちゃんですよ」

「……はい」


 今日俺は、リアル女の子の前で、可愛い女の子を演じろという恐ろしい命令を可愛い年下の幼なじみ、マキちゃんから(くだ)された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ