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カッコいい彼女にかなわない俺

 あぁ、なんだ。このほのぼの。

 畑を耕し、種をまいて水をやる。マイハウスを建てて、室内を好きなように飾り付ける。

 川に釣りにいき、虫を捕る。

 いつもの狩るか狩られるか、殺伐とした雰囲気とは正反対。

 のんびりスローライフ。


「な、な? 面白いやろ?」


 今日はマリヤが大好きだというゲーム、アニマル大集合田舎の休日をしている。


「面白いけど、配信向きかなぁ?」

「いやいや、これが配信人気もあるんやで」


 猫耳美少女アバターの八重歯がきらりと光る。


「仮にもチームけもラブを名乗るんやったら、やっぱりこのアニ(あつ)はおさえておかな」


 このゲームは確かにたくさんの動物が出てくる。動物達が主人公のゲームだ。


「そうだね、よし! 次はこれでいこう!」


 マキちゃんがゲーム機を持ちながら頷いた。今日から少しやりこんでおかないとだな。

 マリヤのアバターは俺のコピーをいじるだけだからすぐに出来た。衣裳もいつもデザインをお願いしてるコネクトデザインファクトリーさんにお願いしたら翌日データが飛んできた。おかしい速度だが、夜なべして頑張ってくれたんだろう。いい人だ。


「明日からマリヤも参加出来るんだよね」


 嬉しそうにマリヤは体を揺らす。アバターと変わらないその容姿に目が奪われる。

 そして思い出した。なんて呼んでいたか。


「マー」

「え?」

「あ、いや、何でもない」


 そうだ、マリヤじゃなくて、マーと呼んでいた。後ろに何かついていたが、発音が聞き取れなくて、俺はマリヤをマーと呼んでいたんだ。


「マーシャのこと?」


 そうだ、なんか子どもの頃、マリヤはそう呼ばれてた。だけどなんか言い慣れなくて、マーって言ってたっけ。


「あー、お兄は滑舌悪かったもんね。マーシャちゃんが言えないからマーって呼んでたよね」

「うるせー! 子どもの頃の話だ!」


 そうか、マリヤもマリヤちゃんも言った覚えがないわけだ。マーって呼んでたんだよ、俺。


「マーシャって懐かしい。今は呼びやすいからマリが多いもん」


 マリヤがそう言うと、ナミとマキが目を合わせて頷いた。


「じゃあ、マーシャにしましょう! この子の名前」

「そうだね、お兄もいい?」

「あ、別にいいんじゃないか? 可愛いし、流石にもう言えるぞ」


 本人次第だがと、マリヤを見ると嬉しそうに顔を赤くして破顔していた。


「嬉しい、ありがとう。向こうじゃ、全然こんな話とか出来なかったし、ゲームとか皆してなくて、趣味が合わない人ばっかりやったし……」


 あー、女の子だと、ゲームとかする子は少なくなるんだろうなぁとなんとなく思った。なぜか俺のまわりにはこんなに集まっているが……。


「帰ってくるん、めっちゃ怖かったけど、いいこともあった」


 マリヤはそう言って、俺の方を向いてもう一度笑った。


 ◇


「どうしても気になって……にゃぁ」


 俺はミツキの姿でマキちゃんのVの世界に会いに行く。狼耳をピンッと立たせた真樹は笑顔を浮かべてミツキの頭を撫でる。


「可愛いなぁ。そんな事気にしてたんだ?」

「え、だって、気にならないにゃ?」


 この姿だと、少しくらい女々しいこと言ったっていいよなと思ってこっちの世界で会っている。

 リアルの俺では、素直になれそうになかったから。


「ボクの……大事な恋人だから、信じてる」


 ぐわぁぁぁぁぁ、眩しい! 眩しいよマキちゃん!


「ミツキは違うのかな?」


 意地悪そうに目を見つめられ、問い詰めてくる。


「ちがいませぇぇぇんにゃぁぁぁぁ」


 そのまま、ぎゅーっと抱き締められて、俺は悟った。

 次は真樹のように頑張ります、と。

 何で俺の彼女、こんなにカッコいいんだ……。

マキちゃんがまだまだ上手かなー。

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